第159話そこにある異世界16
久々に勇者パーティの四人が揃って、その一夜、祭を楽しんだのち次の街へと移動する
移動手段としては馬車を用意していた
いつまでも徒歩とはさすがにならなかったようである
トワがそれなりにお金を貯めていた事で、馬車の購入に至った
馬車とは言うが、生きた馬が引く訳では無くて魔法金属で出来たゴーレムの馬となる
そして、馬車自体も振動などは少なく中々快適な乗り物であった
これは過去の異世界から召喚された勇者の仲間が改善してきたりした成果なのだと言う
馬型のゴーレムもまたしかり
道中では、街と街の間辺りで野宿となる事になるのだがそこでもトワの持ってきた物が役立つ
元々、アランとトワ、シーナとすみれとテントを分けて寝たりはしていた
バラバラになったとき、その持ち物はアランとシーナが持って行っていた
それらの収納については、最初の結成時に与えられた魔法の鞄と言われる物を使用する
これは各個人に割り当てられたものだ
収納容量については全部を計ることができないほど大きい
ただ、収納できる数が大きさは関係なく16個までとなっている
これについての検証は道中いろいろと試した
たとえば、大きなリュックに色々と詰め込んでから収納することは可能で
実質小さなものであればまとめて入れることが出来た
また旅で使用している馬車であるが、ゴーレム馬とセットという扱いになり収用できている
テントについても、すみれが想像したような三角のテントではない
少し大きなもので、中には寝具が2つ備え付けられている上に、中では暖炉があり火の仕様も可能だ
強力な魔よけの結界に包まれているものであるため、野宿と言えど街中と同じように安全と言える
街などが通常魔物の襲撃を受けないのもそれがあるためだ
魔物と魔族は違う
だから結界内には魔族は平気で入ることが出来る
入ったのちに、結界石を破壊もしくは管理権限を書き換えて魔物が入れるようにしてしまう
それが理由で廃墟と化した街がいくつかあった
当然、大きな街、それも首都となるような場所では結界石も一つや二つではないから魔族が攻めるのは容易ではない
隠された場所に結界石が埋め込まれている場合などもある
首都などはその全容を把握することがなかなか難しい
街を破壊された場所に住んでおり、生き延びた人々は往々に首都に赴く
当然受け入れ量には限りがあるため、わずかでも安全を求め首都の周りには難民となった人々が集まり、小さな村を形成するに至っている
強力な結界周辺では魔物も弱いものしか存在できないため、何とかなるというのも良かった
強い魔物は、強い結界にほど近づけないのである
話が逸れたが、アラン一行が持つテントなどは中に居れば安全であるということが分かってもらえたかと思う
そこにトワが街で買い込んだ便利なものを色々と配置しているのである
とはいえ、元々が王家仕様のテントだったものである
それなりに満足しているのだがそれでも日本人であったトワとすみれは豪華な装飾よりも利便性を求めたのである
結果、シャワーや冷蔵庫などの設置を行った
トイレはもとから水洗だったのでそのまま使用する
王家の物だったとはいえ、数世代前の物だったようで現状出回るものと比べて時代遅れの物が使用されていたのでトワがアップデートしたということだ
さて、それなりに快適な旅である
ただ強力な魔物には出会うものの、いわゆる雑魚とは全くと言っていいほどに出会わない
四人の旅は順調すぎるほどの進みを見せるのである
◇
「まぁ成長してもらわないと困るから強めの魔物は残してあとは全滅させといた」
とはさくらとルネである
さすがに全滅は言い過ぎなのだが、進行方向を掃除とばかりにぶちのめしていくものだから
魔物の餌となる魔物まで狩っていたせいで餌に飢えた強い魔物ばかりが勇者パーティへと遅いかかっていたのである
結果的に効率の良い経験値稼ぎが出来ているのだが、アラン達は毎度苦戦を強いられるのであった
◇
道程がある程度進んだ頃、シーナを探しているという使者を拾った
その血濡れたぼろぼろの服から、何かがあったことは事は明白である
「あ、あれ…ここは?シーナ様!?」
「ええ、落ち着いて。もう大丈夫よ」
「私は無事に…良かった…」
その女性は安堵する
本当に疲れているのだろう、回復魔法はかけて傷は治したが目の周りには隈が出来ているし髪の毛もぼろぼろだ
「一体、何があったの?マーサがこんなところにいるなんて。あなた、道に倒れていたのよ」
水を手渡されたマーサは喉がものすごく乾いていたのだろう、返事をする前にそれを飲み干してしまう
「すみません、実は…神国が、昨夜、魔物の襲撃を受けて…教皇様も戦ってはいたのですが、私を逃がしてシーナ様に伝えろと」
しどろもどろの話し方で、いまだ混乱しているのが分かる
シーナとアランは酷く驚いていた
神国はそれこそ魔物に襲われるような国ではないからだ
しかも話からすれば、襲撃してきた魔物はアンデット
圧倒籍に聖職者が有利なはずの相手であるにも関わらずマーサの記憶の上では敗戦濃厚だったということになる
「信じられないわ」
「はい、でも事実です…巨大なドラゴンゾンビ…それが中心となり襲ってきたのです」
スケルトンやグールなどであれば聖職者で対処できるはずだった
しかしその数が万を超えていたという
神国の人口は5万人ほどだ
しかし聖職者の数は多いとはいえ、一万もいない
それどころか実戦対応できる聖職者ともなれば1000人程度になってしまうのではないだろうか?
死者であるスケルトンやグールは場合によっては通常の兵士との相性は最悪である
斬れども斬れどもよみがえってくるのだから
さらには倒された兵士を即座にアンデットとして戦力に組み込んでくる場合がある
「そんな、ドラゴンゾンビですって…だとすれば通常の聖魔法では対処できない…」
通常の、と付けたのは旅の中で得た知識である
祠を巡り、力を、魔法を手に入れるうちに様々な文献で知識を得ている
その中にあったのが、死して穢された魂が肉体を伴い蘇る最大級の脅威としての死竜、ドラゴンゾンビである
当然対処できるシーナは手に入れているが、母国神国には使い手は居ないだろう
焦るシーナ
今は魔王を倒す旅を進めている
しかし、母国が襲われている
早く魔王を倒してと考えるが、どうしても神国に残してきた親族や友人が気になるのも確かだった
「なぁシーナ、行くだろ?」
そうアランが言った
「え?」
「神国、助けに行くだろう?」
シーナははっとして周りを見れば、すみれが、トワの目が肯定している。そのアランの言葉に、シーナは力強くうなずいた
さて、問題は一つ
いくらここが神国に近いとはいえ、ゴーレム馬車で飛ばしても2日はかかる
そこを短縮し、行かねばならない
ひとまずは急げとばかりに、一時的に展開していたテントを収納、そして馬車へと乗り込む
まだ少しばかり体調がすぐれないマーサがいるのであまり無茶な飛ばし方は出来ない
「一先ず、なるべく揺れないように急ぎましょう」
アランが馬車を走らせる…
うっすらと、馬車の下に魔方陣が薄黒く輝いていた
闇夜に紛れて誰も気づかなかったが
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