第27話 褒められちゃってる?
皆様おはようございます。
いや、もう外は暗いのでおそようございます?
でも夜に寝て夜に起きたってことは、あんま寝てないしめっちゃ早く起きたってことだから、やっぱおはようございます?
うーん、悩むところ。
あのあと一時間何しようかと協議を重ねた結果。寝ました。
はい、そりゃもうぐっすりと。
雨にも風にも夏の暑さにも負けず、テーテーテーテテーテーテテーテーの無敵BGMにも、テレッテ、レレッレレーの倒した効果音にも、自らの体から発せられる七色の光にも負けず、就寝しました。
はじめは気になって寝れなかったけど、慣れたらいい感じのBGMになって寝れた。
時々魔物の断末魔が聞こえてくるのがうるさかったが、わりかし快適な睡眠でした。
どうやって起きたのかと思うかもしれませんが。
それはもう、あの方ですよ。
皆様ご存知、無機質声の人。俺が裏で『草スキルの中の人』って呼んでることは内緒だ。
中の人のあの無機質な声は、周りの雑音とかに関係なく脳に直接響くので、目覚ましとしてものすごく有能なのだ。
業務連絡の定型文とはいえ無機質とはいえ、女性の声に起こしてもらえるってのも、またポイントが高いところ。
で、魔物は倒し終わったのかというと。なんと、無事に倒し終わりました!!!
正確には数体残ってたんだけど、そこは今騎士団の方々が倒して下さっている。
俺が寝ている間も、騎士団の皆さんはアイテムを投げ続けてくれていたみたいで、ちゃんと最後まで倒せたんですね。
本当に感謝でございます。あざーす。
まあ、そのせいで睡眠を妨害されたことも多々あるけど、全体を見れば御の字だ。
そもそも、あんなところで寝る俺も悪いし。俺が悪いし。
「ふぁぁ」
俺は大きくあくびをする。
眠いわけじゃないけど、寝た後って何故かあくびが出るよな。
騎士団の方々のはぐれ敵処理も、残り一体が今終わるとこみたいだし、俺も戻るか。
「ふぁあ」
あくびが止まらねぇわ。
てか俺、なんでこんなことしてんだっけ?
俺は東門の上で騎士団投擲部隊がぐったりしているのを見ながら思う。
事の経緯を整理すれば、ミアちゃんが王都に行ったユーリに手紙を出したくて、そのお供として俺が召喚された。
そしてその仕事は終わり、ご飯を食べているところで騎士団長に飯をこぼされ俺、激怒。でもちゃんと払ってくれたので俺、感激。
で、宿に向かって休憩しようとしたところで、謎のサイレンが鳴って状況確認のため、俺はミアちゃんを預けて走り出す。
その後カクカクシカジカあって、俺が
ざっと言えばそんな感じ。
うん、こう見ると、俺何やってんだって話だな。
ほんと、人生波瀾万丈とは言うが、万丈すぎはしないかな。
「お疲れ様。素晴らしい活躍だった。」
俺が万丈ってなんて意味なんだろうと思っていると、いつの間にか隣に立っていた騎士団長が労いの言葉をかけてくれた。
団長……!!
あれ、団長の名前ってなんだっけ?
えっと、リーズナブルだから、リースか!!
ほんと、記憶自体得意じゃないのに、人の名前を覚えるのはもっと苦手だから、すぐ忘れるんよな。
おっけ、リースねリース。覚えとく。
「リースもお疲れ」
俺はちょっと距離を詰めて、彼の肩を叩いていってみる。
これで馴れ馴れしいと怒鳴られたら、俺はもう今後一切人と馴れ合うのを辞めるだろう。
い、陰キャとか言うな!!
ただ人と話すのが苦手なだけだわ!!
……だから、そっちのが傷つくっての。
俺何度同じ過ちを繰り返すんだよ。
「いや、実際やったのはアイテムを投げただけだ。本当に、君に任せっきりだった。君は……何者なんだ?」
騎士団長は軽く笑いながら、俺の顔を覗き込んだ。
何者……?
何者って言われても、
あれか、自己紹介しろってことか?
仕方ないなー。特別だぞ?
俺は団長の肩を再び叩くと、真面目な顔でこちらを見る彼から距離を取って。
例のポーズをして、叫ぶ。
「空前絶後の超絶怒涛の一般人!! 草を愛し、草にアーーイされた男ォ!!! そう、ワーーレこそはぁっ!!! サンシャイーンッ、
ふぅ、決まったぜ!!
俺はジャスティスが荒野に響き渡るのを感じて、清々しい気持ちで額の汗を拭く。
自己紹介といえばこれだよな。
今の子には古いとか分かんないとか言われそうだが、かつて一斉を風靡した芸なのだよ。
記憶の交ざりでこの手の芸はよく見るが、この記憶の人は芸人が好きだったのだろうか。
「お、おぅ。自己紹介ありがとう。そうだな、君は超絶怒涛の一般人だな。」
騎士団長は少し引き気味に、何故か納得した顔で言う。
言った本人が言うのはどうかと思うが、あんな自己紹介でよく伝わったな。サンシャイ〇池崎さんも喜んでるよ。多分。
「ふぁぁ、疲れた。」
東の門まで意外と距離があって、歩くのに疲れてしまう。
スーパー〇ターの間寝てただけだけど、2時間も使えばやっぱ疲れるわ。やっぱりどこかで、体に無理させてるんだろうな。
「本当に、A級
騎士団長がしみじみとつぶやく。
「英雄ね……成れたらいいな。」
そんな褒めんなよ的な茶化しを入れようかと思ったが、彼の最後の言葉でそれを止めた。
英雄。俺の夢をリースが知っているわけがない。
誰かに英雄と形容される日が来れば、嬉しいな。
「もう夜だ。」
リースが空を見上げてつぶやいた。
サイレンが鳴ったときで夕方。戦い始めがちょうど夜の始まりくらいだったから、2時間後の今は完全に夜になって、星が輝いている。
夏の大三角とか、冬のなんだか星座とか、昔から見つけられた試しがないんだよな。
光が強いって言っても、そこまでの違いはなくない?
一等星とか言うなら、もっとピカピカ光ってもらいたいところ。
それに比べて月っていいよな。
めっちゃわかりやすいし、いつ見てもきれいだ。
満月に三日月、半月。そしてその間の月たち。
新月すら美しいなんて、ずるい。
「ふぁあ、ついたぁ!!」
そんなこんなで星を見ていたら、東の門についていた。
「君はこれからどうする?」
もうここにへばり込んで寝てやろうかと思う俺に、騎士団長が尋ねる。
どうするって言ったって、帰るだろ?
「普通に帰るよ。連れが待ってるからな。」
『連れが待ってるから。』死ぬまでに言いたい言葉ランキング115位のこの言葉を言えて俺は満足だ。
「少し後に呼び出すかもしれないが、どこに連絡すればいい?」
騎士団長は微笑みながら言う。
…………呼び出し?
何、俺やらかした?
やっぱアイテム使いすぎたとか?
怖いんですけど……。
「えっと……あの隣町のイナシキィっす。」
俺は怯えながら、正直に答えた。
母ちゃん……家に騎士団が押しかけたらごめん。
「なるほど、相分かった。」
騎士団長はうんうんと強く頷く。
あぁ、分かられちゃった……相分かられちゃったよ。ただの分かったじゃないよ、相分かっただよ。
『
本当に、俺は捕まるのかもしれない。
別に邪なことはなにもないのだが。警察署に行ったら、犯罪犯してなくてもビビっちゃうあれ。
チビリそうだよ、母ちゃん……。
「し、失礼します……。」
俺は多分真っ青な顔をしながら、東の門をあとにした。
と、とりあえずミアちゃんに会いに行こう……。
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