第4話 組織。






「あー、やっぱり、最初はこうなるよなー、ははは。」



阿鼻叫喚の広場で、また場違いな声がした。奇妙な集団の中の一人。茶髪の青年だ。ひょろりとした体躯で、顔付きは優しげ、だけど萌香はその表情に見覚えがあった。


(嘘つき、人を騙そうとしている顔……、っ……)


力が戻った影響か、朧げになっていた悪夢の記憶がハッキリと蘇る。それで取り乱す事は無いが、胸糞が悪い。


この、不可思議な状況に、何故か何人かは瞳を輝かせている。萌香のクラスメイトの【田中たなか三太さんた】と【山本やまもとりょう】はテンション高く興奮している。


(オタクだっけ?あーあ。喜んじゃって……、状況をまるで分かって無い。でも、それも仕方無いか。)


もし、萌香が普通の女子高生だったなら。きっと気づけなかった、だが今の萌香は気づく、気づける。


(……、あいつら、品定めしてる、特に女性を。あの目は絶対ヤバい。)


召喚された集団を取り囲む彼らは、きっと萌香達と同じプレイヤー。


(それに、何人かは怯えてる……、罪悪感?あの目、すっごく不愉快)


奇妙な集団は、先輩プレイヤーという所だろう。その全員がヘラヘラして居る訳じゃ無い。何人かは、俯いて顔色を悪くして居る。


萌香が何度も見た目、表情。気分が悪くなって来る。


「お、おい!!あ、アンタら何なんだ……、此処は……」


先程まで怒鳴って居た、おじさんは威勢を無くして力無く言う。それに茶髪の青年はニコリと笑顔を作って答えた。


「ここが、何かって言うのは直接頭に入ってるでしょ?まあ、そー言う事。俺達は此処で試練チャレンジを乗り越えながら、クリア条件を探すって事です。安心してくださいって、俺達は仲間ですから。ほら、こいつらも皆、皆さんと同じで此処に喚ばれた奴らっすよ。勿論俺もね。協力して頑張りましょ~」


「仲間……。」


ホッとしたように息を吐くおじさんの肩を、ポンポンと馴れ馴れしく叩く男。周囲はそれを見て皆、ホッとした顔をして居た。


「なんか、よく分からないけど少し安心ね?」


「あ、うん。そうだね、美咲ちゃん」


クラスメイトの【名波ななみ美咲みさき】が比奈に声を掛けると、比奈も頷いて居た。


「あー、皆さんも安心してください!!!!!俺達は組織を作って、協力し合い【ゲーム】クリアを目指す仲間です!!!!」


拡声器の様な道具で茶髪とはまた違った青年が話し出す。清潔感の有る黒髪の男。何人かの女性がポーッとして居るのでイケメンなのだろう。萌香には良く分からないが。


(また、胡散臭い奴が出て来たな、……、この人達は絶対に信用出来ない。)



◇◇◇◇◇◇




男達は自分達を【組織ギルド】だと説明した。此処、神の箱庭エデンには、今1000人の人間プレイヤーが居るらしい。そしてその内の400人程が組織に入って居ると説明された。


「大元は俺たちの居る、ハートの組織ギルド。後は『スペード』『クローバー』『ダイヤ』と細かく分けて、管理して居ます。大体各、100名前後、あまり多いと管理が大変だからね」


人の良さそうな顔で黒髪の男は説明を続ける。


「ソロプレイヤーや、少人数で組んでる人達も居ますけど、基本的にそう言う人達はすぐに死にます。今回の……えーっと補充人数は40名くらいかな?それだけの人が今週、……死んだって事だよ。」


男が言うには週に一度プレイヤーの補充が有り、常に1000人程のプレイヤーが存在するように調節されて居るらしい。


男が話して居る間、広場は水を打ったように静かだった。


そんな中で萌香だけは違うことを考えて居た。



(ソロプレイヤー、ふーん。なら私は、そうしようかな、……、どれくらい力が戻って居るのか後で確認、しとかないとな……。)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る