第25話 任天堂さん……ごめんなさい

これは、どういうことなのか?


騎士団員たちは困惑していた。


いきなり現れて団長と親しげだった男が、戦いのさなかいきなりスピーカーで町内放送始めるわ、それが終わったかと思えば自分たちを全力で煽ってきた。


そして、その挙げ句。煽り散らかして飛び降りたかと思えば、何故か無事で。


しかも体は七色に光るわ、謎の音楽を発しているわ。


そして何より、彼に触れるだけで自分たちが一丸となって倒していた魔物たちが、バッタバッタと死んでいく。


魔物を殺しながら呑気な笑みを浮かべていた男は、いきなり魔物を集められるアイテムが無いかとか聞いてくるし。


本当に、理解ができなかった。


はじめは煽られて、やってやらぁと思ったが、今は男の異様さに若干引いてしまって、それどころではなくなっている。


「あ、アイテムあるか?」


ざわめきすら起こらない騎士団員たちの中で、誰かがそんな声を上げた。


意味はわからないが、魔物たちを倒してくれているのは男なのだから、それに求められたのなら応じたいということだろう。


「遠ざけるのはあっても、集めるのなんて……。」


普通、魔物を集めたいなんて変態的なことをするのは、変態か変態か変態くらいだ。


そんなもの、騎士団には…………


「いや、倉庫にある!! 前に市民研修みたいなやつで使った!!」


…………あった。


しかも、ちゃんと変態的ではない理由で。


市民向けの魔物を倒す研修で、弱い魔物しかいないところでアイテムを使い、魔物を呼び寄せたときのあまりが残っていたのだ。


「けど、あれは初級専用では?」


「いいや、たくさん使えばその分効果も増すはず!!」


「取ってきました!! 箱いっぱいにありました!!」


さすが騎士団。

仕事が早く、話し合いをしている間にもう数人は下の物置場から、アイテムを持ってきている。


「よ、よくやった!!」


「で、これをどうすればいいんだ?」


アイテムを受け取った騎士が、それを見回して尋ねる。


アイテムの形はまんまるで、中央に丸いボタンのようなものがついていて。

さながら、モ〇スターボールだ。


「な、投げる?」


「いや、それじゃ彼が危なくないか?」


投擲のジェスチャーをする騎士に、隣の騎士が今も魔物と戯れと言う名の虐殺を行っている男をさして言う。


「でも不死身っぽいし……」


『テレッテ、レレッレレー』という音を鳴らして、どんな魔物でも触れるだけで倒していく男を見て、騎士が控えめにつぶやく。


アイテムはあるが、どうやって渡せばいいのかと騎士たちが悩んでいるとき。


「貸せ。」


それを見ていた副団長が、それを横から取って言う。


頭脳派である彼がどんな策略を使うのか。

騎士たちが固唾をのんで見守る中、彼は大きく息を吸うと、


「こういうのは、こうするんだよっ!!」


そんな指示語だらけの言葉とともに、アイテムを思いっきり投げた。


騎士団で鍛えられた筋肉で放たれたモ〇スターボールアイテムは、見事な放物線を描き……


『いてっ』


魔物とシャドーボクシングを始めた男の頭に直撃した。


ここがポ〇モンの世界なら、男はボールが揺れるモーションが2,3回したあと捕まってしまっていただろう。


「副団長……いくら恨みがあるからって……」


そんな鮮やかな投擲を見て、騎士が半分呆れたような声を出す。


「違う!! 間違っただけだ!! とにかく、投げてやれ!!」


副団長は図星もあったのか、それとも真面目に投げただけなのか。強く否定すると、もう一発投げた。


それもきれいな放物線を描き、


『いてえっ!』


今度は、男の足に当たった。


動く男のちょうど足に当たるなど、これは狙ったとしか思えない。


「副団長……話聞きますよ。」


「これ終わったら、みんなで飲みに行きましょう。」


「団長もわかってくれますって。」


もはや、呆れを通り越して慰められ始めた副団長。


「だからぁ!! 違うってのぉぉおおお!!」


彼の否定は、さらに慰めを加速させたのだとか。







モ〇スターボールアイテムを使うときは、人のいないところか、野生のポ〇モンがいるところに投げようね。











※任〇堂さん……ごめんなさい…………。

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