第3話 スニーキングミッション


 ダストゾーンから、機動エレベーターまでは直線のみちがあった。

 学部棟を抜けて、その先、宇宙まで天突く柱にたどり着く。


「さてこっからは別行動だ」

「え?」

「俺は、遠隔で、機動エレベーターの運行システムをハッキングする。その混乱に乗じて、リーチ、お前は、エレベーターシャフト内部にある動力源を奪い取れ」

「具体的に、動力源ってなんなんだ?」

「分からん、しかし、それほど巨大なものでもないらしい」

「こんなでかい柱を動かしてるのにか……?」


 天を見上げるリーチ。シームレスはその肩を叩き、先を促す。


「さあ行くぞ、ぶっつけ本番だ。お前、信条とかあるか?」

「なんだ急に」

「俺はある、『どんなサーバーでもシームレスにハッキング』それが俺の信条だ。お前は?」

「……必勝、とか?」

「ちょっと足りないな、他には?」

「……人殺しはしたくない」

「お優しいこって、じゃあ『必勝不殺』それがお前の信条だ」


 必勝不殺、その言葉がどこかしっくり来て、聞きなじみのある言葉に思えたリーチ。シームレスはノートパソコンを開くと。


「さぁ、作戦開始だ。機動エレベーターが大混乱に陥るぞ」


 シームレスがエンターキーを押した、その瞬間。ガコン! という大音量が辺りに響き渡った。


「機動エレベーターが止まった音だ! さあ急げ! 乗り込むんだ!」

「無茶振りにもほどがある!」


 駆け出すリーチ。その瞬間感じるデジャヴ。


(この道を俺は知っている)


 機動エレベーターの裏口から侵入するリーチ、裏口扉のロックはシームレスがハッキングで開けている。電子ロックも善し悪しである。

 そのまま乗り込む。エレベーターシャフト内部に入るためには、さらに電子ロックの扉をいくつもくぐり抜け、警備員の目をかいくぐる必要はなかった。全てはシームレスのハッキングによる大混乱の対処に追われていたからだ。

 エレベーターシャフトの重厚なドアの前にたどり着く。

 バルブを回し、内部へと潜り込む。

 そこにあったのは仄暗い空間、薄明かりの照らす、銀灰色の部屋。機材が並び、中央には円筒形状のケースが存在している。壁にはモニターがびっしりと敷き詰められていた。

 吸い込まれるように中央部、円筒形のケースに向かう。

 リーチはそこで、の姿を見た。

 セーラー服に身を包んだ少女は。眠り姫のように目を閉じている。

 おとぎ話の中にいるようだった。

 それに感じる強烈なデジャブ。

 思わず、言葉を漏らすリーチ。


「アカリ……?」


 その言葉に、反応したかのように目を覚ます少女。

 そこで事前にシームレスから渡されていた無線機に連絡が入る。


『どうだ!? 動力源は見つけたか!?』

「……アカリを見つけた」

『アカリ!? なんだそりゃ!?』

「女の子だ。セーラー服の」

『……間違いない、受胎告知だ』

「は?」

『いいからその女の子を連れて帰って来い! その子が動力源だ!』


 言われるがまま円筒形のケースを開き、アカリ(?)を抱えるリーチ。

 そのまま、その場を後にしたのだった。

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