第4話 ヤらかしと過去 1
「あ"ー頭痛てぇ……ん?なんか横におんな?おんな!?」
思わず2度見してしまったが俺の横に眠っているのは女だった。あー思い出してきた。昨日クソほど飲んでテンションがぶっ壊れたり、初めての彼氏、彼女で盛り上がったりして、色々あってヤりまくったんだ……。えっと、面倒くさい事を考えるのは後にしよう。今日は確か休みだったはずだ。いや、大事な講義もなかったし寝よう。寝れば全て解決する。起きたら世界は自分好みに変わっている。よし寝よう。……いや寝れねぇよ!!なに?俺ヤッタの?大人の階段登ったの?あーいや、記憶はある。うん、ヤった。色々とヤった。はっきり言って取り返しのつかない事までヤった。……あれ、俺これからどうしようかな。なんか満足感というか、達成感というか……。
「よし、二度寝しよう」
俺は考えるのをやめて二度寝することにした。起きたら世界は自分好みに変わっているはずだから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
頬、唇を触れられる感覚……なんだこれは?と目を開けようとしたその瞬間。
ペシッ
「痛っ」
我が最愛の恋人である菜璃がデコピンをしてきた。
「凄く痛かったんですが」
「昨日私は散々やめてと言ったのですが」
「……あっ、はい。俺が完全に悪いですね。すいませんでした。その事についてはなにとぞ触れないでいただけると嬉しいです」
俺は誠意を見せるために土下座した。起きて間もないのに土下座した。
「次はしっかりと頼むぞ」
彼女はやり手の女上司のような口調で話す。
「ははぁ〜菜璃様ぁ〜」
「じゃあ、朝飯よろしく」
彼女はその一言を言うとすぐ布団を被った。
猫かな?俺の彼女は気まぐれな猫なのかな?
要件だけ伝えて消える感じ……お母さんあなたをそんな子に育てた覚えはありませんわよ!!
「あー菜璃は作れない感じ?」
「吾実家暮らしなり〜」
彼女は猫のように体をフニャ〜とさせて話す。
菜璃は実家暮らしなのか、そうなのか……あれ?。
「……あのー菜璃さんや。もしかしてなんですけどここに泊まった事親に連絡しましたでしょうか?」
「もしも帰ってこなかったらオオカミに襲われたときだって言っといたから」
そう言って彼女は布団からとても良い笑顔でピースしてくる。
……あれ、俺やってんな。もう取り返し付かないことしたな。覚悟はしたけど本当にやったな。
「人生の墓場にようこそ空愛」
まさか最愛の恋人からその言葉を聞くことになるとは思わなかった。そして俺は脊髄反射であることを口走った。
「……俺まだ白人美少女の所行けてないんですけどぉぉぉ」
「……おい、それは最低だぞ。覚悟してる、責任取るって昨日散々言ってただろ」
彼女はどこぞのララティーナのような口調で迫ってくる。
「いや、うん。良いんだよ。良いんだけど友人から送られてきた写真の事とかもあってヤバいんだよ。……いや、待つんだ俺。こちとら菜璃さんという素晴らしいお方を人生のパートナーに出来たんだ。それで充分じゃないか。いや、何回人生やったらこんな美人を奥さんに出来るんだ。むしろ最善の結果じゃないか。菜璃さんや、こちらをどうぞ」
「ん?通帳?」
「私の全財産です」
俺は話をウヤムヤにするため切り札を切った。
そう、金だ。ん?最低?今の俺には褒め言葉だよ!
「えっ、開けていいの?」
「昨日二人して20歳超えてるから婚姻届け出せるじゃん!!とか言って親のとこ以外埋めましたよね?もう俺はその気です。覚悟があるならどうぞ」
「えっ、えーと私も覚悟があるので見ますね」
彼女は少し顔を赤くしながら俺の通帳を開く。
「あの、桁が分からないんですけど……」
「えーざっくり言って100億円ですね」
彼女の顔が固まった。てか、全身が固まって通帳を落としている。
「えっと……なんでこんなに持ってるの?」
「昔、というかつい先日までプロゲーマーをしておりまして……世界大会優勝の賞金がそれです」
俺が少し恥ずかしそうに答えると彼女は『プロゲーマー』という言葉を延々と繰り返して目を白黒させたり頭の上で鳥でも回ってるのかと思うくらいゆらりゆらりと揺れて倒れてしまった。
「ベットの上だから大丈夫か……まぁ、この金額見たらビビるよな。俺自身絶叫したし」
つい先日、BOTというBALORANTの世界一を決める大会があった。そこで俺は見事仲間と優勝し、賞金である1億ドル、日本円にして一兆円を山分けしたのだ。俺自身、1000万ドル……1億円くらいか。一人1000万、世界大会は金払いが違うなぁ〜と思っていたが桁が違った。3桁くらい違った。まぁ、税金問題で色々引かれてはいるが一生遊んで暮らせるだけの金を手に入れた。これだけあるなら遊んで暮せばいいって?いやいや、遊んで暮らしてたらいつか絶対失敗するときが来るから。普通が1番よ、普通が。少し軽く話すが俺はもう競技シーンを引退している。理由は色々とあるが一番は疲れたのだ。メンバーは昔からの悪友なので全然居心地が悪いとかは無いんだが期待が日々大きくなっていくのに耐えられなかったのだ。まぁ、軽い大会なら全然出てみたいが。ようやく落ち着いたのか彼女が体を起こす。
「空愛」
「あー菜璃、大丈夫?」
「大丈夫。あのお金は本物?」
「うん。本物」
「えっと、不束者ですがよろしくお願いします」
「こちらこそ末永くお願いします」
「決めたよ、空愛」
菜璃はとても真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。告白の返事を聞くときよりも真剣な眼差しだ。
「えっと、なんでしょうか」
「同棲しよう」
「同棲?」
はて、この彼女様はなにを考えているんだろうか?
「私、気づいたんだ。今までの私と空愛の関係って恋人みたいな物だったんじゃないかって。そして昨日の夜初めての……えっと、経験。そう、経験をして恋人から次のステップに駒を進められたんじゃないかって」
「ほうほうそれで?」
「だから……私をこの家に泊めてください。出来れば一生!!」
「金ですな?金で判断しましたな?」
「いや、元々私は空愛が好きで最悪空亜がヒモでも私が働いて養えば良いって思ってたくらいだし……」
「あーごめん。めちゃくちゃ恥ずい。分かった。ただ、家は一緒に探そう。ここははっきり言って狭すぎる。ベットも1つしかないし」
「私は毎日空愛と一緒に寝ても……」
「やめてください、俺はまだ生きてたいんです。毎日あんなことしてたらそのうち死にますからやめてください」
「白人美少女」
「……あなたへの愛を一生誓います」
「よろしい。じゃあこれ早く婚姻届出そっか!」
彼女が満面の笑みで答える。
「あーそれはごめん。うちの親が大学をしっかり卒業しろって言ってるから卒業後になると思う」
「え?でもこの貯金見せれば多分オーケーしてくれるよ?」
「相手の娘の未来を考えろとか言われる気がする」
「大丈夫。私が支えてあげるからっ!」
「なぜだろうか、今めちゃくちゃ悪寒が走ったんだが」
「よし、じゃあ今から着替えて私の両親の所に挨拶に行こっか」
「……いや、良いよ?百歩譲って両親に会いに行くのはいいとしよう。たださ、オオカミに襲われたら帰れないって言ったんだよね?オオカミですって挨拶しに行くのもはや公開処刑じゃない?」
「恋人の両親への挨拶なんて全部そんなもんでしょうがっ」
「あっ、言ったら駄目なこと言った。それだけは言っては駄目なのに。やめてくれ、なんというか……夢を壊さないでくれ。ヤバイよ、急に辛くなってきたよ」
「空愛、お金の事は驚いたけどまぁ、素直に嬉しいよ。だって私は元々空愛が好きで最悪養おうとさえ、思ってたから。ただね、こんなに両親に会いに行こうとか、同棲しようとか言うのには理由があるの」
「ほう、どんな理由が?」
「空愛って、私から見てイケメンで高身長で性格はひねくれてる気がするけど比較的優しくて貯金も億単位であるんでしょ?」
「まぁ、はい」
「つまり、私以外の子が寄って来る可能性が高いの。女の子にも独占欲はあるの。空愛を誰にも取られたくないの」
「おっ、おう」
「私の考えわかった?」
「大変良くわかりました。まぁ、でも大丈夫よ。俺自身菜璃さん以外の女性に殆ど興味なくなったし」
「ん?」
「昨日の夜が脳裏に焼き付いてしまって多分動画でさえ無理になってる可能性大」
「……もしかしてだけど私が気絶したあとになにかした?」
……うちの彼女様は勘が鋭いな。
「菜璃様、お父様、お母様への挨拶はいつに致しましょうか」
「ねぇ、嘘でしょ?空愛?教えて?私怖いよ?何されたの?ねぇ、空愛?空愛!?」
「軽い誓いでございますが今後一切菜璃様以外の方に好意を抱くことは無いでしょう。アーメン」
「ねぇ、ふざけないで?何がアーメンなの?多分、私に取ってとても大事な事だと思うの。空愛?空愛さん?空愛様?」
「墓場まで持っていきます」
これは絶対に誰にも言わん。てか、本人だからこそ絶対に言わない。
「いや、私達夫婦だよね?婚姻届け書いたよね?」
「墓場まで持っていく所存であります」
「え?本気?本気で言ってる?」
「大丈夫。君への不都合はなにもない。ただ、そう。俺がやり過ぎただけなんだ」
俺が少し舞い上がって欲望を全て叶えただけなんだ……。
「何カッコつけてるの?教えて?急に怖くなってきたんだけど」
「あぁ、世界はこんなにも美しかった!!」
「えぇ……あーうん。諦める。今度どこかで奢って。そして卒論書こう」
「あっ、了解」
「私を生涯養うって約束する?」
彼女様は当たり前のことを聞いてくる。
「ん?俺の妻になってくれるんだろ?養うに決まってんだろ。あっ、でも家事とか役割分担するからね」
「それなら昨日のことはチャラにしてあげる」
あぁ……女神はここに居たのか。菜璃様ぁ〜菜璃様ぁ〜。
「菜璃様、後で個人的に贈り物をしたいので銀行の口座をお教えください」
「え?いや、税金とかめんどくさいから空愛がお金は持っといて」
「あっ、はい」
「でも、驚いたなぁ〜まさか空愛がプロゲーマーだったとは」
「いや、これでも世界MVPもらってるからね?」
「えっ、凄すぎ!!なにか映像とかないの?」
「見る?世界大会のDVD」
「全然見る」
「よし、じゃあ飯食べてる時にでも見ようかすぐ出来るからこっちおいで」
「は〜い」
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