サッカー部はモテるらしい。が、3歳からサッカーひと筋で生きてきた紀藤ユウキは壊滅的にモテなかった。世界のどこかにいるという彼女との出逢いを夢見つつ、県立FH高等学校へ進学した彼はサッカー部という名の生き地獄へ入部をキメた……!
読んでいただくとすぐユウキ君がモテなかった過去は自業自得だとわかりますし、モテない現在がサッカー部のせいだとわかります。このわかりやすい事実が軽妙且つ辛辣に語られていくことこそ、本作最大の魅力ですね。
主人公が酷い状況にある理由を説明するのは簡単です。文字量を使えばいいだけのことですから。でも、その上でノリというものを文字化するのは相当に困難なのですよ。しかも、ただでさえ暗黒面へ堕ち込みがちな非モテがテーマですからね。なのに深々と抉り込んで陰々滅々することなく、主人公をただただ愉快に虐げてみせる著者さんの筆ノリ、すばらしいとしか言い様がありません。
どうぞのぞき込んでくださいまし、コメディの明るい深淵を。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)