第15話
土曜日、朝起きたら外はあいにくの曇り空、午後には晴れると聞いたがどうだろうな。
ただ今日は真由さんの誕生日を祝うので、晴れて欲しいと思う。
木曜日には誕生日おめでとうメールを送ったが、やはり面と向かって祝いたい。
朝食はオレンジジュースとトーストにハムとレタス。ヨーグルトにシリアルを振りかけて、以前幸二に女子かよと言われたメニュー。
腹にもたれないくらいの軽さが好きなんだよ。
部屋を見渡し、積んである本を棚に戻していく。
洗濯機に汚れ物を放り込んでから部屋に軽く掃除機をかける。こまめに掃除をしているおかげでそこまで汚れてはいないが、今度時間がある時にざっと水拭きをしたい。
スーツとワイシャツはクリーニングに出してあるから、明後日会社帰りに引き取ってこなくては。
仕事のメールが来ていたら困るのでパソコンを立ち上げ、案の定作家さんからプロットやネームが昨夜のうちに来ていたのでそれをチェック。
スマホだとこれができないから面倒だ。
それぞれの初見の感想や、読み込んだ後の気になる点をメモにまとめてメールに添付して送り返す。
森川先生の次の単行本の校正チェックしなきゃ。セリフの抜けや間違いを直して印刷所に送るのだが。
一冊分のチェックは結構時間がかかるので細かく何回かに分けてやるしかない。
こればかりは業務時間内に終わらせるのは不可能だ。
俺は最近会社に行く時と帰り、刷りだしという掲載原稿のコピーの束を持ち歩いている。微妙に重いので大変だがこれも仕事のうち。
朝の一仕事を終え、乾燥まで終わらせた洗濯物を畳んでクローゼットにしまう頃には、出かける時間になっていた。
「いらっしゃい、真由ったらずっとソワソワしちゃってて面白いわよ〜」
香川姉妹の母上は本日も明るい笑顔で迎え入れてくれた。というかいつもより笑顔がキラキラと眩しい。これは、真由さんがよっぽど可愛いことになってるに違いない。
「おじゃまします。あ、これ皆さんで飲んでください」
二十歳で酒解禁となる記念というわけではないが、少し奮発していいスパークリングワインを用意してみた。辛口だが口当たりのいいやつを飲みやすさ重視で選んでみた。
リビングには幸二達も揃っていて香川家勢揃いだ。
二十歳の誕生日で特別感があるとはいえ、本当に仲の良い家族だなとほっこりする。まぁ、俺の場合も実家でしっかり祝われたんだが。
親と仲がいいのはいいことだよな。
「いらっしゃい長尾さん」
「お招きありがとう、真由さん」
テーブルの上には豪華絢爛な料理が並んでいる。
席を用意されていて、そこが真由さんの隣というのは、誰の意向だろう。真由さんのお父さんも俺のことを、今時の割にしっかりした若者だと言ってくれているらしい。
どうも幸二と有希さんがいい感じに話を持ってくれたらしいが。幸二の親友というのがポイント高かったのかもしれないな。
6人で乾杯して、真由さんが照れながらケーキの蝋燭を消すというお約束をして、クラシック音楽をかけながらパーティは進む。
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