デビュー前
第3話 俺はもう一生この人には勝てないな
待ち合わせ場所に向かう電車の中。
俺は最高に緊張していた。理由は大学で一番可愛いと噂される綾間さんから映画の誘いがあったからだ。
今まで地元の話や趣味が一緒だったこともあり話す機会が多かったがまさか一緒に映画に行こうと誘われるなんて思ってもいなかった。
次は〜〇〇〜次は〜〇〇〜
なぜ俺なんだ?目的は金か?一応金は他の大学生に比べていや、社会人と比べても持っている方だとは思うが……やばっ、降りないと。
俺はどうにか降り過ごさずに駅のホームを出て待ち合わせ場所に向かう。待ち合わせ時間の30分前なのもあってか綾間さんはまだ来てはいなかった。
流石に30分前に来る事はないか……コーヒーでも飲んで心を落ち着かせよう。このままの状態で綾間さんに会ったらヤバい事言いそうな気がする。近くの珈琲屋は……あ、れ?あそこに居るの綾間さんじゃね?駅のホームから綾間さんがこっちに歩いてくるのが見える。
嘘だろ!?たかだか同じ歳の男との待ち合わせに30分前から来るか?やばいよ、ちょっと待ってくれよ。まだテンションおかしいんだよ。コーヒー飲んで落ち着きたいんだよ。……いや、行ける。なんかわかんないけど行ける。俺はこれでも世界MVP取った男だ。あの時もなんとかなった。海外製のライオットブラッド・トゥナイト飲んだからかも知れないけどなんとかなった。何弱気になってんだ。JDと映画見に行くだけだぞ…………いや、無理。やっぱり無理。高校の時どこぞのカワボ配信者とカラオケ行ったけどあの時とは訳が違う。今回は一対一。サシだ。デュオだ。あの時のように隣の友人に話をすべて回してもらって俺はただひたすらにコーヒーを飲み続ける事は出来ないんだ。落ち着け俺。あの時はAREXのアプデで徹夜してたから条件が違う。今回はしっかり寝れただろ。何が寝れただろだ。こちとらびっくりしすぎてやばいよ、やばいよ……って言いながら友人と徹夜でランク回ってたっての。
はっ、俺徹夜してんじゃん。なぜだ。なぜ俺は大事な時ばっかり徹夜してるんだ。いや、落ち着け。今からコンビニに走ってライオットブラッド飲めばなんとかなる。
俺はコンビニに行こうと足を進めようとすると声をかけられた。
「空愛くんっ」
きちゃァァーあぁぁぁーもう無理ィィーお前ならなんとかなる。まぁ、骨は拾ってやるから安心しろって言った悪友のことを何故か思い出したが奴らのことは置いといて……落ち着け。今まで通りの接し方でいいんだ。何も気負うことはない。大丈夫。
俺の心は世紀末か?と思うほど大きく荒れていたがどうにか落ち着かせて応答する。
「綾間さんこんにちは。そういえば今日見る映画のチケットもう取った?」
すると彼女は困惑気味に返答する。
「え?映画館に行かないとチケットって取れないんじゃないの?」
……綾間さんはム○チケを知らないのか。
「あー了解。チケットは映画館行ってから取ればいっか」
「え?空愛くん、映画のチケットって映画館じゃなくても取れるの?」
「いや、取れる所と取れない所があったような気がするけどネットで大体の所は席まで選んで取れるよ」
「え!?だから朝イチで行ってもあんなに席が埋まってたんだ……」
朝イチ!?綾間さんって映画好きなのか。
「綾間さんって映画好きなの?」
「好きって言うか大学の講義前とか暇な時に行ってるだけだけど量は見てると思う」
「そうなんだ。じゃあ後で一応ネットでの取り方教えるわ」
「え?じゃあよろしくね。良い席取られちゃうかもだし早く映画館に行こうか」
「了解」
まぁ、ネットで席取れば急ぐことも無いんだけどね……ただ、30分前に精算とかチケットの発行を完了させないといけなかったりするけど。
…………………………………………………………
映画館は俺と同じ大学生がちらほらいるだけで休日のように混んではいなかった。
「やっぱり平日だと人少ないね」
「まぁ、仕事とか学校があるからね」
「やっぱり1年のときにいっぱい授業受けるのは正解だね。1年の頃の私、よく頑張った」
「俺もあの時先輩たちの言葉を聞いていて良かった。おかけで色んな大会にも出れてるし」
俺たちは二人して過去の自分に感謝した。マジでよくやった昔の俺。お前が頑張ったおかげて俺はクソほど美人なJDと映画を見にこれている。本当によくやった。
「そういえば今日見る映画決まってるの?」
「ゴールで世界を揺らせって言うサッカーアニメの劇場版」
「あーあれね」
ゴールで世界を揺らせ。日本の若き天才赤城蓮が世界のトップリーグで昔の友人との約束を果たす為に戦う一応熱血物だ。まぁ、作者がラブコメやコメディを書くのが好きな事もあってそっちにベクトルが傾いてるような気もするが。
「今回でようやく幼馴染みとの約束が果たされるんだ。あぁ、今まで長かった」
「作者もこの試合だけは完璧に書いてたからようやく辿り着けて嬉しいとか色々と言ってたっけ」
「そうそう。席私が決めるけどいい?」
「どこでもいいよ。じゃあ、俺はなにか飲み物でも……あの、綾間さん。この手は何でしょうか」
「一緒に買いに行こ」
「あっ、了解です」
……俺は結局腕を綾間さんに掴まれたまま映画館のフードコートで買い物をした。
…………………………………………………………
「あの終わり方は完璧だった。そしてなんでto be continueしてんだよ作者。また映画館来ないといけないじゃん」
「空愛くんが楽しそうでなりよりです」
「綾間さんは映画どうだった?」
「超次元サッカーじゃないのに超次元サッカーしてて面白かったです。ただ、本当に玲香の恋が叶って良かったなぁと」
「主人公ガンバったよなぁ……俺がこの試合でハットトリック決めたら結婚してくれなんて言えないよ。それも決勝で」
「やっぱり主人公補正ですかね。でもゴールの全てが泥臭いのがまた……」
「いつもの試合みたいにスルーパス、ドリブル、シュート、ゴォォールって奴じゃないからまた良いんだよね」
「そうなんですよ。よし、私決めました。空愛くん、今日は朝までヲタトークで盛り上がりましょう」
「わかりましたぜ姉御。今すぐ店予約します」
「私ーお肉食べたいなー」
「叙々様予約してやらァァ」
「きゃー空愛の兄貴最高ー」
……映画後ってたまにテンションおかしくなるよね。
…………………………………………………………
そして、数時間後。
「空愛くんの家って意外と片付いてますね」
「まぁ、本とか殆どネットで買うからね」
「まさか終電の時間まで掛かるとは思わなかったです」
「叙々様からのカラオケはまずかった。そしてアニソンメドレーからのボカロメドレー……うん。まぁ、楽しかったから全て良し」
いやぁ、うん。あれは罠だわ。ヲタトークで盛り上がってる所にカラオケ店見えたら入っちゃうわ。そして本当に終わらない。少し酒が入ってたから何歌っても楽しかったし綾間さんとのカラオケってこともあって本当に楽しかった。まぁ、そのせいで二人とも時間見てなくて終電逃したけど。あれ?なぜ綾間さんが我が家に?タクシーで近い俺の家から先に来たのは覚えてる気が……やばいな。数秒前の出来事なのに忘れてる。
「じゃあ、呑みましょうか」
「……えっと、綾間さんや、その袋はもしかして」
「コンビニで買ったビールですけど?」
その瞬間、俺は考えるのを辞めることにした。
「すぅーーおっしゃあ、朝まで祭りじゃァァァ」
「空愛の兄貴話がわかるーー」
そしてその数時間後。
もう何缶ビールを開けたのか分からない。ただ、ここまでの美人と呑める日が来るとは誰が思っただろうか。あぁ、昔の俺。よくぞこんな美人と連絡先を交換した。
「ねぇー空愛ー聞いてますかー」
「おぅ、聞いてる聞いてるー」
「私ーなんで今の今まで彼氏が居ないんですかー」
「そんなこったぁ知らねーよ。ただまぁ、綾間さんの彼氏は最高だろうな」
「どうしてですか?」
「え?そりゃあ美人で優しくて相手の趣味に対する理解もあって……いやぁ、綾間さんの彼氏になった奴は人生最高だな。俺も立候補してぇー」
「じゃあ、空愛くん。私の彼氏になります?」
「あ"?」
酔いが一気に覚める。この人はいったい今なんと言った?しっかりと目を開けて彼女を見ると今まで酔っていたのが演技かと思うくらいに真剣な表情でこちらを見つめていた。
「あーごめん」
俺はそう言って開けていたビールの残りを一気に飲み干す。あー、今めちゃくちゃ顔が赤い気がする。
「綾間さん、いや、綾間菜璃さん。俺と付き合ってください」
自分でも何を口走ってるんだと思うがお酒の力を借りて俺は綾間さんに告白した。
彼女もコップに入ったものを一気に飲み干す。彼女も顔が赤いがそれはお酒のせいか告白のせいか。
「それはこっちのセリフです。来島空愛くん。私と付き合ってください」
「いや、男に告白は譲ってくださいよ。綾間さん」
「いやいや、先に告白したのは私なんですよ、空愛くん」
「あーこりゃあ駄目だ。俺は最初から彼女の尻に敷かれるみたいだ」
「ええ、ずっと尻に敷いてあげます」
彼女は少し笑いながらそう言ってくる。
そして俺は思うわけだ。これはもうこの人には一生勝てないなと。
「はぁ、これからよろしくお願いしますね。彼女様」
「はい、酒の力がないと告白できない彼氏様」
「いや、菜璃さんもお酒の力から借りたよね?」
「私の場合は流れ的なやつで……」
「いやいや、アレのどこに流れがあるの?こちとら酒に呑まれて夢の世界の一歩手前まで行ってたんだけだど?」
「いや、それは空愛くんがお酒に弱いのが悪いんです」
「お酒に弱い?ここまでどんだけ呑んだかわかってる?ねぇ、このゴミ箱から溢れてる缶の量見て?相当飲んだよ?これ多分二人で飲む量じゃないよ?」
「それは体質的に……」
「いや、まぁ、俺これでも九州男児。さつまの男よ?でも、こんだけ飲めば誰でも酔うわっ!!」
すると俺の中に一つの答え的なやつが頭の中に出てきた。
「はっ、分かったぞ。てめぇ、俺が返答に適当になってる事に気づいて俺の気持ちを確認しようとしたな?そうだろ!!」
俺がそう言うと彼女は何か琴線に触ったのか逆ギレしてきた。
「それの何が悪いんですかっ!!こっちだって初めてなんですよ!!自分から告白するの!!安全マージン引くぐらい良いじゃないですか!!」
「何が安全マージンだよ!!安全にしすぎだろうが!!」
「そもそも空愛くんが私に告白しないのが悪いんですよ!!なんですか?あれだけいつも飲み会で話してたのに私に興味ないんですか?これでも顔にも体にも自信あるんですからね!!」
「そんな事知らねぇよ!!俺だってワンちゃん俺に気があるんじゃね?とか思ったよ?思ったけど我童貞ぞ?告白する勇気なんてあるわけねぇだろうが!!」
「はぁ!?私だって処女なんですよ?少しぐらいこういう時は男性が色々と誘ってきてくれる、告白してくれる……っていう夢見てもいいじゃないですか!?」
「はぁ!?なに夢見てんだよ!?てめぇは美人でスタイルが良いかもだがよってくる奴なんてヤリサーの安全マージン考えないイケイケ野郎だけだろうが!!すいませんねぇ。俺は安全マージンしっかりと引きたいタイプなんですぅーゴムだってしっかりつけるタイプなんですぅーそもそも連絡先交換しただけで満足しちゃうタイプなんですぅ!!」
「ヘタレ」
「……あっ、もう無理。終わったわ。俺もう無理だわ。彼女の非道な一言でゲームオーバーだわ。始まりの街に即死魔法持ちの大魔王いたわ。無理ゲーだわ」
「あっ、いや、そこまでダメージ受けるとは思わなかったんですけど……」
「いや、うん。良いんだよ。俺はヘタレだよ。うん。なんていうかね……本当に刺さったよね。心の防御が壊れたよね。オーバーキルだよね。うん。びっくりしたわ。彼女出来てヒャッハーしてたら彼女がチェーンソーで斬りつけて来て本当にびっくりしたわ」
「……えっと、ごめんね?」
さっきまでヒートアップしていたのが急に恥ずかしくなり俺は彼女にある提案をすることにした。
「菜璃さんや」
「えっと、はい」
「これからよろしくお願いします」
「あっ、よろしくお願いします」
「次回からは本当に気を付けてください。一瞬三途の川が見えました。ショック死という現代稀に見る方法で異世界に旅立つかもなので気を付けてください」
「き、気を付けます」
「これから馴れ馴れしくなりますけどよろしくお願いします」
「えっと、私も馴れ馴れしくなるのでよろしくお願いします」
「よし、じゃあ飲もう。彼女にヘタレって言われたのは本当に心に来た。記憶がなくなるまで飲もう」
「私もやばいこと散々言った気がするので飲みます。記憶に残したくないです」
「おし、じゃあ高いお酒を持ってくるわちょっと待ってて……あの、腕に抱きつかれるのはちょっと」
「彼女を一人にするんですか?」
「……一緒に選ぼうか」
「はいっ」
彼女はそう言いながらはにかんで笑った。
もう一度言おう。俺はもう一生この人には勝てないだろう。そして俺は思うわけだ。これだけ最高なことがあって明日生きてられるかなと。
………………………………………………
一応始まりましたがエピローグまで辿り着けるか自信ないです。今は週間ランキング上位に入ったこともあり流石に更新しないとと頑張りましたが応援のハートや応援コメント、星でこれからも応援してもらえると嬉しいです
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