後悔

 僕には恋人がいた。

 しかし、それはつい最近までの話だ。どういうことか?簡単な話だ。

 訳あって別れることになったからだ。


「もう、別れよう」


 そう切り出したのは僕からだった。もう耐えられなかった。だから、忘れるために、お互いのために別れることにした。

 そう思うようになった原因は、約一ヶ月前まで遡る。


 彼女とは良く遊びに行ったり、しょうもない遊びばかりして楽しく過ごしていた。しかし何故だろう。最近他の男とよく遊ぶようになった。まぁ普通に考えれば、何も変なことはないのだろうが、当時の僕は少し疑ってしまった。リア充爆発しろ、なんて言ってた僕だ。何が普通で、何がおかしいのかわからなかった。

 確認しようと聞いたとしても、変な空気になるのは目に見えていた。だから聞かなかった。彼女が何をしていようと、彼女の自由なのだから、それをとやかく言う理由はない。そんな日々が続いて一ヶ月。今に至ると言う訳だ。


 別れを告げたとき、彼女は泣いていた。口元、鼻を両手で覆うようにして「どうしてそんなこと言うの?」と言いながら泣いていた。僕にはその反応が受け入れられなかった。どうしてそんな顔をするのだろうと。疑問しか残らなかった。何が、君をそんな顔にさせるのかと。不思議だった。

 僕が考えているうちに、彼女は逃げるように走って行ってしまった。その場に僕だけが残された。ぽつんと一人残った僕は、どこかぽっかりと穴が空いたような気持ちだった。何かが欠けたような、虚無感のようなもの。選択を間違えたのだろうか。こんなことを言うのは、まだ早かったのだろうか。



 それから暫くするうち、彼女との記憶が反芻する日々が続いた。過去の自分が見たら嗤うだろう。そこで僕は初めてわかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る