第167話木の実亭のオスタ4
オスタはダイダロスで作られ、使われているという魔動車という物の存在は知っていた
なんでも、馬車の代わりとなる物だと
ダイダロスへの鉄道なども便利なものだと皆が話しているのを聞いた、短時間での大量輸送を可能にしたそれはウルグインにも引かれているので、見に行こうとすれば見れたがオスタは見たことは無かった
交通網の発展。というものは間違いなくウルグインの好景気を持続させている
ウルグインの大穴ダンジョンから算出される魔石やダンジョン内の植物、倒されても残るモンスターの素材
そういった物が容易に輸出できるからである
オスタの宿はそういった物を求める冒険者の泊まる安宿であり、そのあたりの話題は欠かない
かと言って話に聞くのと実際にソレを体験するのはまた全然違うのは言うまでもないが
少なくとも今日オスタは
魔動車がトラウマになった。
間違いなく、アイのせいである
(確かに便利なものだろうけど…僕には合わないなぁこれ)
四方に並んだコテージの中心には石コンロが設置されており、そこで夕食を取った
道案内のようなものだと紹介された二人、
エルフのアイとエイラン彼女らを見ていると思い出すのは仲間のナルナナの姿だ
ナルナナは精霊魔法を得意としていて、彼女はエルフの末裔だったと聞いていた
だからだろうか、今日はやけに昔を思い出してしまう
大変だけど楽しかったあの頃、そう僕はみんなと冒険をしていた頃を思い出していた
どうしてこんなに、忘れてたんだろう…
スズリを育てるのに一所懸命だったからか?
だけど…スズリは仲間の忘れ形見で、それこそ本当に生まれた頃から世話をしてる。今ではほんとに僕の娘だと言える
苦労ばかり、掛けていると思うし
僕なんかが父親役だなんて申し訳ないが
今では本当にスズリを愛していると言える存在だ
「さて、オスタ。あなたの病気というか、ソレ治しておきましょうか」
思いふけっていたオスタはびっくりして顔をあげた
するとそこにいたのはアイだった。
「えっと、状況がわか」
「うん、カンザキ君から聞いてるからねーダンジョンで多量の魔力を浴びたことによる魔力拒否反応。まあ昔は誰しも通る道だったやつだね!」
オスタの声を遮ってアイが話捲りあげる
「は、その」
「私らん中じゃまあ子供の頃になるやつだからね。体内魔力が多い人に良くなるのよ、ほかの魔力を異物に感じちゃうっていう。ただ本来は魔法を使うなりしてやれば体内の魔力は減るから拒否反応まで溜め込むのは魔法を使えない程未熟な子だけなのよね!」
アイの分かりやすい説明により、あっさりと原因は判明する
「えっと、じゃあ僕が魔法を使えば直るんですか?」
「ところが一度拒否反応が出始めると使ってもダメなのよ」
それが拒否反応(アレルギー)と言うものだとアイは語った
「ま、その為に薬ってもんがあるの。今のウルグインでは症状を抑える程度が関の山だし、所謂霊薬と呼ばれるものもそれ自体に魔力があるからダメ」
「え?じゃあどうしたら」
「ほい、これ。1日2回、朝晩飲んでね!自然由来の処方薬だよ」
差し出されたのは丸い塊だった飴玉のようにも見える
「飲みやすい錠剤!まあ2日程で治ると思うよー材料は聞かないでね、これ金儲けに使えるって今回分かったからさ!あ、この薬はそのお礼だと思って!」
赤化病が治る
どんなポーション、霊薬の類でも治らなかった病気が
2日で治ると言う
正確には1粒目で治るのだが、2日続ける意味としては長年放置した事に寄る常病化のせいだと言う。それでも2日なのだが
「んじゃ、ちゃんと飲むんだよー!」
そう言ってアイは、エイランの元に走って行った
代わりにカンザキがやってきて
「治るんだってな、良かったじゃないか」
「はい、まさか、こんな簡単に」
「簡単でもないさ、運があるんだよ。あの薬の値段聞いたか?エグい値段だぞ?」
「それでも、この病気が治るならなんとしても支払うと思いますよ…全財産をはたいても」
「ま、そうだな。それが冒険者ってやつだもんな」
「はい」
オスタの目からは溢れる涙がもう止まらなかった
それは足枷となる病が完治した事なのかはわからない
だが少なくとも胸のつかえはとれたのだ
ーーーーーーーーーー
ー
それはナルナナからもたらされた希望だった
聞いたダブデは目を見開いて、即座にどうするかを決めた
パーティ再結成
それは悲願で、不可能だと思っていた
皆が散り散りに少しでも手がかりを探した
赤化病が治ったと噂を辿る
過去の文献を漁る
そんな事は、同じ病気にかかった者であれば当然のように探していた事だ。それでも答えが出ていないが、ダフデは諦めるわけにはいかなかった
「なぁ、ナルナナ本当なんだろうな」
ダフデは馬車の振動に耐えつつ、ナルナナに問いかける
今回のダンジョンはナルナナの見つけた古文書がきっかけだからだ
本当であれと思う
わずかな希望でもダフデ達には必要だったからだ
「間違いないと思う…実家のそれもおばあ様の持ち物だったから」
確かな情報筋である
ナルナナの祖母とは純粋なエルフと聞いている
純粋なエルフとは基本的に隠れ住んでいる者で、総じて長寿という
だからこそ、そのダンジョンへ向かったわけである
オスタの、赤化病を治すために
当のオスタはその事は知らないままに
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