借り物きょうそう

 我は魔王。千年を上回る戦争が続く中、我は魔王軍の指揮をしている。戦況は有利な状況にまでなった。我が軍は疲弊しているが、あと少しで人間を滅ぼすことができる。

 我は考えた。疲弊した味方軍を回復しつつ、人間どもを滅ぼせるか。あの勇者とかいうヤツをどう殺すか。ヤツは中々しぶとい。ヤツらの仲間の魔法使いを殺しても、ヤツは立ち向かってきた。中々正義感やら強いヤツだ。だが所詮は人間一匹。我が軍を持ってすれば、殺せんことはない。問題は、我が軍が疲弊しているから勇者が現れたら勝ち目がなくなるという点だ。故に今総攻撃をかけても勝てんのだ・・・。


 そこで我は最前線で戦うものを最小限にし、他の者どもで人間の死体を集めさせた。そして負傷した我が軍の体に変わって、人間の体を使った。魔術を使える者を集め、魂を人間の体に移し替えたのだ。

 するとどうだろうか!戦況は更に良くなった!これなら勝てる。そう思った。

 勇者とかいう忌まわしき人間さえいなければ、勝てていたのだ。ヤツは激怒していた。そのせいか、今まで以上の力を発揮し、魔王軍を殲滅した。戦線は崩壊。我が城まで攻め込んできやがった。

 激怒した勇者を前に、我は勝てなかった。勇者の右腕を奪ったとはいえ、我は左腕と右足は切り落とされ、胸に大きな傷を受けた。なんたる失態か。

 我はもう動けなかった。だが、完全に敗北したわけではない。我にはまだ奥の手がある。魔力を多く持つ我の魂と、魔法を上手く流せる体を持つ勇者一行にいた女の魔法使い。この二つを用いて、一気にヤツらを叩く。


 そうして準備万端の状態で攻め込んだ。しかしそこにはヤツがいたのだ。体の半分が魔物と融合したような異形な姿のヤツが。そして刃を向けてきた。「例えそんな姿でも殺せるぞ」と。きっと心まで魔物に支配されたのだろう。ヤツを我が殺さねば、この世界は終わるだろう。

 だから私が、あなたを終わらせてあげる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る