第158話そこにある異世界15

どうやら、すみれをすぐに連れ戻せないと言うのは、彼女がこの世界に「呼ばれた」事が関係しているらしい


強制力が働いていると言えばいいのか、強引にでも連れ戻そうとするさくらはすみれに近づくことが出来なかった


「なんで!!なんで会えないの!?どうして!!」


調べた結果、それが強制力だと言うことが分かる

またそれがこの世界の「理」を乱す事になるからだと


さくらではなく、エルマやルネでさえもある程度までしか近寄れなかった


故に、見守ると言う選択肢を取る


また色々な面で何かサポートが出来ないかを考えたのだ



まず見守る



これは遠視が可能なルーンを使用した

監視カメラのようなものである

幸い、すみれに渡したブレスレットの魔石のルーンにその機能はあった


また、この半年の間に親しくしているその仲間達どころかこの世界全てに監視の目を置いている


そのルーンの数、なんと100万個を軽く超える


この世界において、エルマの知らない事はもう殆ど無かった



その結果、アーディルと子供達を救うことが出来た

その経過についてはさくらにはあまり伝えていない

すみれが、彼女の心が傷ついていることもやんわりとだけ


でなければ暴走するのは目に見えているからだ


「それにしても…すみれさんの成長は凄いですわね。心の成長が」


そうエルマは分析している


この世界に来るまでの彼女は普通の中学生だった


ちいさな虫に怯え、犬猫が好きで、甘いものが好きで


召喚されてすぐの彼女はまだ慣れない生活に苦心していたと思う

さくらに連れられて来た時既にガーディアンの起動後だったことに少し焦りを覚えた



そして即座に連れ戻そうと迎えに行くも、何かに阻まれてたどりつけない

魔王がいるからだと、討伐に行こうとしてもダメだった

魔族の強そうなやつを討伐も出来ない


それらはシナリオに影響するからのようだった


なので、仕方なく影響しない範囲を探ることに注力し、その把握に努めた



その結果、アーディルや子供達を助けることができたのだ


すみれ自身が疑問に思わない、そのアーディルの死を演出できた事で助けることが出来た



他には仲間である勇者たちの育成にも手を貸しているのだが、もちろんそうだとわからないようにしている



トワは育成の必要がないので、あえて放置しているがどうやら姉であるミナリと連絡を取れたのは伺えた



「しかし、魔王と逢引きはさすがに驚きましたわ」



その逢引きを確認した後、さくらの魔王討伐の意思は無くなっている

母からの手紙を渡したことも影響したのかもしれないが手紙の内容は魔王以外は知らないのでなんともいえないが想像だけである





さて、アーディルを倒した勇者、そして再び勇者のパーティは再結成された


経過した時間は一年ほどだが、もはやシナリオも中盤を超えている


本来であれば数年かかったであろうシナリオが加速度的に進んでいるのである


それはエルマとルネ、さくらの影響を多分に受けている事が、この結果を生んでいた


できる範囲ギリギリを攻めていることで加速度的にシナリオは進んでいるのである







アーディルの死後、すみれは積極的になった

それは強くなってくる敵に対してもである

倒せるときには直ぐにガーディアンを呼んだり、聖剣を生み出したりしている

仲間であるアインやシーナも少しばかり驚いたが、アインに至ってはかなりの成長をしているし

シーナとトワからの支援魔法によりガーディアンと比べてもそ



さて、この世界にも祭はある


地元の祝い事であったり、また宗教が絡んでいたりするものだ


神国とされる国は巨大な宗教国家だ


その教えを信仰しているものは当然だが他の国にもいる


「そうね、世界中に信者はいるって聞いているわ」


巫女であるシーナはそう言った

本人は元々神国から出たことが無かったのであまり詳しくはない


「それにしても生誕祭ねぇ…こんな時でも祭をするんだな」

「こんな時だからよ…神国にも魔族の手は伸びていたし」

「そうなのか!?大丈夫なのかそれ!」

「ええ、もう大丈夫よ…解決してきたから」


神国に潜んでいた魔族の幹部を倒したということである

それは過去の亡霊、アンデットだった

様々な祠をめぐり古の聖なる呪文を手に入れていたシーナは回復魔法だけではない聖魔法と呼ばれる中にある対アンデット魔法を駆使して倒していた


ちなみに生誕祭だが、およそ4日間行われる


風習と化している地方は単ににぎやかな祭が開かれるだけだが、神国では神事として巫女が祈りを捧げているのだ

シーナは魔王討伐の旅に出ているため、残されている他家の巫女数人が行っているとのこと




「やあ、アラン、シーナ」


「トワさん。お久しぶりです、お元気そうで良かった」


「うん。その様子だと修行は無事終わった様だね」


そのトワの言葉にすみれは悲しそうに俯く

アーディル達のことを思い出しているのだろう


「ええまあ」

「それじゃあどうする?少しばかり息抜きで祭を楽しんで行くかい?屋台の美味しいところなら案内できるよ」


「トワさん!それじゃ連れてって下さい!私めちゃくちゃお腹すいてるんです」


「うわ、すみれちゃん元気だね?いいよ、行こうか」


空元気だと言うのはトワから見てもよくわかったが、あえてそこは言わないでいた


アランとシーナも何も言わないところを見ると理由は分かっているのだろう

トワは後で聞いておこうと思ったが、その必要は無いかとすみれを見て思う

まわる屋台で食べるすみれを見て、その理由を自分自身だけで乗り越えようとしているのがよく見てとれたからだ




この日、最後の息抜きとなるのは何となく予感はしていた


だから、めいっぱい楽しもうと4人は久々の再会を楽しんだのだった


この街でアランとすみれの試練は終わった

そして次の街ではシーナの試練が襲いかかるのである



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