第145話そこにある異世界2

どうも、現場の相坂すみれです


異世界に来て4日が経過しました

今私はダンジョンと呼ばれる所に居て、レベリングしております


とは言え、私はミジンコステータス

戦闘には参加できません

遠く離れて見ているだけです


私に出来ることといえば石を投げる程度の事ですが、流石に怖くてできないですね


まぁ必要もないですし。3人で余裕みたい


アラン君のHPは500もあるそうですよ

シーナさんは400でトワさんで390とか

私ですか?聞かないでください。ミジンコにHPなんて聞いていけませんよ


「はぁぁぁぁ!」


トワさんの支援魔法を受けたアラン君の動きはぬるっとしてて変な感じです

さらにモンスターにも速度低下の魔法をかけているとのことでほぼ一瞬で決着がつきます


「魔月の火よ、穿て!」


シーナさんは魔法を使い、複数の敵を殲滅しちゃいます

ここでもトワさんの支援魔法で威力増大に使用魔力が減衰しているとのこと

トワさん有能すぎる


花形のアタッカーではないものの、その存在感は凄いです

支援職の重要性、ではないですね。トワさんだからって感じがします


そんなこんなで、ダンジョンに潜ってわずか2日。30階層からなるここを攻略完了するに至りました


一応ここを出ると私のステータスを確認して成長が無ければ私だけ王宮に残して行ってくれるそうです


正直助かりますね

この三人がいると危険もないので見ているだけで暇ですもん


モンスターはどんどん凶悪になってました、けど

父さんの異世界漫画に出てくるモンスターにそっくりなのでちょっと感動してしまいましたよ



ダンジョンから無事に出た私たちは王宮に帰還


ダンジョンアタック中にトワさんが転移魔法を覚えたとの事で、テレポートで一瞬です

ほんとなんでも出来ちゃうと言うか、トワさん一人いればどうとでもなるのではなかろうか?


帰ると、転移魔法!?失われたあの!とか言っててテンプレだなーなんて思ったり


そして私はめでたく王宮待機となりました


ステータスになんも変化無かったですからねー

ま、仕方ない


短い間だったけど、みんなと冒険したのは楽しかったな


アラン君は本当に優しい

細かい所に気がつくし、良い人だ


シーナさんは

見た目によらず謙虚で、そして人懐っこい感じだった

美人でこれならめちゃくちゃモテるんじゃなかろうか?


トワさんはなんて言うんだろ…見た目完全に子供で、中身は大人っていう…コ〇ン君かな?

とにかく聡明なイケメン。でも結婚とかしてないんだって

なんでも美人で強くてカッコイイお姉さんが居て、姉さん大好きなシスコンでした

めっちゃ笑ってしまった



あー、ほんと、楽しかった

でも明日からは一人か…


「あれ、なんで、涙が…」



与えられた部屋のベッドに座って考えてたら

寂しくなってしまった

今日まではみんなでいたのに…急に一人で考える時間ができたから


私はこっちの世界に一緒にやってきたリュックを開くと、スマホを取り出す

まだバッテリーはギリギリ残ってる


そして、メッセージアプリを開いてから姉さんとのメッセージを開けた


そこに、届かないと知りながらメッセージを書いて送る




姉さん、寂しいよ!家に帰りたい!



それだけ書いて、送信…


すぐにエラーになる


もっと寂しくなってしまった


涙が溢れる


「ふぐぅ、な、なんじゃこれぇ」


私は顔を、目を抑える


知らない地で、親しい人は誰もいない

みんないい人だけど、そうじゃないんだ


父さん、お母さん、お姉ちゃんに会いたい



溢れた思いが涙になってこぼれ落ちた



(…………ほしいか)


「ん?何か聞こえた?」


(ちか…しいか)


「ちかし?」


(力が欲しいか)


「力が欲しいか?」


ハッキリとそう聞こえた気がした









全身の毛穴が総毛立つ感じがした

赤みがかった髪の毛がぶわっと広がる


「すみれ!」


泣いている


すみれが泣いている!



今日はすみれの誕生日だ

あれやこれやと、プレゼントを用意して

近所で人気の洋菓子店にもケーキを頼んでる


久しぶりに妹に会えると嬉々としてサプライズの用意を進めてきた


そろそろ帰ってくるだろうってソワソワしながら待っていた




私、相坂さくらは22歳の大学生だ

考古学を専攻してる。大学を出たら大学院にすすんで研究職に就こうかと思ってる


彼氏はまだ居ない

と言うか、今が楽しいので恋愛なんて後回しだ

未知を求める楽しさより、恋愛が楽しいとか思えないから



そんな私だけど考古学より好きな物はある


一番は妹のすみれ

血は繋がってないけど、すみれは本当の妹だ

血より濃い絆がある


二番目に、父と母

厳密に言えばこちらも二人と血は繋がってない

そんなネタバレを喰らったのは12歳の時だっけ


それでも母さんは母さん、父さんは父さんだ


血より魂で繋がってんだこっちはって思ってた


三番目は友人かな?で、最後に考古学が来る


だから一番大切妹、すみれになんかあると私は離れててもわかる


それこそ、魂で繋がってるんだ





「父さん、大変!すみれが泣いてる!なんかあったんじゃない!?」


部屋で仕事をしている父の元へ行ってそう叫んだ


すると、パソコンでオンラインで打ち合わせをしている所だったけどそんなの関係ないとばかりに私は叫ぶ


「父さん!!」


するとくるりと 椅子を回して父さんは振り返った


「あー、分かってるよ…どうも異世界召喚で連れてかれたみてぇだな」


うちの父は少し変わった経歴がある

すみれにはまだ内緒だけど、前世が異世界で勇者だったと言うやつだ


普通なら信じないだろうけど、私には信じれるだけの材料があったから信じた


「そ、それでどうするの!助けにいかないと!」


「何慌ててんだ?すみれも俺の血引いてんだ、全然余裕だろうがよ」


私はその一言でキレた

つかつかと父の側まで行くと父の頭を掴んでギリギリと締め上げる

そのまま持ち上げて


「あのね、そういう事言ってんじゃないのわかるよね?すみれは泣いてるの、悲しい事あって苦しんでるの」


「ギギギギギッ!いあ、まてさくら!痛え!よ!」


「確かに危険は無いかもしれないけどね、苦しんでるのよ?わかってないの?ねぇ?」


「お、おろせ!手を離してくれ!死ぬ!俺が死ぬよ!」



パッと手を離すとどさりと椅子の上に落ちる


ぐおおと言いながら頭を抑えながら


「うう…母さんに似すぎだろぅ…死ぬよ俺…」


「父さん」


「わかった、わかったよ!行先は分かってるんだ、玲奈の奴に頼むから少し待ってろ」


父さんは再びモニターの方を向くと


「あー、てことだ、何とかなるか?」


画面の向こうの人にそう話かける

すると返事が帰ってきた


「あのババア、まさかすみれちゃんを呼び出すとはね…バカじゃないの」


私は邪魔な父さんを椅子ごとよけて、画面に映ってる玲奈さんに言った


「玲奈さん、お願い出来ますか!助けに行きたいんです」


すると玲奈さんは


「んー、さくらちゃん一人だとちょっと不安あるなぁ。あ、そうだ!ルネちゃんとエルマちゃんも連れてく?あの二人なら戦力になるし」


「良いんですか!!助かります!」


何とかなる、そう少しだけ安堵するが泣いてる妹を想えば気がはやる


「じゃ、あっちにも話通すからちょっとまっててね。今のうちに準備しとくといいよ」


「はい!」


オンラインが切れる


さて、準備しないといけない


「ごめんね、父さん!私用意してくる!」


部屋を出て、妹の部屋へ向かう

きっと着替えとかも必要だろうから



「あー痛え。最近あいつ、俺への扱い雑じゃねえか?昔は可愛かったのによ。すみれが産まれてからはすみれにべったりだし」


そうぶつくさ言いながら、父、元勇者は古い馴染みに会う算段をしようと腰を上げた

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