第64話建国祭ー最終日 ミナリ
「あれ?ミナリ先生?」
キトラとシルメリアに案内されてきた焼肉ゴッド
その店頭にて先程別れたはずのモコとテレサに再会する
「すみません、実は別れた後で焼肉に行く事を思い出しまして」
ああ、それで二人で来たのね
それにしてもそうか、ここがその店か・・・
それじゃぁ入りましょうかと言って中に入る
ミナリは内心、そわそわする
それはあの人がいるかもしれないと、そう予感しているから
しかし店内には客どころか誰もいない
なぜだかホッとしてしまう
「あれ?完全に無人?」
そうミナリが言うと奥のほうから声がした
「はぁい。すみません今日はお休みなんですよー」
かるい足音と共にそう声がする
どこか、見覚えのある一人の少女が出てきた
ショートカットの小柄な、まだ幼さを残した美人という雰囲気の
そしてそれはミナリが探そうとしていたユキだった
「か、か、か!」
「え?」
「カグラザカさん!」
「はえ?」
そう言うなり駆け寄ってユキに抱き着くミナリ
「よぉかったあああああ!無事だったのね!」
「はえええええ!?あれ?せ、先生ぇ?」
感極まって涙を流すミナリにユキは戸惑ってしまう
「ちょ、先生、先生!大丈夫だから!てかなんでこんなところにいるんですか!?」
「ちょっともなにもアレだよ、コンビニの前で声をかけようとしたらなんだかこんなとこにいたっていうか!」
「え?ミナリ先生ユキさんとお知り合いなんですか?」
「テレサ、あのね、その、ちがうの!これには色々あってねぇー」
そして、少しばかり落ち着いたミナリはユキに経緯を説明した・・無論、ユキからも話を聞く
この世界に来てから声をかけられた女性に助けられたこと
そしてダンジョンを攻略した話
ユキの方は、もともとこの世界で生まれて生活していた前世があり、その関係で神に呼ばれたことをさくっと話す
モコとテレサは聞いて良いのだろうかとおもいつつもその不思議な話に耳を落とす
いつのまにかキトラとシルメリアは寝てしまっていたが、女神みにゅうが毛布を持って来たりしてー
双方の話が終わるころにはすっかり明け方になっていた
「そっかーミナリ先生凄い冒険をしてたんだねーあのダンジョン普通の一般人にはキツいのに・・そもそも勇者育成システムだからさ」
「そうだったんだ?行きながらカリキュラムみたいなもんだなーと思っていたから、でも転生なんて本当にあるんだねぇ」
「それは…神のちからあればこそよ!それとミナリさん。ありがとう!神である私はちょっと人探ししてくる!もし日本に帰りたいなら言って!向こうの神に話つけてゲート開くから!んじゃ!」
そう言うとみにゅうは外に飛び出しどこかに行ってしまった
なぜ御礼まで言われるんだろう?
私なんかしたっけ?
「あー先生あれだ。こっちに来て最初に出会った人、それがあのバカ女神が探してる人なんだよ、たぶん」
「え!?そういえば誰かから隠れてるみたいなこと言ってた様な・・・悪いことしちゃったな」
「いいのいいの。たぶんもう逃げているだろうし」
そう言ってユキは手をひらひらとさせた
ここでミナリは目的であるユキを見つけた
幸いにもケガもなく、生活にも困ってないようだったしそもそもこちらの世界で生きてた記憶もある
でも・・・
「でも、日本のご両親は心配してるんじゃない?」
そう、向こうにはカグラザカ夫妻がきっと娘を探しているだろうと思った
絵にかいたような、平凡な夫婦・・
その娘は破天荒でなぜこんな子になったんだと思っていたけど
「謎は解けたわ・・」
そりゃこんな「自由」な世界に生きてたんじゃ日本は息苦しかったのかな・・とミナリは思案する
そしてユキは少しだけ顔を落とす
いくら前世の記憶があるとはいえ、それは本人ではない
あくまでも日本で生まれた記憶のほうがきっと鮮明だ
「あーとおちゃん・・心配してるかな・・お母さんも・・・」
「うん、まぁ頃合いを見て一度帰りましょうか?さっきの人に頼めば行き来は出来そうだし」
ここは良い息抜きになる・・現代日本のストレス発散にもってこいだしね
ミナリもまた、一度帰ってからまた・・再度この世界に来たいと思った
新しくできた生徒・・いや、友人のモコとテレサがこの上なく好きになっているからだ
「ちょっとお腹がすいたわね」
昨夜から食べずにずっと話していたからである
すると二階からトントンと軽い足音を立てて
少女の格好をした文字通り「化物」が下りてきたのがミナリにはわかった
ミナリの横でうとうとしかけていたモコとテレサもその気配に気づいたのかハっと目を覚ます
「あらむーたん。どっかいくの?」
「おおユキか。ちょっと面白いことになっておってな。聞いておるか?」
「あーきいたきいた。あれでしょ、店長を国王にして3国を統一とか言う」
は?なにそれ
「て、店長を国王?」
「んと、ここの店長のカンザキさんは実は日本人なんだけどね、すごく強いのよ。で、キャサリンさんとシアさんが好きなんだけど、つれない態度とっててさーだから無理やり結婚する為に父親である国王を倒して乗っ取るんだってさ」
「は?」
理解が追い付かない・・・
店長が国王でカンザキで日本人で・・・・・・・
カンザキ・・・・さん?
「ねえ、そのカンザキさんの下の名前はなんていうの?」
「え?下の名前?知らないよーみんなカンザキさんって呼んでるし」
「そう・・・」
胸騒ぎがする
そう、これは胸騒ぎだ・・
ぞわぞわしているそこに駆けつけろと
急げと何かに急かされている気すらする
「ごめん、それどこであるの?行かなきゃいけない気がする」
締め付ける胸の痛みがひどい、苦しい
「たしかコロシアムだよ。むーたん!あれ?いないもう行ったのかな」
「コロシアムね、分かった!」
それだけ言うと店を飛び出す
「おお・・速い・・・ミナリ先生すごいねえ。モコさんとテレサさんはこれからどうします?」
「せ、先生を追いかけます!テレサ行くわよ!」
「モコさんまって!」
おお・・なんだか青春みたいだなぁ
そんなことをユキは思ったのだった
「さて、私は寝るかなー」
相変らずユキはマイペースなのだった
◇
「そういえばコロシアムの場所がわかんない!」
立ち止まって周りを見回す
「標識とか案内板とかないの!?」
知り合いの居ないこの街で、とてつもなく広いこの街で何も知らないミナリが探すにはあまりにも広すぎる
上空に飛び上がってみても、どこがそうなのか全く見当がつかない
方角くらい聞いてくるべきだった。そう思っていたとき
「ミナリ先生!こっちです!」
「テレサ!」
走りながらテレサに礼を言う
すると急に空が真っ黒に曇る
「な、なにこれ!?」
その中心から巨大なドラゴンが2体降りてくる
片方は・・・
さっきいた女の子と同じ気配?!
「あそこね!」
それらが降り立ったところは今向かっている方角と同じだった
「ミナリ先生!テレサ!」
「モコ!」
モコが空を飛んで追いついてきた
2人は手分けをしてミナリを探し、そしてテレサが先に見つけて案内していたというわけだ
「あの向こう、なんかヤバい雰囲気ですよ!」
「分かってる!」
だけど、行かなきゃいけない
このざわざわした胸騒ぎの元を見つけなければ納得出来そうもない
そしてコロシアムに着くと
どうやら既に決着はついている様で、今は女性が演説をしている
その少しばかり奥で縛り付けられた人が数名見える
中には豪華な衣装を着ている人もいる。あれが王様だろうか?
話に耳を傾けてみればそれは
「クーデターじゃない」
だが胸騒ぎのもとはそれじゃない
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「私の名はアレクシア・ウル・グイン。この革命は私達王族姉妹の望んだ結果です。国名が「カンザキ」となると共に、隣国ダイダロス、南の国ラスクロも賛同し、属国となります」
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カンザキ・・・・
そう、それだ
奥に見えるその豪華衣装の横に縛られて転がされているその「顔」は
「見間違えようがないわ。モコ、テレサ、私はきっとあの人を見つけるために出会うために、助けるためにきっとここに来たのよ」
「え?ミナリ先生?」
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「そして、私ルシータは王妃としてカンザキと婚姻を結ぶ!側室にはアレクシア、ラスクロのヴァネッサ王女、ダイダロスのユネーミア王女が確定している!その婚姻を持って、カンザキは3都市すべての王となる!」
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そう・・・何があったのか知らないけれど
「ふざけるんじゃないわよ!」
ミナリの目が、爛と輝いた
「それは、私が許さない!」
そして走り出す
その中心に向かって
「テレサ、ミナリ先生・・笑ってたね」
「ああ・・・なにか嬉しそうだった」
目の前に触れない壁がある、ぶつかったところで痛くはないが普通に抜けることはできそうにない
「結界!?防壁?!」
そんなもの、今の私には意味がない!斬れる、そう予感する
ミナリは飛び上がって・・・
ギャリィン!
腰の日本刀を抜刀
それだけの動作で結界を切り裂く
ズズッと崩壊する結界だ
随分と頑丈な結界だったわね・・
手ごたえからそう判断する
そのまま、地面へ、下へと降り立つ
思わず口から出た言葉はいつかTVで見たそれだ
「ミナリ見参!!!!!」
言った後で思った
ちょっとだけ恥ずかしいじゃない・・・
でもたどり着いたと気合を入れる
そんで思いっきり叫んでやる!
「シンイチロー兄ぃを!離せえええええええええええええええ!」
壇上にいる、キャサリンとシアを睨みつけてミナリはそう叫んだ
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