第120話ゴーレムの里

「よくゴーレムの急所が分かったな、キトラ」


キトラの放った矢は見事にゴーレムを一撃で仕留めていた


「なんかそこに魔力が集まってたから、それを撃てばいいかなーと思って」


「なるほどな、道理だ」


それに対してクロマは


「なんで弓矢で石のゴーレムの頭が吹っ飛ばせるんです?その矢は鉄…でも無理です…そもそも見えてすらなかったです」


そんな感想を持っていた


キトラはきちんと、なぜ破壊できるのかを丁寧に説明したのだが…


「キトラちゃん、化け物だったですね」


そういう結論に落ち着いたらしい


「おにーちゃん…私、ばけものだったのね」


「そうみたいだな」


「じゃあキャサリンは何なんだろう‥昔、弓矢で山に大きな穴を空けてたの見た事あるんだけど…」


もう破壊神か何かじゃないのだろうかそれは…そもそももう弓矢ですらなさそうだな


そう言って頭を捻るキトラに、カンザキはかける言葉は出なかった



ひとまず、このゴーレムの石材はさほどいいものではないとのことで放置することになった

この程度の石材であれば、普通に手に入るらしい

若干魔力が染みているので使い道がないというわけではないらしいが


「それじゃ、どんどん狩っていくか」


カンザキのその言葉に、クロマは慌てて言う


「いやいやカンザキ様、それだとこの辺がさらに岩だらけになっちゃいますよ。出来る事なら必要なものだけにしましょう?」


「え?ダメなのか?」

「ダメなの?」


カンザキとキトラの声が重なる


「あなた方の通った後には何も残らない気がします」


「ん?」


「そう、暴れるの大好きな子供みたいな人達ですね」


失礼な、片っ端から倒していけばいいじゃないか。きっとその方が早いし


「目的地はもう少しだけ奥なんです。一応、前回黒いゴーレムが現れたっていう場所教えてもらってまして」


「早く言ってくれよ、知ってるんなら」


「最初に言ってたと思うですが…それに、いやまぁ、途中まで方角が合ってましたから。さっき弓を撃った辺までは合ってたんです。それにまさかあんなところからゴーレムが倒せると思ってなかったです」


「ふふん」


キトラが胸を張る


「まさか見えないうちに倒すとかほんとひどいですよ…ゴーレムに人権はないんですか」


いやそれはないだろう。だって石だしモンスターだし


「とにかく、目的のゴーレム以外は倒さないようお願いします。実はゴーレムの生態って、変わってまして…」


そこからクロマが教えてくれるゴーレムの知識コーナーが始まった


なんでも生まれ出るのは全て石のゴーレムらしい

それがだんだんと共食い、ではなく合体していくと言う

それが大きくなるにつれ、さまざまな石材や鉱石などとくっついて

アイアンゴーレムだとかシルバーゴーレムになったりするとのこと


大昔にはミスリルゴーレムやオリハルコンのゴーレムも居たことが在ると言うから驚きである


「石より硬い物質を取り込んで大きくなるんですね」


「そ、たぶんそういう本能というか意思みたいなものがあるんじゃないかって師匠は言ってました」


「でもそれだと、あまりに大きくなってしまわないか?」


「ああ、不要な部分ってのは勝手に剥がれてくみたいですね」


「へー。不思議だなぁ」



実はこのゴーレムと言う物はかつて魔法大国であった所が作り出した兵器だったりする

発生要因を整えてある場所からゴーレムは産まれるのだ

そして、使役するための魔法キーを持った人間の命令を聞く

かつてあった戦争では猛威を振るったとされているが、ウルグインにはその話は伝わっていない


この場にダイダロスのミタニが居れば、すぐさまそこまで話してくれたのだが残念ながらそれを彼らが知る事はないのだ


とにかく、そういう理由で生み出されるゴーレムなのだが自己強化能力を備えている

そして魔法キーを持たぬゴーレムは主が居ない、野良ゴーレムと言えるだろう

魔法キーを持ってない人間にはその元々備えられている自己防衛本能のようなもので、襲い掛かってくることがある

そういう行動ゆえに、モンスターと言われている


「はぁ…まさかゴーレムをあんな簡単に倒す人達だなんて…本来は出会ったら逃げるものなんですよ」


「まぁ硬いしな。武器が無いと倒しにくいだろうし」


「そういう事じゃないんですが…」


なんだか呆れられている雰囲気を察してか、カンザキとキトラは話題を戻した


強い魔力に反応すると言う、魔力方位針と言う物がある

もちろん猫印だそうだ


ゴーレムはその成り立ちから特殊な魔力を発しているので、それを感知してくれるらしい


ちなみに人の魔力には反応しない


だというのに


「なんでカンザキ様の方を指示してるんですかねコレ…」


「そんな事俺に言われても…」


「実はゴーレムだったです?」


「そんなわけないだろ…まぁいいか」


カンザキは袋をごそごそとして、中からネックレスを取り出した

それを首から掛けると


「あ。針の向きが変わった…なんですかそれ」


「ああ、ダンジョンの中で昔見つけたんだ。どんな魔力でも隠すネックスレスだな。俺の魔力はそんなに強くないから隠す必要もないんで、不要だと思ってた」


「またとんでもないお宝持ってますね…カンザキ様は」


「そうか?」


「使い道は色々あると思いますけどね」


それが何かを話す必要はないと思ったのかクロマはその方位針が示す方向へと進むようにキトラに渡す

自分はキトラにおんぶしてもらったので、やはりここからも高速移動が出来るという事だ


「ゴーレムの足は遅いので、目的じゃない奴だった場合は無視して逃げましょう。ある程度離れたら、より強い魔力のゴーレムの方を向くので、そっちに行ってください」


「りょーかい!」


「以前見つかったって言われる場所までは普通に行ってもいいと思います。そこを中心に探しましょう」


「はーい」



そしてキトラが音もなく走り始める

これは風魔法を使っているからだ。しかも速い

ウィンドウォークの様な効果が自然とできるあたり、風使いとしての技量が高いと言える


しばらく進んだ先に、高さは2メートルほどの変わったポールの様な物があった


金属でできていると思われるそれにはコケなどが付着しており、かなりの年数が経っていると思われる


キャサリンだったら興味を持って色々調べるんだろうなとカンザキは思った


「この辺ですね!」


クロマがぴょんとキトラの背中から降りた


「針、どっち向いてます?」


「ええと、こっち…かな?ふらふらしてるけど」


「たぶん、何体かのやつに引っかかってるんです。そっちいくと定まってくると思いますです」


「ほーい」


そこからは普通に歩いていくことにした


周りの景色が、少しづつ変わっていく。かなりの数の岩山がある

その反面、木々は減っている


「へー。この辺は雰囲気があるな…あ、あれゴーレムじゃないか?」


カンザキが指さす方向にはゴーレムが居た


「ほんとです。でもあれは、ハズレです、先ほどのゴーレムよりは成長してるですけど」


「まぁ色も黒くないしな」


「ですです」


それからも何体かゴーレムを見かけるがすべて同じようなゴーレムだった

少しのどが渇いてきたので、休憩でもするかとカンザキが言おうと思った時だった


「ありました!あれです!」


クロマが指し示す方向を見ればそこには


「洞窟?いや…ダンジョンか?」


ウルグインほどではないにしろ、それでも大きな口を開けているダンジョンがそこにはあった

明らかな人工物である柱も何本かその黒く大きな入り口の周りに建てられている


「あれが黒いゴーレムが居たとされる、ゴーレムの洞窟です!」


クロマが嬉しそうな声でそう言った


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