女装令息は悪役令嬢と婚約したい

ガブロサンド

女装令息は悪役令嬢と婚約したい

 この秘密を守るのは本当に大変だった。10年間、王立学校で俺はずっと守ってきたんだ。ついにその時がやってきた。


 きらびやかに飾り付けられたダンスフロアは、卒業を祝う生徒たちで埋め尽くされていた。皆が将来への期待に胸膨らませ、友との別れを惜しんでいる。


 そこに響く、絶望の声。


「マリアとの婚約は破棄させてもらう! このエルミーナと、真実の愛を見つけたのだ!」


 それは、グレーの髪に黒い瞳の公爵令息――俺の婚約者、ウォルター・スカルから発せられていた。さっきまで俺の隣にいたウォルターは、今は男爵令嬢の隣に立っている。この物語のヒロイン、エルミーナである。

 ウォルターは美貌を歪ませて俺を睨んでいて、エルミーナは目に涙をためている。隠しているが笑い泣きだろう。


「少しも可愛げがないのは大目に見てやっていた。しかし、愛しのエルミーナに対する数々の嫌がらせや陰口には我慢できない! 君の家にはすでに、婚約破棄と罪を通達してある!」


 全てでっちあげの冤罪であると、よく知っていた。だが、粛々と謝罪を述べた。


「婚約者としてお力になれなかった上に不快な思いをさせ、申し訳ございませんでした」


 俺はホールから出ていくため、ウォルターに背を向けた。視線が痛くて、背中に穴が開きそうで怖かった。


 出口に向かって真っすぐ進む。ドアの近くにいた集団が気まずそうにこちらを見ている。集団の中に――この物語の悪役令嬢になるはずだったリリー・ライトがいた。俺はリリーから目を逸らして、ドレスをつまんでホールに一礼した。


「もう二度と、皆様のお目汚しは致しません。どうか、お幸せに」


 目の前で、舞踏会の扉がばたんと閉ざされた。俺は振り返って歩き出す。


 さあ、物語は終わった。もうこの姿とはおさらばだ。ああ今日はなんてハッピーな日だろう! これから、リリーといちゃいちゃハッピーライフの物語を紡げるんだから!

 俺はルンルンとスキップしながら、従者の元に向かった。


■■


 俺は、オパール王国ブルー公爵家の子供、レオである。一番上に兄のオルカと、二番目に姉のルトリスがいる、お気楽息子だ。


 そんな俺には三つの秘密がある。


 一つ目は、俺が前世の記憶を持っていること。思い出したのは6歳の頃で、前世は現代日本で暮らすいたって平凡な男だった。


 二つ目は、転生したこの場所が、本の中の世界だと知っていること。現代日本で読んだ本で、男爵令嬢のヒロインが、貴族のイケメンと結ばれる話だった。冒頭の婚約破棄現場は、物語のクライマックスである。


 そして最後、これが最も重大である。それは、俺が女装していること。それも、6歳から現在までの10年間も。変態とか思わないでほしい、これには複雑な経緯があるのだ。


 転生したと気づいた時、俺が真っ先に思ったのは本の悪役令嬢――リリー・ライトのことだった。彼女によって性癖が決定されたと言っても過言ではないぐらいに、俺はリリーが大好きだったのである。第2の人生、リリーと結婚して毎日ウハウハ生活したいと願った。


 しかし問題があった。リリーの結末が、悲惨だったのだ。


 リリーはライト公爵家の一人娘で、腰までの金髪に青い瞳の美少女である。本のストーリーでは、彼女は小さい頃に、ウォルターと政略婚約する。でも王立学校入学後、ウォルターはエルミーナと浮気を始めてしまう。その理由は、リリーがちっとも手をださせてくれないから、だった(結婚するまでは処女であるべしが貴族のしきたりなので、性行為を迫るあいつはう…排泄物以下である)。


 卒業パーティで婚約破棄されたリリーは、今までの自分の価値観と、愛されなかった事実の板挟みになり、心を病んでしまう。そして、狂人として塔に幽閉されてしまうのであった。


 恐ろしいことにスカル家は、王族に次いで一番偉い貴族だった。さて、どうすればリリーを救えるだろうか?


 悩んでいたある日、部屋にルトリスが飛び込んできた。


「姉さん!ノックしてよ!」

「ほらーレオ、可愛くしましょうね〜」


 ルトリスが有無を言わさぬ声で俺を引っ張っていく。途中ですれ違ったオルカが、やれやれといった表情で俺たちを見ていた。ルトリスはお忍びで劇団を見に行ってから、仮装に魅入られてしまったらしい。俺を着飾らせて、手製の台本を読ませるのだ。


 ルトリスの化粧は上手かった。ドレスを着て金のかつらをかぶると、自分でも誰かわからないほどだ。凝り性の監督は、俺の胸にパッドを詰め込み始めた。


「男は露骨じゃないけど存在感のある胸が好きだからね〜。男の子が好きなしぐさは、男の子が一番わかるでしょう?」

「これだ!!!!」


 俺は天才的にひらめいた。急に顔をほころばせて叫んだから、ルトリスは驚いていた。


「姉さん!俺、女になる!」


 そこから紆余曲折を経て、俺はブルー公爵家令嬢マリアとなり、ウォルターと婚約し、学園で無事に婚約破棄されたのであった。


■■


「彼女が心配で…家からは結婚を急かされているのですが、わたくし国外に出て探しに行こうかと思いますわ…」


 暖かな光の差し込む庭で、俺の心は冷えかかっていた。


 婚約破棄の次の日、リリーが家を訪ねてきた。親友のマリアを心配して訪ねてきてくれたらしい。マリアは失踪したことになっているので、俺がレオの姿で対応した。

 『いちゃいちゃハッピーライフ』とは希望的観測であり欲望駄々洩れの願望である。よって、俺(レオのすがた)とリリーは初対面だ。レオの設定は、マリアの双子の兄。遊学を終えて実家に帰ってきたら双子の妹が失踪していた、という悲しみに暮れる慈悲深い男である。


 俺の懐には手紙が隠されている。リリーに婚約を申し込む手紙を届けてもらおうとしてたら、オルカに全力で止められたところだったのだ。妹が失踪したのにハッピーレター届ける奴があるか!とのことであった。正論である。なので、会話中の雰囲気でいけそうだったら渡そうと思う。


 “マリアは元婚約者と顔を合わせるのが辛いから、この国から出ていくと書き残していた。今は捜索願を出している”そう言った俺に、リリーは冒頭のセリフをかけてきた。


「えっいやここに…じゃなくて、公爵令嬢直々に探させるなんて、できませんよ」

「令嬢として育ってきた彼女が市井で生きていけるとはとても思えないのです。きっと怖い思いをしているわ」


 いえ今人生で一番ハッピーです、あなたのおかげで。そう言わないように口をつぐんだ。


「今回のことは彼女のせいではありませんわ…。なのにマリアが居場所を失うなんて、おかしいですわ」


 マリアの時、リリーとは親友の立ち位置を維持していた。彼女もそれを心地よく思ってくれていたのならば、嬉しいことだ。それにしても、マリア(俺)について熱弁をふるう推し最高すぎる。


「あのウォルター・スカル、マリアを蔑ろにして…! わたくし、一度スカル令息に、婚約者を大切にするよう忠告したのです。罵詈雑言しか返ってこなかったけれど…。ああ腹が立ってきました。今度あの令息に会ったら、一泡吹かせてやりますわ!」


俺は膝から崩れ落ちた。推しが振り上げた握りこぶしが尊くて。

(は? 天使?)


 愛しさに呆けている場合ではない。マリアはもういないことを説明しなければ。

(でも、なんて説明すればいい? もう元のストーリーはないんだから、婚約破棄を肩代わりしたなんて、信じてもらえないだろう。ただ女装してたやばい男になってしまうんじゃないか…?)

 俺は一秒で熟考して、口を開いた。


「…もしかしたら妹はまだ国内にいるかもしれません。国外にすぐに出られるとは思えませんから。妹を心配してくれる友人を持てたことは、兄としてとても嬉しいことです。もしよければ、一緒に探していただけませんか。お互い、気持ちも晴れるでしょうから」


 リリーは嬉しそうに頷いた。ひとまず国外に行くのは止められそうだ。あとは、真実に気付かれないようにして彼女の婚約者にならなければ。俺は内心頭を抱えていた。


■■


 町でマリアを探すべく、ライト公爵家の馬車に乗り込んだ。そう、リリーと二人きりで!! おっと、ハッピーになっている場合ではない。距離を詰めるチャンスである。


「ライト嬢は園芸がお好きなのですか? さっき庭をよく見ておられたので」

「ええ、そうなんです。子供の頃にシクラメンを咲かせてから、熱中してしまいまして…」

「おや、シクラメンの温度管理は大変だったでしょう。素晴らしい腕をお持ちだ」

「まあ、ブルー令息も植物にお詳しいのですね! 嬉しいですわ」

「私もです。専用の庭園でスズランやコルチカムを育てておりまして、よかったら今度ご覧になりますか?」

「いいのですか?!」


 嬉しそうなリリー可愛い。


「妹がよく、ライト嬢の話を手紙に書いておりました。とても素敵な令嬢だと熱弁していたので、お会いできるのを楽しみにしていたのです。想像より何倍も素敵だ」

「まあ、マリアが私のことを? 嬉しいですわ」


 …ん? 喜ぶポイントが違うような。気のせいか?


「ブルー令息、マリアは令嬢としてとても素晴らしい方でしたわ。わたくしなんて足元にもおよばないほど…」


 推しが俺を褒めている! ルトリスの演出と台本のおかげだけど! もう死んでもいいや!

 話していると、ライト家の従者が着きましたと合図してきた。馬車が止まり、俺たちは外に出る。今日は天気がいいので、人が沢山いそうだ。俺はリリーに訪ねた。


「妹がよく行っていた場所など、ご存知ですか? 聞き込みをしてみましょう」

「そうですね、あのお店など…」


 手掛かりなどないことをわかっていながら、俺はリリーを連れ立って歩き出した。


■■


 当然ながら収穫はゼロだった。リリーは見てわかるほどにしおれていた。顔に出やすいのは令嬢としては問題だが、可愛さ100点満点だからそのままでいてくれ。

 帰り際、馬車は川に差し掛かった。そういえばマリアの時に、リリーとこの川に来たことがあったな、と俺は思った。

 リリーも覚えているらしく、懐かしげな表情で川を見つめている。


「この川がなにか?」

「いえ、前にマリアと町に遊びに行ったとき、ここの魚に餌あげたなと思いまして…」

「餌やってみますか?」

「えっ!でも!」


 俺は従者に合図しながら、リリーに笑いかけた。


「大丈夫です。息抜きも必要でしょう? それに、俺とあなたが餌をやっているところを見て、マリアが怒って割り込んでくるかもしれません」

「まあ!」


 リリーがくすくす笑った。

 ああ、どうか。笑顔が見たくて存在しえない未来を語ってしまった俺を許してくれ。だって記憶の中で楽しそうに餌をやるリリーが恐ろしく可愛かったから、もう一度見たくなってしまったのだ。


■■


 マリア捜索を初めて、数日が過ぎた。なんの情報も得られないまま、捜索場所の候補だけが減っていく。


「ここも、手掛かりはありませんでしたね…」


 家出せず今ここにいるからね、とは言えず、俺は困ってしまった。正体をばらすわけにはいかない。だがこのままでは、マリアは国外に行ったのだろうと判断されてしまう。

 あてもなく目を彷徨わせると、ふと、遠くに、ひときわ大きな背丈と、グレーの髪を発見した。まさか、ウォルターか?!と神経を尖らせる。

 ウォルターの周りを、見知った学友たちが囲んでいる。集団はこちらには気付いていないようだ。


「あ、ライト嬢、あちらに人混みが!」

「え、あ、ブルー令息?!」


 俺は(丁寧に)リリーを引っ張って、人混みが出来ていた横道に入った。そこでは、サーカスが公演の宣伝をしていた。数人のピエロがチラシを配っていて、奥では檻に入った白い虎が昼寝している。猛獣だから、一応憲兵も見張っているようだ。


「へえ、サーカスと劇の共同公演…」


 チラシを見て、驚いた。ルトリスの所属する劇団名が書いてあったからだ。


 ルトリスは今、地方の小さい劇団の演出家にこっそり弟子入りしている。内密にするのは、この国の貴族たちが大衆娯楽を軽蔑していて、うちの父親も例外ではないからだ。ルトリスは、身分を隠す、未婚の間のみ、という2つの条件でなんとか劇団所属の許可を得た。師匠さんは、そんなルトリスの事情を全て知ったうえで受け入れてくれたらしい。


 リリーはそういう偏見は無し(むしろ娯楽好き)なので、マリアの時に既に姉のことを明かしていた。


「ルトリス様の…」


 リリーがつぶやいて、はっと口を閉じて俺を見た。焦っているようだ。


「姉の劇団ですね。どうしました?」

「あの…マリアから、内緒にするようにと言われたものですから…」


(律儀かわいい)

 幸せに包まれていると、急に子供の悲鳴が上がった。先ほどまで大人しかった虎がうなり、檻にのしかかったのだ。大人たちが笑いながら、子供をなだめている。

――檻が心もとない気がする。

 バキンと音がなって、ヒンジが二つとも折れた。俺がぎょっとするのと同時に、群衆から悲鳴が上がった。檻の開閉扉が倒れ、虎が娑婆に躍り出る。虎は俺とリリーの姿を瞳に映すと、こっちにむかって飛び上がった。


「危ない!」


 俺はとっさにリリーの前に立ちふさがった。虎の爪がギラリと光る。遠くで憲兵が麻酔矢を放つのが見えた。虎の腕から顔をかばうように、俺は腕を上げた。

 空中で、虎の体から力が抜けた。勢いのまま、俺達の上に落ちてくる。俺は焦って、リリーを押しのけた。自身が逃げる時間はなかったので、無様に下敷きになった。

 ずしんと重い虎の体にヒイヒイ言いながら、俺は腹の下から這い出た。慌てて憲兵が駆け寄ってくる。


「怪我はありませんか?!」

「大丈夫。君たちの麻酔のおかげで助かった。腕がいいんだね」

「恐れ多いことでございます! すぐに医者を!」


 どうやらけが人はいないようだ。辺りを見回すと、野次馬が遠巻きにこちらを見ていた。


「先程、檻に工作している人影を見ました。虎が急に暴れだしたのも、おそらく人為的なものでしょう。彼らに庇護はありません」


 俺は自分の身分を明かした後、大きな声で嘘の宣言をした。このままでは、公演自体が中止になるからだ。安全対策については公爵家で何とかしよう。

 虎と檻が運ばれていく。なんとか場を収めることはできたらしい。サーカスの団長らしき人がひたすら謝っていた。多分後で公爵家にも来るんだろうな…責任者は大変だな…。


 おっと、リリーのフォローをしなければ。きっとビックリしているだろうな、かわ…じゃなくて心配だ。俺は腰が抜けたように地面に座り込んでいるリリーのもとに向かった。


「大丈夫ですか? 手をどうぞ」

「あ、ええ、ありがとうございます…」

「先程は手荒な真似をしてしまい、申し訳ありません」

「助けてくださったのにそんな…。ああ、やっぱり兄妹ですのね…」

「え?」

「マリアも、いつでもわたくしを助けてくれて…。わたくしったら、なんだか、二人が被って見えてしまって…」


 ちょっと待て。おかしいな、過去が美化されすぎでは? そんなにリリー助けたっけ?

 リリーがじっと俺を見ていた。頬が赤い。俺ははっとした。


 この数日思っていたことなのだが、もしかしてリリーはマリアのファンなんじゃないだろうか。そうすると、マリアの正体バレは…キャラ崩壊の危機では?!

 想像してみよう。漫画の好きなキャラが実は女装で、生誕からずっと息子がついてます!となった場合を。当然読者からの人気は真っ二つだ。


『実は男だったとか、ないわー』

『だよなー。好きだったけど女じゃないとかがっかりだわ』


 現世で小耳にはさんだ会話が思い出される。俺は、目の前が真っ暗になった。


■■


「…って思ったら気絶しちゃった」

「なぜそんなに馬鹿なの?」


 俺は一日ぶりに目覚めた。横を見ると、ベッドの傍でルトリスがタオルを絞っていた。

 あの日俺が意識を失った後、リリーが従者と一緒に公爵家まで運んでくれたらしい。俺が事情を話すと、ルトリスはため息をついていた。


「家としても、今回のことは穏便に済ませるって。公爵家が資金出して設備を充実させたから、安心して観劇できるって宣伝するそうよ」


 俺が気絶したせいで大ごとになってないかと心配したが、大丈夫だったらしい。安心していると、部屋の扉がノックされた。


「お嬢様、若様、ライト公爵令嬢がお見舞いにいらっしゃいました」

「えっ!」


 リリーを待たせるわけにはいかない! 俺がベッドから飛び降りようとしたら、ルトリスに止められた。


「着替えなさい。つないでてあげるから」

「ありがとう姉さん!」


 俺はパジャマ姿だった。ルトリスが出て行ってから、そそくさと服を着替える。焦ってボタンを掛け違えてしまって、やり直さなければいけなかった。

 ルトリスは普通の人であるが、何かの誤解で小姑の印象が悪くなれば、婚約(予定)破棄の可能性がある。俺は廊下を走って応接室に急いだ。


 応接室で、ルトリスとリリーが何か話している。でも扉越しでよく聞こえなかった。


『自分がからかわれてるときはちっとも怒らないのにさ、私が親戚の子に夢をけなされたとき、ものすごく怒って喧嘩しだしたんだから。その、変わってるけど、いい子なんだよ。分かってもらえないと思うけど…』

『ええ、分かりますよ』


 多分、ルトリスが作り上げたマリアキャラの評判でも聞いてるんだろう。盗み聞きは趣味じゃないので、真似してドアをバーンと開けて入室したら、ルトリスに盛大に怒られた。


 リリーは俺のことをすごく心配していたらしい。もちろん本当の理由は隠しているので、虎のせいで倒れたと思っているようだ。手土産に、リリーが育てた青いスイセンをくれた。ああ、花が枯れるのがこんなに惜しいと思ったことはない。


 次の捜索の約束をして、リリーは帰って行った。


「あの子が女装してまで守りたかった子?」


 最後まで同席していたルトリスが俺に言った。

 オルカとルトリスには、夢と称して本の内容を教えていた。最初は当然信じてもらえなかった。俺の教えた容姿にそっくりなリリーとエルミーナが出てきて、ウォルターが浮気しだしたあたりで信じてくれるようになったのだ。


「婚約破棄されてすぐ口説いてるんでしょ? ほんと勇気あるっていうか強欲っていうか…」

「でも最近、女装は下策だったかなって思い始めた。ムキムキマッチョハゲにすべきだった」

「あんたの骨格じゃ無理よ」

「ちえー。…でも、どうしようもなくリリーが好きなんだ。だから、後悔しないように行動しようと思って」

「そっか」


 ルトリスは、何かを決意したような顔をしていた。


■■


 数日後、オルカの執務室に呼び出された。


「ウォルターが裏でマリアを探してるよ」

「え?なんで?」


 ブルー家次期当主候補、オルカ。俺が好き勝手してても両親から放置されているのは、この兄が優秀すぎるからだった。…決して女装を貫き通したからではないはずだ。


「スカル公爵が男爵令嬢の血を認めなかったから。執務能力もないしね。マリアを妾にしない限り、結婚を許さないそうだ」

「公爵見る目あるね。性別は見えないみたいだけど」

「あのねえ、のんきにしてる場合じゃないでしょ? ウォルターは血眼でマリアを探してるはずだよ」

「ネタはいっぱい掴んでるから、公爵に話を付ければいいじゃん。そもそも俺は男なんだし」


 初めから騙すつもりで婚約したんだから、当然ながら弱みはたっぷり調べさせてもらっている。


「公爵は動いてくれるだろうね。でも、それは精査して決断した後だ。単独のウォルターより早く動けるわけじゃない。あの婚約破棄だってウォルターの独断だったんだから。

ウォルターはプライドが高い男だ。自分が選んだ婚約者が落第印を押されれば、傷つくだろう。そして、現実逃避の為に突拍子もないことをする可能性はある」


(なんで自分のせいだと振り返ってくれないのかな…)

 とりあえず、教えてくれたことにお礼を言って、俺は部屋を出ようとした。


「レオ。学園でウォルターの格闘を見ただろう。どうだった?」

「…俺と同じぐらいかな」

「嘘はよくないよ、レオ」


 俺は振り返ってオルカを見た。

 言われなくても分かっている。ウォルターは強い。得意とかじゃなく、明らかに戦い慣れしている動きだった。もしウォルターと対峙して、勝てるかと言われれば。


 その時、ルトリスが部屋に飛び込んできた。


「ルトリス! ノックしなさい!」

「オルカ! レオ! 次の公演の脚本と演出させてもらえるって!! 私!」

「えっすごいじゃん姉さん!」

「あの脚本面白かったもんね」

「勇気を出して企画書を出したの。師匠が特に推してくれて! ああ、夢みたい。二人とも、見に来てくれるよね?!」

「えーそれはちょっと…」

「仕事が…」

「なんでトーンダウンするの!」


 俺達は三人で笑った。


■■


 リリーとの約束の日は、霧が出ていた。

 今日の捜索は、一旦別行動をすることになった。俺が付いてくるのをリリーが嫌がったからだ。ショックを受けたけど、内緒で後を付けたら高級下着店だったので安心した。ちなみにマリアの時一緒に来てた店だ。罪悪感をごまかすために、後でプレゼントでも送ろう。


 とりあえず街をぶらぶらして、時間になったら待ち合わせ場所に行くことにした。


「あれは、ウォルター?」


 町中で、ウォルターを発見した。エルミーナは一緒ではないようで、一人で噴水の傍に座っている。

 そういえばウォルターの件どうしよう、と考えて、俺はひらめいた。


「マリアの格好して、目の前で男の姿に戻ってみよう」


 マリアが男だと分かればウォルターも諦めるだろう。男を妾にすることはできないわけだし。それに、あいつが焦がれた巨胸は幻想で、替わりに息子が生えてると知ればもう会おうともしないはずだ。あとで、調べた情報で口止めすればいい。


は急げだ。さっさとウォルターを地獄に落とそう。


 俺は、こっそり待機させていた馬車に戻って、ブルー公爵家の青い制服を着た二人の従者に合図した。馬車に乗り込んで座席シートの下にあるレバーを引くと、馬車の内壁が開く。そこには、予備のかつらやドレス、メイク道具などが所狭しと並ぶ、圧巻の光景があった。


 これは、秘密を守るための、女装専用改造馬車である。馬車の室内は外形よりも少し狭くなっていて、空いた場所に女装道具を隠しているのだ。女装中はいつバレるか分からないという危機感から、常に準備するようにした。馬車以外にも、小型痴漢撃退グッズとか、逃走用の煙幕などを開発済みだ。


 服を着替え、化粧して、かつらをかぶって、声チェック。マリアの完成である。


 俺は馬車の扉を開いた。従者が差し伸べてくれた手を取り、ドレスのすそをさりげなく気にしながら、優雅に馬車から降りる。

 片方の従者に、待ち合わせ場所でリリーの相手をするよう頼んだ。俺はもう一人の従者を連れて、ウォルターのもとに急いだ。


 俺マリアを見たウォルターは、目をらんらんと輝かせた。許可してないのに俺の手を取り、口説き文句を垂れ流す。それから、出会った時のことから現在まで、口を挟む間もなく話している。所々記憶が都合よく改ざんされてるな。


 従者がウォルターを睨んでいる。やめなさい、俺も我慢してるんだから。


「公爵家から出てつらい思いをしただろう? もう大丈夫だ。君は僕が保護して幸せにするからね」


 ウォルターは、どうでもいい相手に薄っぺらな嘘を吐ける人種である。今までずっと顔と嘘で利を得てきたから、脳死でも言葉が出てくるらしい。

 というか辛い思いをさせた原因はお前だろうに、なぜヒーローぶっているのだろうか。こいつと関わるのがリリーじゃなくて、本当に良かった。


「そうだ、君はライト嬢と仲良くしていただろう? 彼女もいっしょに来ればいい。二人とも可愛がろう」


 は?


「お話になりませんわ」


 偽りなき本音だった。作戦は辞めて、俺はその場から去ろうとした。ウォルターを社会的に抹殺しよう、そうしよう。しかし、唐突にウォルターが腰の剣を抜いた。ウォルターは構え、真っ直ぐに剣を突き出した。


 俺はさっと身をひるがえし、ウォルターから距離を取った。驚いている従者に合図して、人払いを頼む。

 実はこのドレス、外側は普通のドレスだが、中の構造は袴と一緒だ。さすがにズボンには敵わないが、ドレスよりは動きやすく、足の動きを隠してくれる優れものである。


「何をしておられるのですか?!」

「虫がいたんだ。君を噛んだら許せないから…おっと、手がすべった」


 ウォルターがわざとらしくつぶやいた時、俺は地を蹴った。なぜなら、ウォルターの剣が手を離れ、真っ直ぐに飛んで行ったのだ。逃げ遅れた子供に向かって。


 間一髪で剣を避け、子供をかばいながら地面に転がる。フリルが緩衝材になってくれたおかげで、子供に怪我はないようだ。

――あいつふざけんな!

 立ち上がって、子供に、早く逃げろと怒鳴った。泣かせてごめんな。でもウォルターが俺の背中に刃を突き付けてるから、勘弁してほしい。


「フォローしてくれてありがとう。でも平民だから庇わなくてもいいのに。…ふふ、さすが、レオ君はなかなかの身のこなしをするね」


 ウォルターの声に、息が止まった。落ち着くために深呼吸して、振り返る。


「愛の力で分かったんだ。マリアなんて、存在しなかったんだね。でもスカル家に受け入れるよ。大丈夫、まだ未発達の医療ではあるけど、君を完全にマリアにすることができるんだ」


 完全にマリアにするって何?! 正直もう泣きそうだったが、令嬢スキルのおかげで顔には出なかった。


 ウォルターは俺を今から攫うつもりなのだろう。

 いや、待てよ、平民ならともかく、公爵家から捜索願が出てる人間を、白昼堂々こんな町中で攫うほどウォルターは馬鹿じゃない。じゃあ、攫われることはないのだろうか? でも、ウォルターは俺を治療が出来る場所に連れていきたいはずだ。…ウォルターは、どうしたら俺を都合のいい場所に誘い出せる?


 その場所に誘い出せたとしよう。でもそもそも、女にしてやるとか言われて、男が大人しく治療を受けるわけがない。ウォルターはどうするつもりなんだ。


 …そういえば、なぜあいつはリリーの名前を俺にピンポイントで出せたんだ?


 鳥肌が立った。


「でも妊娠はできないから、エルミーナの子供を、君の子供と父上に偽って、エルミーナと育てるよ。これでみんな幸せだ。僕がみんなを幸せにするんだ」


 俺は投降するように両手を上げた。


「今頃公爵家に報告が行っておりますわ。私と一緒にいた服の従者がね」


 相手の意識が一瞬過去を辿る。その隙をついて、ウォルターの腕を足で蹴り上げた。剣が空中に飛ぶ。俺は掴みかかろうとする腕をすり抜けて、全速力でその場から逃げ出した。

 肌にまとわりつく霧が、さっきよりも暗く、深くなっていた。


■■


 俺が待ち合わせ場所にたどり着いたとき、リリーはいなかった。争った形跡を見つけて、体が芯まで冷えるのを感じた。


 俺は、あいつらの時間稼ぎにまんまとハマってしまった。

 地面に手紙が落ちていた。骸骨模様の灰色のリボンで封がされている。俺は震える手でそれを拾い、リボンを引きちぎった。


『夜9時、スカル公爵家で待つ。男の姿で、一人で来い』


■■


「公爵令嬢を屋敷に運び込みました、ウォルター様」

「よし、警備を固めろ。まだ時間はある。向こうも策を考えるだろう。こちらも準備だ」

「は!」

「坊ちゃん!!坊ちゃん!!」

「何だ、騒がしい」

「侵入者です! 正面玄関から男が!」

「は?!」


■■


 スカル家侵入経路を色々考えたが、結局正面から派手に入ることにした。下手に忍び込んで他の住人と鉢合わせすると悪いからだ。スカル家の女性はのんきな奴が多い。ウォルター以外に恨みはないのだ。


 今の格好は暗めの迷彩服に、150センチほどの槍を持っている。甘辛マニッシュで意中の彼ぴを串刺しコーデである。


 俺がだだっぴろい玄関ホールに入ると、そこでは無数の護衛が待ち構えていた。皆剣やトンファーを持っている。護衛達が俺を円形に囲み、次々と飛びかかってきた。

 俺は槍を振り回して間合いを取りながら、足を払い、腰を叩き、壁に放り投げまくった。ちょっと辟易してきたあたりで最後の一人が伸びたので、やっとホールを抜けられた。花瓶とか絵画とか壁とか破壊したけど許してくれ公爵。


 この家は隅々まで知っているので、俺は真っ直ぐウォルターの執務室に向かった。

 扉を破壊して中に入ると、ウォルターが悠々と待ち構えていた。手にはレイピアを持っている。俺はウォルターに怒鳴った。


「ライト嬢はどこだ!?」

「地下室で眠っている。心配するな、お前の治療が終われば、開放してやるさ」


 想定外の時間に来たはずだが、ウォルターは余裕な態度を崩していない。俺が一人だから問題ないと思っているのだろう。どうでもいいけど男相手だと口調きついな。


 リリーを寒くて暗い地下室に閉じ込めるなんて許し難い。ビキビキと額に血管が浮いた。持っていた槍を俺が床に放り投げると、ウォルターが怪訝な顔をした。何をするのか警戒しているのだろう。俺はメリケンサックを手に装着して構えた。


「悪いけど、直接ぶん殴って屈服させないと気が済まないんですよね」

「そうか、ならば僕もお前を正々堂々と屈服させてやるとしよう。朝にはもう、きみはマリアだ」


 ウォルターがレイピアを投げ捨てた。俺はそれを待たず、ウォルターと間合いを詰める。右フックはかわされた。無駄のない流れるような反撃をなんとか受け流す。


 背が高くて肩幅もあるウォルターは、なかなかの迫力だ。しかも、鍛え上げられた岩のような筋肉から、俊敏な打撃を繰り出してくる。


 もっと早く動かなければ。打ち合いをしながら、胴に蹴りを入れた。ウォルターが机に激突して、山積みの書類が舞い上がる。ウォルターがさっと机の上に上がり、上から飛びかかってきた。書類で視界が遮られていた俺は、頭突きを食らってしまった。痛みの中で必死に手を伸ばし、ウォルターの腕を抑える。


「ウォルタ〜! 玄関にいっぱい人が倒れてるよ!」


 のんきな声が廊下からした。取っ組み合ったまま、同時にそちらを見る。


 ウォルターが、慌てて俺を窓に投げつけた。窓ガラスが砕けて、背中から地面に激突する。霞む視界に、ウォルターの拳が落ちてきたのが写り、間一髪転がって避けた。拳で地面がひび割れ、土埃が舞う。すぐに体勢を立て直し、構えた。


 俺ががむしゃらに繰り出した右ストレートは避けられ、肘でボディに一発入れられた。俺は腹を抑えて膝を折った。

 ウォルターが俺に、侮蔑を含んだ声をかけた。


「もう諦めろ。お前は、マリアとしか求められてないんだよ。そしてマリアを最も理解した俺こそが、頭のおかしいお前を最も有効に使えるんだ。お前は、学園での実績も友人も捨てる選択をした。お前には味方なんていない。どれだけ自分を犠牲にしても、ライト嬢はお前のことなんて受け入れてくれない。マリアがお前だって知ったら、失望して離れていくさ」


 今は、そうだ。でも、いつかは。


「知っても離れられないぐらい惚れさせますから」


 ウォルターを睨んだ。忌々しげな顔をしたウォルターが地を蹴る――瞬間、ぐらりと体が傾いて、ウォルターは床に片膝をついた。


「な、なんだ…?!」

「やっと効いてきました?」


 俺は腹を押さえながら立ち上がった。肋骨折れてるな、格好悪い…。痛みに耐えながらサックを手から抜く。


「この中に、毒を仕込んであります。360°霧状に噴射する仕掛けがあるんですよ。ごく微量なので、感覚や匂いでは分からない。

戦い慣れていれば、攻撃を避けるのに無駄な距離をとったりしませんからね。おかげで繰り返し噴射できました」

「くそ、薬がどこかに…!」

「これは、俺が育てた毒草たちを独自に配合したんです。体のしびれから、幻覚と意識混濁、呼吸不全で死に至ります。解毒薬は俺しか持ってない」


 調合にはスイセンの葉の毒も入れておいた。リリーがウォルターに意趣返ししたいと言っていたからだ。…待てよ、これは初めての共同作業では?!


 感動する俺に、ウォルターが朦朧とした顔で言った。


「お、おまえ、まさか、あの虎もお前が眠らせたのか…!」

「時間の無駄です。ライト嬢の所に案内してください。彼女を開放したら、解毒薬をあげますから。あっという間に症状は進みますよ。無力さに蝕まれながら、よだれと排泄物を垂れ流したくないでしょ?」


 多分、今の俺は悪役顔してるんだろうな。でも、ウォルターに正攻法で勝てるなら、 そうしてるんだ。


 リリーと従者は地下室に置かれたソファに寝かされていた。外傷はなく、気を失っているだけらしい。恰好悪い所は見られたくないので、起こさずそのままにしておく。

 地下室で見つけた、俺の背丈ぴったりのウェディングドレスは記憶から消しておくことにした。


 あらかじめ呼んでいた憲兵が屋敷に集まってきたのを見て、俺はウォルターに解毒薬を飲ませた。青白かった顔色が回復する。


「深呼吸してください。すぐに楽になります」


 本音では解毒せずに苦しませたいけど、国家権力の心象は良くしておくに限る。俺はウォルターを縛って立ち上がらせた。

 部屋に入ってきた憲兵たちが俺の周りに集まり、敬礼する。俺はウォルターに言った。


「もう終わりですよ、あなた。もう手加減しません。今まではさんざん逃げられてきたかもしれないけど、次はグレイブ家潰すつもりで詰めますから」


 ウォルターは膝から崩れ落ちた。その頬を涙が伝ったから、少しだけ同情心が湧いた。


「最後の言葉くらい聞いてあげます」


 ウォルターは少し目を閉じた。涙があふれる。それから顔を上げて、穏やかに言った。


「あなたってもう一回言って」

「連れてって憲兵ーー!!!」


■■


 ウォルターは、浮気とリリー誘拐、虎騒動(濡れ衣)の豪華三点セットで裁判所に起訴された。スカル公爵はウォルターとエルミーナを切り捨てることにしたらしく、判決前に北の駐屯場に下使いとして送られてしまった。早急に追放することで、無関係アピールをしたのだ。格下とはいえ、公爵家2家に手を組まれると厄介だからだ。

 北の駐屯地は、肉体的にも精神的にも厳しい訓練が行われるから、もう戻ってくることはないだろう。


 ウォルターがどうやって俺の正体を知ったのかは、ついに分からなかった。…愛の力なんて信じないぞ、絶対に。


 一人で乗り込んだことを、兄姉にはこっぴどく怒られてしまった。言い訳したけど、失敗したときに切り捨てるのが俺一人で済む、と考えたことがバレているらしい。たしかに軽率だった。


 俺はリリーを守ったことで(未来の)義理父に気に入られ、無事婚約してもらえることになった。あくまで婚約だ、と食えない公爵がニヤリと笑ったので、望むところだ、と俺も笑い返しておいた。

 …俺は正直、虎を放ったのはライト公爵なんじゃないかと思っている。認めてもらえたなら文句はないので言うつもりはない。奥さん似のかわいい一人娘とぽっと出の男が一緒に出掛けてたら、ムカつく気持ちはよく分かる。でも、危ない力試しはもうやめてほしい。


■■


 それから2年後、結婚を控えた俺とリリーは、二人でルトリスの公演を見に行った。


 今では、ルトリスはそこそこ人気な演出家になった。何本か担当した後に、オルカが手を回して、堂々と活動できるようになったのだ。

 オルカはルトリスの公演のスポンサーになって、領地の宣伝をしたり、グッズを売り始めた。そして、宣伝効果やグッズ利益をデータ化して父親や親族に突きつけたのであった。


 今回の劇の内容は「断罪の場で婚約者に裏切られる令嬢を、主人公が守る話」だった。主人公はかっこよかった。知略を巡らし、手回しし、武力と人徳と友情で悪役を返り討ちだ。ああ、俺もホントはそうなりたかったんだ。


 劇を見終わった後、リリーがとっても楽しそうにしていた。やっぱああいう男かっこいいんだろ知ってるもん。そんな風に拗ねていた俺は、リリーの幸せそうな含み笑いに気付かなかった。


「ふふ、レオもかっこいいよ」

「ありがと、リリー」


 俺がマリアだって知られたかって? それは、二人だけの秘密だ。

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女装令息は悪役令嬢と婚約したい ガブロサンド @gaburo

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