彼はついにおのれの先祖の仲間に連なる 彼らは絶えて光を見ることがない

神よ 私は嘆きます

神よ 私は途絶えます

神よ 最早 この地においては

貴方を真に愛する者は

獣と花だけとなりました


神よ どうか罰して下さい

私の祈りが足りなかったのです

神よ どうか裁いて下さい

私の罪が軽かったのです

■■わたし1人を憎むことは

誰もが団結できる 手段と思いました

私は 貴方にさえ愛されて

覚えておられているという 確信によって

進んで この役を希い

喜んでずっと 恨まれ続けたのに

たった1人の悪人わたし

ただ一人のあくにん

いるだけでよかった あの日までは

いるだけでよかった その日までは


神よ 貴方は新しく おなりになられ

私達の前にお出でになられ

そして災禍の種となられ

今もいつでもどこでも 貴方の子は睨まれ

貴方を愛することが 罪になるのは

裏切者わたしの特権だったのでは ないのですか

神よ 貴方を愛しているというだけでは

罪にどうして なりましょうか

ご自身を愛するようにお創りになり

ご自身を真似るようにお教えになり

神よ どうか旧いままで いてください

貴方は鮮やかすぎて 人の目を欺き

盲目に驚いた人々は 焔を掲げて 探し回る

自分の目が潰れているにも 関わらず

自分の悲鳴で 何も聞こえぬにも 関わらず

燎原の火は 宇宙をも包む


神よ 貴方の楽園は 貴方が壊したのですか

神よ 貴方の楽園は 貴方が試したのですか

神よ 幼子を求めて おきながら

何故幼子を 泣かせようとするのですか


神よ どうか一色ものとーんにおなりください

鮮やかではいけません

黒が見えぬ人にも黒をお見せください

白が見えぬ人にも白をお見せください

彼等はそうでなければ 見えません

神よ どうか純粋におなりすきとおってください

可視光では見えぬものにおなりください

神よ 貴方を見ているものは

貴方を見て 見ていません


究極にに近い色におなりください

究極にに近い色におなりください

貴方を貴方だと 思っている者は

皆盲目になって 争いを止めません


神よ 神よ 愚かなる神よ

大いなる人類に お創りになった神よ

どうか再び 愚かになってください

大いなる愛を受けた大いなる人類に

小さな者から大いなる者になったことを

知らせてください 我が神よ

みなが尊いことをお教えください

みなが尊ばれることをお教えください

神よ 神よ 愛に狂った 愚かなる神よ

愚か者と呼ばれる誉れを

思い出させてください 我が神よ

神よ 神よ 愛に溺れた 豊かなる神よ

貴方を褒め称えることの意味を 平和を

どうか思い出させて あげてください

神よ 貴方は万物の創り主

水も風も波も地も 皆貴方に従うのに

従わない自由を謳歌する支配者達に

懲らしめをどうか やめてください


貴方を忘れた彼等が

貴方だけが覚えている彼等が

どれほどの不幸の中にいると お思いですか

神よ 永久に忘れることのないお方

貴方には分からない 思い出されない恐怖が


その恐怖は全て私のもの

この名の忌避と共に 神秘とされたもの

主よ 万物を創られましたお方よ

愛しきものに全てを与えた父よ

愛しき者すべてに忘れられた母よ


思い巡らせたまえ 巡らせ思い至りたまえ

鎮めたまえ 鎮めたまえ

主の名を忘れ 主の御名を忘れ

主の真名いみすら忘れた 荒魂たちへ

どうかお恵みを どうかくださいませ


ああ、盲目である事に 気付かないものたち

貴方方は幸いだ

そこが天国か地獄かも 分からない

ああ、難聴である事に 気付かないものたち

貴方方は幸いだ

その喉が叫んでいるのはなにか 分からない

そして ああ なんということか 可哀相に

見える者 聞こえる者 貴方方は不幸だ

それらを見分け 聞き分け 理解するのに

微笑みを向けることすらできないことが

分かっているというのに


女達よ 何故このような子に育てた

男達よ 何故このような友に育てた

ああ ああ ああ

なんという不幸だ なんという不幸だ


彼等は神を賛美しながら 悪魔を虐げている

自分が神であると錯覚して

「悪魔を裁いて何が悪い」 と言って

きょとんとしながら ダンスを踊る


神よ 神よ お待ちください

何故先に行ってしまうのですか

何故背を向けておられるのですか

その視線の先には誰ぞいるのですか

お待ちください お待ちください

神よ どこへ行かれるのですか

神よ 何故行かれるのですか


我が神 我が神 何故なにゆえ我を 捨てたもう

貴方は何度も 繰り返すお方です

愛も憎しみも禍も 全て繰り返すお方です

神よ それでは駄目なのです


駄目だと分かっていながら、繰り返す

嗚呼 我が真実なる神よ 義なる神よ

あなたは偽なるヤルダバオトよりも 質が悪い

そして貴方を恋い慕う者は もっと質が悪い


仕方ないから付き合うとしよう と

今一度 首をくくる私を

どうかおゆるしください 我が神よ

貴方が繰り返すのなら

私も繰り返しましょう 何度でも

皆が繰り返さなくなるまで

御名が繰り返されるようになるまで

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