第70話ドワーフ達の讃歌 後日談

巨大な魔石を手にマサは「猫の道具屋」尋ねていた


「これなんだがな」


ゴズンッと言う音と共に置かれたソレは魔力を帯びている


「にゃにゃ」


猫はシュタッと置かれた魔石の上に華麗に降り立つ


「ワシにゃどうもそいつが魔石には思えんのよ」


「にゃー」


「だが雰囲気は魔石その物だ。だからちょいと姉ちゃんに見てもらおうと思って持って来た」


「にゃあ」


「わかるか?姉ちゃん」


「にゃ」


「にゃじゃねえよ、にゃじゃ。ちゃんと言葉で喋ってくれよ」


「にゃー」


「このクソ猫!!!!」


ドガァ!!!!


「ギャフ!!!!」


「だれがクソ猫にゃ!ていうか誰に話しかけてるにゃ!」


「ってあれ?姉ちゃんが二人?って違う!!!」


「にゃー」


魔石の上に居た「白い」猫はシュタりと降りるとそのまま裏口の魔法陣へと駆けていった


「まったく、誰に似たのにゃ」


「そりゃ姉ちゃ」


ドガァ!


「どの口が言ってるにゃ」


「こ・・このく」


ドガァ!


「まったくマサは口の減らないやつにゃ!それで今日は何の用なのにゃ」


度重なる猫パンチを食らってふらふらとしながら立ち上がるマサ

頬をさすりながら言った


「この魔石なんだがよ、ワシにゃどうも魔石に思えなくてな。雰囲気なんかは魔石なんだが」


ふむ、と猫さんは魔石に前足を乗せる


「はぁ・・・・」


「お?わかったか?」


「何を言っているにゃ・・これは魔石じゃないにゃ。魔鉄にゃ・・・前に教えたにゃ」


マサはあー!と手をポンとたたき


「そうか、それだ!魔鉄だ!いやぁすっかり忘れてたぜ」


「まぁまぁ立派なモンにゃけど、あまり使い道はないにゃ」


魔鉄は魔石と異なり、そこらへんからポンポン採掘できる

猫印のアイテムに使用されている魔石は多くても、魔鉄となればその使用量はわずかだ


「いやぁスッキリした。あーあと、ツルハシ壊れちまったんで修理を頼みたい」


取り出したツルハシは見事に砕けている


「また壊したのかにゃ・・一体なにを掘ったらこうなるのにゃ・・・」


「ああ、ダンジョンででかい岩のゴーレムを・・」


バキィ!


「ひぐはっ!!!」


ふっとぶマサ


「お前はバカなのかにゃーーーーーーーーー!!!」


「ひでぇよ姉ちゃん」


「これも前に教えたよにゃ!?ゴーレムにはハンマーの方が効くって!!」


「だってハンマー持ってなかったんだからしょうがねえだろ」


猫さんのオーラがどす黒く燃え上がっていく


「ご・・ごめんよ姉ちゃん・・・・」


はぁ、と猫さんはため息をついて


「仕方ないにゃ。お前も仕事をキッチリしたようだし許してやるにゃ。今度はツルハシ2本じゃなくツルハシとハンマーにしといてやるにゃ。ちょうど魔鉄もあるから直してやるにゃ」


「助かる、姉ちゃん」


「ケーキとシュークリームにゃ」


「え?」


「ケーキとシュークリームを買ってくるにゃ」


「え?」


「聞こえないのかにゃ?このでかい耳は飾りかにゃ?」



バンバンバンバン!!!



「ギャーーーー!」


「さっさと買ってくるにゃ!」


「ごめんよ姉ちゃんー!!!」



まったく図体ばかりでかくなって・・・

あれでも昔は可愛かったにゃ・・・


はぁ、とため息をつきながら猫さんは魔鉄を奥の作業部屋へと運び込んでいった



----------



翌日



「猫の道具屋」



「ほら、そこにできてるにゃ。持って帰るがいいにゃ」


そこにはツルハシとハンマーが立て掛けられていた


「おお!!」


「猫印ツルハシ改と猫印真・ハンマーにゃ!今度は大事に使うんにゃ!」



「さすが姉ちゃんだ!」


「それと今出回っている魔石の質がちょっとだけ落ちてきてるにゃもっと頑張るにゃ」


「頑張るったって・・・」


埋まってるものを掘り出すだけだから・・・・と言いかけて


「わ、分かった」


姉ちゃんにはかなわない

それが姉妹の定め・・・


「まぁ、また困ったことがあったら来るにゃー、私は疲れたから寝るにゃ」


「おう、じゃぁまたな」


マサはドシドシと音を立てて奥の魔法陣へと進む


ドワーフ達の掘り出した魔石は選別され、その中で良い物は「猫の道具屋」へと運ばれてくる

そこで猫さんによる加工が行われて製品に組み込まれる


「ああ、そうにゃ」


「あん?」


「今度来る時はチーズケーキ買ってくるにゃ」


「わかりましたよ・・ったく」


そう言いながら顔がにやける


ちなみに・・・・なぜマサが猫さんを姉ちゃんと呼ぶのかは、姉妹だというのかは・・謎のままだ

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