第13話 やはり、サイトウ、最低だな

 早朝に目覚めた私は、炬燵こたつにくるまっていた。なぜだか、パジャマの下は穿いておらず、左の太ももが低温やけどしているのではないかと心配なくらいに暑かった。医療者としての矜持に目覚めコタツの台まで這い起きて台にひじをついた私は、炬燵の上にゲーミングノートPCと、みかんと黒ビールの缶とおっさん向けのワンカップ酒が置かれているのを目にした。


 どうやら冷え込む大都会での凍死を避けるために、私は炬燵に潜り込んでも黒ビールやワンカップ酒を飲みながら、『OUKIN』をプレイし続けていたらしい。一晩にしては随分とレベルが上がった『OUKIN』からログアウトした私は、ゲーミングPCのままで大学病院のアカウントにログインし、眠気覚ましを兼ねて、昨晩書くはずだったコウの面接初日のついての所見をレポートしたのだった。


 レポートのタイトルは、『希少な若年のDID併発型ゲーム依存症ゆえに、破瓜型のケースのような配慮が必要あり。』とした。要するに、初潮を迎えるお年頃の統合失調症患者と同等の配慮を行い、慎重にコウの治療戦略を立案すべしというものである。

 

 書き終えた私には、

 「やはり、サイトウ、最低だな」

 という、今は二児の母である腐女子仲間のスルガのツッコミが再び幻聴として届いていた。


 ……うー、頭痛い。。

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