第7話

「笹原涼花りょうかです。星蘭高校の1年です」

「三島恭介です。龍聖学園高等部の2年です」

「あ、先輩だったんですね」

「笹原さん年下だったんだね」

「ささはらって発音しにくくないですか?涼花でいいですよ」

「涼花……さん?かな?」

「さん付けなんですね。じゃあ私も恭介さんって呼びます」

 はにかんだ笑顔で名前を呼ばれることの破壊力といったらこの上ない。女の子に名前を呼ばれるのなんて何年振りだろうか。

「どうして私と話したいって……」

「君、いつもこの席にいるでしょ」

「あ、はい」

「俺も1年からこの位置なんだけどさ、今年の春からは君がいつもころころ表情変えて本読んでるのが気になってて」

「私、そんなに騒がしかったんですか」

「いやそうじゃない、そうじゃなくてえっと……」

涼花さんにじぃっと見つめられて慌てながら脳内で言いたいことをまとめる。

「俺も小説好きで……今は電子派なんですけど。最初は涼花さんの心を揺さぶる作品なのかなって、作者も嬉しいだろうなぁって思ってて。でもあまりにも表情が変わるから目が離せなくなって、……気になってました」

可愛い、とは流石にチキンな俺には言えなかった。

「そうだったんですね。嬉しいです」

澄んでいて、それでいて柔らかい声で涼花さんは笑った。

その声が、まるで朝日に輝いた海のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る