第107話番外? 日本帰還編5

日本に帰還してから、もう2週間が過ぎていた


ミナリとユキはあれから色々あって再び実家の前に居る


消えた弟を探す手がかりとして

母が示した場所にあったのは、いわゆる三種の神器だった


銅鏡


銅剣


そして勾玉


途中、それらを所持していた者らと戦い

無事手に入れた


そしてついに、二人はもう弟のそばまで迫ったのだ


「ミナリちゃん、こっちはOKだよー」


「ええ、開くわ・・・それにしても、世界の裏側って、実家からいけたのね。いえ、だからここに一族は住んでいたのか」



ミナリはひとり納得して、結界を切り裂くー


三種の神器の力によって



勾玉で固定し、鏡で姿を現し、そして剣で切り裂く



「それに、憑依しているとはいえ神様って高天原に居てもおかしくはないわよね」


行先はたかのあまはらと呼ばれる場所


日本にあり、そしてミナリの実家のある場所の「裏」だ


ゴゥン・・・


重い音が響き渡る


ザぁ・・と辺りの空気が流れ、まるで酸素その物が入れ替わったかのようだ


ミナリの目の前には、見覚えのある社がその存在感を示すように建っていた


その社の前に立つはミナリの父である


そして、多数の白頭巾達


その先にはおそらく神と崇められた弟がいる


歪んだ魂の神が入った弟が









ワンボックスの車が高速をひた走る


乗っているのは、カンザキ、鈴木、鴉、清明、そしてむーたんだ

ちなみに運転は鴉がハンドルを握っている


「なるほどな、そんな事になっていたのか」


鈴木さんーとカンザキは鴉から事情を聞いた


「神裂家が神降ろしを成功させていたとはな」


「特秘事項やったんでしょう。自分もミナリ様が来なければ知る事は無かったですし」


そこで清明は言った


「私は知っていたよ。ただ結界があるかぎり京には被害はないだろうし、また私も結界維持があるから動けなかったが」


「あんなモロいものは結界とは言わんな?しかし神を名乗るとは身の程知らずもおるものじゃな」


そのむーたんの言葉に、清明を気遣ってかゲフンゲフンと鈴木さんがむせる


カンザキはふと考え


神出鬼没のぬらりひょんを思い浮かべた

知らぬ間に屋敷に入り込みひょうひょうと飯を食べ消える

いかに戸締りしようが、鍵をかけようが入り込める


それは何故だ?


そこでむーたんが、カンザキの思考に反応して言った


「ああ、それは存在確率を弄っておるんじゃろ」


ゾクリとして鈴木の背筋が伸びる

それをむーたんはじろりと、鈴木をみて


「ほう、お主がのう?ま、神扱いされてもおかしくはない能力じゃな」


「すみません」


何故か謝る鈴木さん


「まあ、この小僧と比べてもまだまだその方がレベルは高いわ」


そう言って笑う

しかし話が脱線する



「はぁ、で、今は何処に向かってるんだ?」


話を戻そうとカンザキは鴉に話しかけた


「あい、ほんの数刻前ですわ。ミナリ様から招集がかかりましてなぁ」


なるほど、それで目的地が・・・ミナリの実家か


「神裂の実家か・・嫌な予感しかしないな・・・あそこには嫌味ったらしい結界があったはずだ」


清明がそう言った


「知っているのか?」


鈴木さんの問いに


「知っているとも・・しかし、私が一緒に行く必要はないと思うのだが?しかしまぁ・・・結界維持の仕事がなくなったから行けるけども」


浮かない顔の清明がそう言うと


「心配するな、助っ人なら呼んであるぞ」


むーたんがそういうやいなや


「はぁーい。呼ばれました」


誰もいなかったはずの後部座席にいきなり一人の女性が座っていた


その姿を見て


ぶはっ


カンザキは思わず吹いた


「れ、レーナ!?」


「ほい、水戸玲奈ことレーナでっす。むーたんが面白いから来いっていうから来ました!」


「すまんな」


レーナは外を見て遠い目をして言った


「良き良きですよぉ。連休って暇なんだよねー・・・それにもうお金もなかったしね・・・」



課金だ・・きっと課金だな


「どなたですか?いったいどうやってそこに・・」


鈴木さんが思わず聞いた


「あー。ま、そこはほら、ちょいちょいっとね?どこにでもいるし、どこにもいないおじさん?」


「なっ?!」


一目で招待を見抜かれた鈴木は絶句する


「あとついでに懐かしい奴も呼んどいたからさー。カンザキも懐かしがるといいよ」


レーナはそう言うとくすくすと笑った


懐かしい奴ー?って誰だ・・思いつかないな・・


「な、なあシン、この女性は誰だ?そして何者なんだ?」


自身の正体を言い当てられてそわそわしている鈴木さんがカンザキに聞いた


「ああ・・えっと、昔の仲間と言いますか。えっと得意なのは・・・・」


「はい、玲奈おにぎり」


「ありがと真央」


「ちょっとまてええええええええええええええええええええええ!」


思わずカンザキは叫ぶ


「なんでエルアドラまでいるんだよ!?」


「え?玲奈のお世話・・しないとこの子すぐだらけちゃうよ?」


ああ・・なんかもう普通に「人間」しているのになんでこう、常識外の現れ方するかなぁ・・


「ああもういいや・・」


レーナにエルアドラ

レーナはかつての俺の仲間で、その正体はミドガルズオルム

今は玲奈と名乗り、東京で暮らしている

そしてエルアドラ

彼女はいまでこそおっとりとした見た目にはなっているものの、その正体は魔王

強さ関係で言えばおそらくこの中でも特別に強いのは玲奈だろう

だが、こと人間関係という力関係ではどうやら玲奈よりも真央の方が強いようだ


強いと言うか、頭が上がらない感じだけどな


「まぁゆっくり行かないでさ、さっさといこうじゃない。ミナリを助けに」


ああそうか、ミナリと玲奈も面識あったんだっけ?


そう思っていると、レーナは指をぱちんと鳴らした





「え!?うああああああああああああああああああ!?」


鴉が叫ぶ


気が付けば景色が一転していて

なぜかミナリの実家の山のある目の前を走っていた

その前にある大きな樹にぶつかりそうになって急ブレーキを踏んだのだが、

キキィという大きな音とはうらはらに一切の負荷がかからない

これは真央・・魔王が何かしているようだ


「ほい、ついたー!」


「一体・・・これは・・・」


「おじさんと同じ様なもんだよー」


「っそ、なんだと!?自分以外の・・しかもこんな大人数を!?」


「ま、出来る出来ないは力の差ってことでー」


にへらと笑いながら玲奈と真央が車から降りていく


「わし、足手まといになりそうやね・・ここで待っときますわ・・」


「私も・・だな」


鴉と清明がそう言って車に残る

降りたのはカンザキ、むーたん、鈴木さん、玲奈と真央だ

そこでカンザキはある友人と顔を合わす


その男は山を見据え、背中を向けている


しかしそのオーラと言ったらいいのか、雰囲気は懐かしく、そして厳しさを感じた


ただ、あの頃にはなかったやさしさがそれらを全て包んでいる



「おい・・・まさか・・・・」



カンザキは予想外の人物に思わず目頭が熱くなる

男はくるりと振り向いて


あの頃よりも幾分か成長したその凛々しい顔を歪ませ


「よぉ、カンザキ久しぶりだな。元気にしていたか?」


「ああ、アインこそ元気にしてたのか?なんでこんなところにに居るんだよ?」


「レーナに呼ばれたんだよ。それに、色々あってなぁ・・・」


彼の名はアイン


かつて異世界で共に戦いそして魔王を討伐したパーティのリーダーでかつ、勇者と呼ばれた男がそこにいた


「色々ってなんだよ・・・なんで・・日本に」


「ねえ、おとーさんこの人誰?」


アインの横からひょこりと女の子が顔を覗けた

かわいらしいおかっぱの女の子だ


「おとう・・さん?」


カンザキはその娘を見ながら、アインにあまり似ていないなとか思っていると


「ああ、いやその・・・」


「あ!おかーさんだ!」


そういって、その子はエルアドラ・・真央の元に走っていく


え!?


「おま・・・おかーさんて・・・」


「いや、その・・・色々あって・・あ、おいさくら!あんまりはしゃぐなよ!」


そう言ってアインは頭を掻きながら


「今は相坂刀弥って名前で・・あれはさくらで俺の娘だけど、血はつながってなくて・・、真央がさくらの本当の母親でな・・・・」


アインの話を聞いて、カンザキは眩暈がした


なぜならばそれはおそらくだが、カンザキとアインの「望み」が取り違えられていたからだ


だが・・カンザキはもう、ウルグインのあの店・・いや、あの世界が好きになってしまっている


今本当の事がわかってもどうしようもないのだ


それに


「最初は何だこりゃと思ったさ。だけど、あの子を育てて、この世界で暮らして悪くないなって・・・」


そうアイン・・刀弥が言う物だからカンザキもそりゃそうだよなと、知らず二人は涙を流した


「ほら、男ども泣かないの。再会がうれしいのはわかるけどね。今はそれどころじゃないでしょう?」


「レーナ・・・すまん」


「良いって事よ、それにまぁ一人たんないけどあの時のパーティ再結成ね。ま、一人足りない奴の代わりにあの時のラスボスが仲間にいるけどさ」


なんだそりゃと、カンザキとアインは笑った


そして、山から霊力の冷たい光が立ち上ったのもその時だった










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