第4話 内心の自由と内身の熱素
紫色の空間は、静けさを取り戻した。
なんとも言えない空気感のまま、見つめ合う俺と私。
あの女声に聞こえないでくれ、と、俺は小声で言った。
「あのな……やはり今のうちに……その身体のことを確かめておくべきだと思うんだ。俺は……このまんまの身体なわけだろ。なんでお前がその、ちっちゃな身体なのかてっことをな……性的な意味ではなく……」
私は、俺のほとんどが性的な興味であることを知ってしまっていて受け入れてもいるのだけれど、やはり目の前で太っちょ用パンツの中のアソコが固くなっていく様には嫌悪感を抱くのだった。妹……設定だから……? あまり詳しくはないが民法は家族法領域の……
「まて、今は民法が問題なのではなく、民暴な強要女神が問題なのであって……俺は決して強要はしない。ただ手ブラは両手でなくてもできるだろう。お前のお胸はちっちゃくて……尊いからな……」
言葉を詰まらせた俺の内心を私は全て分かっている。要は私の片手で私のパンツの中を探らせたいのだ。内心が分かり合ってしまう……この関係は、日本国憲法 第19条のいわゆる思想・良心の自由、つまりは内心の自由としてどうなのだろうか。私と俺のいずれの内心の自由がより侵害されていると……
「あぁ、この状況だ。内心の自由が問題なのは分かる。けれども、今のうちに俺はお前にあそこを確かめて欲しいんだ」
「いや、私のパンツの中がどうなっているかは、いつでも確かめられるわけで……貴方はただひたすらに貴方の目で、私がパンツの中に手を入れるところを見たいと思っているだけなのでしょう」
私は低い声で冷たく俺を罵倒してしまった。けれども同時に俺が、私の口調に性的な意味で興奮しているという内心も分かってしまうのだった。
「確かに今の俺は多少興奮してはいる。しかし、この目でしか確認できないことは他にもある。したがって、あそこの……」
早口の三段論法で状況を進捗させようとした俺だったが。
《このアラセイカ!!……尊い妹の何が見たい、だと》
……早くも来やがった、女声が。
《いい、ショコラちゃん。時間がないの。
あなたなら使えるはず。魔導クロッシィを。》
マドウクロッシィという聞き慣れないものなど私が使えるのだろうか……この自称女神はなぜショコラの方に話しかける時の口調は丁寧なのだろうか……
《ショコちゃん。身体の中に熱素を感じているでしょう……そう、そこ》
私はオシッコが出るはずの箇所にある熱を確かに意識した……そうだぞショコラ、俺はその熱が出ている箇所をお前の手で確かめて欲しかっ……
《アラセイカ。デブパンツのくせに、何、いかがわしい目をショコちゃんに向けてるんだぁ。反対を向け!!
このままだとお前のチ○……》
俺はショコラに背を向けた……この場で基本的人権である内心の自由を侵害している主体はこの女声であることを、私は改めて確信した。
《ショコちゃん、今は時間がないのよ。その熱を下の方から押し縮めながらお臍のあたりまで持ってくるようにイメージしてみて》
《アラセイカ。お前は今回は黙読で良いから、真心を込めて
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)と69回以上唱え続けろ。
全部聞こえてるからな。真心こもってなかったら、パンツの中の……》
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
(アラセイカの尊い妹は、ショコラ)
……
基本的人権を奪われたまま兄が唱える念仏的な内心の呟きを聞きながら、
私はパンツの中の熱を圧縮し浮かび上がらせていく。
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