第5話 クラスメイト同士
萌香が一人思案していると、比奈が声を掛けて来た。
「モエちゃん。……、あのね、モエちゃんはどうするの?私達はあの人達と一緒に行くけど、あのね、色々と教えてくれるって。さっき頭に入って来た知識以外にも沢山知らないと困る事が有るんだって。」
おずおずと比奈はそう言って、萌香の顔色を伺っている。美咲も今回は比奈を止めずにこちらを見ている。
「あのさ、高橋さんも来なよ。なんか歓迎会?してくれるらしいよ。……正直ちょっと怖いしさ。私らクラスメイト同士でさ、一緒に行動した方が良いって」
美咲も珍しく、萌香に話しかけて来た。
此処に一緒に召喚されたクラスメイトは、萌香を除いて全部で7人。
女子は比奈と美咲、後は、陰で援交してるビッチと噂されてるギャル。【
香夜は今は、組織の茶髪と楽しそうに話している。
「あの人は誘わないんですか?」
そう尋ねると美咲は顔を顰めた。
「いや、別にあの子は平気でしょ?男に取り入って上手くやるんじゃ無い?」
(……、あのギャルよりは私の方がマシって訳?)
美咲が比奈を止めずに、萌香を誘ったのは少しでも知っている者同士で固って居たいからだろう。
(勝手だな……。普段はハブる癖に。)
ほんの少しイラつくが、顔には出さないで続ける。
「男子は誘わないんですか?」
男子は4名
オタクの田中、山本。根暗な雰囲気の林。野球部の波野。
「あのね、男子と女子は組織が違うんだって。私達はハートの組織に、行くらしいよ」
比奈がそう言う。
「なんかさ、……、ちょっとそれも、変じゃんか?それに視線がなんか嫌な感じだし。でも、何も知らないでゲームとか試練とかクリアとか、無理っぽいし。だから高橋さんも、とりあえず一緒に行こうよ。組織に入るかどうかは後で決めても良いって言ってたし、あの人達」
どうやら美咲も、不穏な雰囲気を感じ取っているようだ。
(………歓迎会?しかも女子だけ別?絶対にやばいでしょ)
「あー、君達。俺ら、そろそろ戻るけど、どうする?迷ってるなら、ご飯だけでも食べて、説明聞いて行ってよ。お腹減ってるでしょ?」
黒髪の青年がニコニコしながら近づいて来た。そして比奈のお腹がグーと鳴った。
「あ…………、うう恥ずかしい」
比奈の顔は真っ赤だ。
(…………、私なら別に逃げられるし、説明って言うのも気になるし、付いて行くのも有りかな?)
「名波さん、いいよ…私も行きます。」
萌香が答えると比奈がホッと息を吐くのが見えた。
「んじゃ、君達は全員来るんだね?それじゃあ行こうか?」
ニコニコとして歩き出す男の背を追う。
男子含む、男性達がゾロゾロと萌香達とは、別な方向に歩いて行くのが見えた。
こっちは組織の人を除くと女性しか居ない。
「ねえ、高橋さんも、おかしいって思ってるよね?…………ヤバくなったら、逃げよ?比奈は全然気づいて無いし…………」
そう美咲から小声で話しかけられて、萌香は頷いた。
(…………、まあ、一緒に逃げる事になったら多少は手を貸しても良いかもね…別に恨みが有る訳じゃ無いし。)
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