第32話 え?褒められちゃってる?
「クラル殿。貴殿は未曾有の危機たるA級
おぉスゴイスゴイ、漢字のオンパレード。
てか、リースさんって、王国騎士団の東団長だったのね。そんな大雑把に4つに分けられたうちの一つのトップだったのね。
東全部任されてるわけではないと思うけど、結構管轄広いんだから、そんなナリィタだけにいて良いのかと心配になるわ。
もっと大変な事件起こってるところ、他にもありそうですけど。
「あ、ありがとうございます……?」
俺は差し出された書状を、たどたどしく受け取る。
うわぁ、手触りからして違うわこの紙。
絶対いいやつだよ。こんな、俺んちの散らかった玄関先で渡されて良いようなものじゃないよ。
俺はとりあえず、紙を折らないようにして玄関に置く。額縁にでも入れて飾っておこう。
それで、子供ができたときには全力で自慢してやろう。
いやぁ、こんなのもらえるなんて大満足。
「ごほん。続いて、」
俺がいい感じの紙でできた賞状を貰ってほくほく顔してると、リースさんは何やら他のものを取り出して、再び咳払いをした。
え? まだあるの?
俺もう満足。腹八分目ですけど?
「その功績を称え、ここに王国特別勲章
……ほぇぇ?
「最後に、王国騎士団並びにナリィタ市よりこの度の報酬として、金貨10,000枚。国王陛下より、国宝
…………ほぇぇ?
今回ばかりはふざける余裕も、すっとぼける余裕もない。
言われているモノがデカすぎる。
新聞とかで見て、へぇースゴイなーってなるヤツよ?
それに、騎士団特別名誉団員と
そもそも入れるだけでスゴイ王国騎士団の、上の方の数人だけが受け取れるって言われてる、
それは噂では、淡いピンクの生地に、金や銀などで装飾された一品で、それを着ることが騎士団員たちの目標になっているとか。
儀式とかでイケメンさんが着てるのを見て、へぇースゴイなーってなるやつよ?
そして金貨10,000枚って、そんなんあれば働かないで生きていけますけども?
めっちゃアバウトに言うと、銀貨一枚が1万円で、それが1万枚だから、1億円。
1億あれば散財暮らしまでは行かなくとも、そこそこ裕福な暮らしが送れますけども?
そしてそして、最後の大物。
国宝
このヤバさが伝わるのか分からないけど、本当に一生安泰で崇め奉られる級のヤバさ。
まず、国宝が一般市民に贈られる時点で前代未聞というか、特例中の特例。
そもそも国宝を国が手放すことが少ないし、あったとしてもギルドとか騎士団とか中の良い組織に渡すのが関の山。
俺みたいなただの市民に贈るなんて、本当に英雄と称えられても過言ではない。
しかも、国からではなく、国王陛下直々に。
贈られる品自体は変わらないけど、付与価値というかブランドというか。その、重さが違うのだ。
王国からの事務的なものではなく、国王陛下から認められて、陛下の懐から贈られるという。
こんな非現実的なことなんて言ったら良いか分からないが、王室のブランドがつくというか。とにかく、それだけで何倍に価値が跳ね上がる。
いやはや、どれか一つでも貰えれば、子孫たちに語り継がれるような名誉なものなのに。
それを全て一気に、一人に渡されるって。ここはどこの異世界ですか? 俺もしかしてまだ寝てます? 夢見ちゃってます?
「ではこれを。」
魂が抜けたようにその場に立ったままの俺に、リースさんが次々と現物を渡していく。
まず渡されたのは
触れただけでえぇやつとわかるその服の胸には、
うわぁ、これが
桜の花の形をした金ピカの中に入れば、桃色の宝石が埋め込まれている。
ヤベェよ、こんなの売ったらいくらするんだよ……。
これがもし現実なら、売るなんてことは万に一つとしてありえないのだけど。
けど、やっぱ庶民である俺はどうしてもお金として考えてしまう。こればかりは仕方ない。そういう性なのだ。
「着てみたらどうだ?」
渡されたままの姿で、ただ服を見つめる俺にリースさんが言う。
「い、いやこんな薄汚い服の上に着るなんて恐れ多い。」
もう何年も使い古した寝間着の上に着るなんて、滅相もない。
そんなこと言ってたら、一生着る機会ないと思うけど、実際着ないで終わりそう。
こんな服着るような儀式に呼ばれることもないしな。
「ハハハそれもそうか。一応、その下に着る騎士団の服も用意してるぞ。」
騎士団長はそう言いながら、騎士の人たちが来てる鎧みたいな感じの布の服を取り出して、渡してくれる。
さっきからそんな荷物どこから取り出してるんだとツッコまれそうだが、俺もわからない。
多分、収納する魔道具みたいなのを使ってるんだと思うが、真相は定かではない。
「す、スゲェ……これ、夢じゃないですよね?」
俺は未だに信じられずに、つぶやいてしまう。
だって、さっきまで捕まるかとビクビクしてたのに、こんな服とか勲章とかもらうなんて、現実味がなさすぎるんだもん。
「疑いたくなる気持ちも分からなくはないが、現実だ。」
「ちょっと、ほっぺ叩いてもらっても?」
笑う騎士団長に、俺は頬を差し出す。
「いいけど、私は手加減できないぞ?」
リースさんは肩をぐるぐると回しながら笑った。
「強めくらいが丁度いいです。」
「そうか。ではいくぞっ!!」
気合を入れる俺に、リーフさんの拳が飛んでくる。
来いっ!!!
願わくば、これが夢じゃないように!!!
俺はそう願いながら目を閉じた。
「ってぇっ!!!! イタイ、ヤバイ、死ぬぅっ!!!」
俺は頬を抑えながらその場で飛び跳ねる。
ヤバいって、本当に!! 火出てんじゃねぇの!?
強くとは言ったけど、ここまでとは……!!
どうやら俺は、騎士団長の力を舐めていたみたいだ。
「どうだ?」
騎士団長は自慢げな笑みで尋ねる。
「痛いっす。ヤバいっす。でも、夢じゃないことは分かりました……。」
もしもこの痛みが夢ならば、それはもはや現実だろう。
夢ならぬ現実。もはや、現実が夢な可能性すらある。
言っている意味が分からないだろう。
大丈夫さ。俺も分からない。
というか、ここ数分に起きた出来事で理解できたのは、騎士団長のパンチが生半可なものじゃないってことぐらいだ。
後のことは、現物を見た今でも信じられない。
というか、いきなりこんなものを渡されて、ハイそうですかと納得できる方がおかしいだろ。
けど、現実なんだ。
マジで、俺が勲章を受け取ってるんだ……!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます