罪ありき?

バブみ道日丿宮組

お題:いわゆる罪 制限時間:15分

罪ありき?

「ねぇ……どうしてそんなことするの?

 もしかして、私のこと嫌い?

 名前ちゃんと書いておいたよね?

 日本語読めない人?

 違うよね?

 だって、ちゃんと言ったものね。食べないでって

 テーブルに置かれたものは、殻になったプラスチック製の容器。

 いわゆるスイーツが入ってるはずであった。

「明日同じの買ってくるって?

 駄目だよ。予約しなきゃ買えない。

 それに今日買っておいたのは、限定商品。

 他のものとはぜんぜん違うの

 少女に向かって、幼い頃はひたすら頭を下げる。

「謝ればいいとか思ってない?

 現実は違うよ?

 なくなったものはいくら謝ったとしても帰ってこないんだから。

 知ってる?

 私、あなたの朝食を作って、早朝から買いに行ったんだよ?

 帰ってきた時、あなたは寝起きだったかもしれない。

 けれど、けれどさ……。

 少女が掴み取った容器がメキメキと音を立てる。

「こんな仕打ちないよね。

 いい気分で眠りについたのに……。

 目覚めが最悪だよ。

 何? 代わりに自分を食べればいい?

 知ってる?

 性欲と食欲は違うんだよ。

 いくらあなたを食べたところで、食欲はなくならないの

 えっ? そんなことはない?

 本当にそんなこと言ってるの? 

 言ってるのだとしたら、暴力も考えようだよ?

 幼馴染が冷蔵庫に向かう。

「代わりのものがある?

 さっきも言ったよね。

 限定商品だって、予約がいるって。

 しかも朝から並ばないと、時間がかかるって……。

 えっ、なにこれ? え、えっ?

 幼馴染がテーブルの上に置いたのは、少女が買ってきたものと同じ容器。

 つまり、同じ商品がそこにあった。

「……どうしたの、これ?

 私が買ってきたのと同じものだけど……?

 えっ、食べてない?

 でも、同じ容器……。

 たまたま同じだった?

 でも、こんなの冷蔵庫に入ってたら、私だって気がつくよ?

 奥の方に隠してた? だから、わからない?

 幼馴染の言葉に信用が持てなかった。

 けれども、少女が楽しみにしてたスイーツはそこにあった。

「私が勘違いしてただけ?

 謝ってほしい。ちょ、ちょっと待ってよ。

 だって食べちゃったようにしか思えないじゃん!

 それを謝罪しろなんて、無茶だよ

 ぷるぷると少女は震える。

 それを優しく幼馴染は抱いた。

「うん、うん。いいよ、もう。

 怒ってない。

 今度から誤解されるようなことしなきゃいいよ。

 うん、大好き。私も大好きだよ。

 そうだ。少し食べる?

 甘いもの好きだったものね。

 そうして、甘い時を二人は過ごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罪ありき? バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る