第165話木の実亭のオスタ2
その当時のウルグインではダンジョンの深層到達が十数年ぶりに更新されたと話題になっていた
しかしながら、緑龍の翼はその中に居なかった
オスタが赤化病になり、療養。完治するまで緑龍の翼は活動を停止していたからだ
それがオスタ抜きで冒険に出るきっかけは、個人個人で他のパーティにまざり活動していたのだが、ナルナナがある遺跡を見つけそこにある宝物ーを手に入れる為にパーティが再集結したのだった
「おうオスタ!準備はできてるか?」
「ダフデ、君はいつもそうだ…準備を僕とナルナナに押し付けてさ」
「俺も色々してんだよ、ハンナの奴だっていねぇじゃねえか」
「はあ、変わってないね君は。ハンナは食料の買い出しに行っているよ」
そうは言いつつもオスタは知っている、ダフデが鍛錬をしていたことを。
このパーティは前衛のダフデ、サポートのオスタ
精霊魔法使いのナルナナに、魔法使いのハンナの4人パーティ
その中でもダフデはパーティの要だ。彼がもし倒れたらこのパーティは即座に全滅に繋がる
だから彼は常に強くならんとしていつも鍛錬をしていた
そんなダフデに文句を言っているのはこれも彼がパーティの中のムードメーカーでもあるからだ
明るい彼は、いつだってくじけそうになった時に支えになってくれた
オスタが赤化病に倒れた時だって、彼が待っててくれた
そして今回の「冒険」はウルグインのダンジョンではない
ウルグインの西、停滞の森と呼ばれる場所にある遺跡だ
そこは未知の遺跡で、ナルナナが見つけてきた場所である
「ただいま、今回はスラッジのとこの燻製肉とビアーチェの干した果物系が仕入れ出来たよ」
「お!いいねーよく買えたな、スラッジのとこのは人気だろ?」
「ええ、オスタが手を回してくれていたのよ。さすがだわ」
「ナルナナから話を聞いた時、ダフデがもう行く気満々になってたからね。その日に予約しておいたんだよ」
「おいおい、あれ二週間前だろ。やっぱオスタさすがだ」
リーダーでるダフデとの付き合いは長い。生まれた時からと言っていい
ウルグインで生まれた彼らは自然と集まって、そして両親が冒険者だったこともあり彼らも自然とダンジョンに潜るようになっていった
「いや…さすがなのは君だよ。ダフデ」
「ん?何か言ったか?」
「いいや、感謝してるよ。赤化病も殆ど完治してきた。その間、ダフデ、君が仕事をくれた。感謝してもしきれない」
「何言ってんだよ、恥ずかしいじゃねえか…だいたい俺ら、家族みてえなもんだろ?家族を助けるのはおかしなことじゃねえ」
「それでもさ。まぁ君とハンナに子供が出来るとは思わなかったけどね」
ダフデとハンナの間には一人の女の子が産まれていた。名前はスズリ。
生れたその日から、オスタはスズリの面倒を見ている
その代わり、ハンナもダンジョンへと稼ぎに向かえるからだ
「でも助かったわ。赤ん坊を世話したことなかったし」
「孤児院でね、僕とダフデは小さい子の面倒をよく見てたから」
それにダフデとハンナの子だ。僕は叔父みたいなもんだろ
そう言おうとしたがオスタも恥ずかしくなったのか言うのをやめた
万全の準備が出来たと思う
ナルナナの話を聞いて、その土地の地図を手に入れた
近くの村の出身の人がいたのは幸運だった
その人から停滞の森の話をいくつか聞くことが出来たのは準備段階としては上出来だ
実質解散状態だった緑龍の翼の仲間が再び集まり活動する
それだけでオスタは嬉しかった
解散の原因となったのは自分なのだから、そりゃあ責任だって重く感じている
しかしそんなそぶりをみせればきっとダフデやハンナ、ナルナナは本気で怒るだろう
だから今回のこの集結はオスタにとって本当に嬉しかったのである
次の日、オスタを残して3人は遺跡へと旅立った
冒険に参加出来ないオスタにはダフデとハンナの子供、まだ幼いスズリが預けられて……
その最後の時をオスタは思い起こし、涙を堪える
その後帰って来なかった彼らを探しに行こうにもスズリが居た
旅の人や、冒険者に依頼する金も、あの時は用立てられなかった。
スズリが大きくなった今でも彼女には本当の事は言えていない
そして彼らの足跡を追うことも、諦めていたが
だからこそ、この話をした同じ町内のカンザキが見てこようかと言った時には飛びついた
カンザキがこのことについて、手を貸すことにしたのはルネがスズリと仲良くなったからだった
そこでルネが母親について聞いてきた事がきっかけとなる
孤児であったルネは母親というものにも興味があったからだろう
そしてカンザキはその冒険者について調べていくうちについに見つけた痕跡
キャサリンとミナリで調査した遺跡にて、冒険者の証、ドッグタグを見つける
それを見てオスタはあつかましいと思いながら、どうしても言いたい言葉を紡ぎだした
「そこに、行くことは出来るでしょうか?お金なら、まだ幾分か余裕があります」
これ以上はという感情と、それでもという感情が入り混じったオスタ
最後の時を知る、それが1つの区切りと感じていた
自分でも分からない顔をしていたに違いないその願い
「ああ、いいぜ。どの道キャサリンとミナリじゃ詳しく分からなかったとこだ。そのタグだって、何故か遺跡の入口付近に転がってただけらしいからな」
それは渡りに船、望むままに話は進んで行った
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