第46話建国祭1日目
ウルグインの歴史はまだ浅い
それを少しでも水増ししようと思ってもしょうがないだろう?
このダンジョンが発見されたのが500年前なので、ちょっとだけ遡ってそこで建国されたとはしている
そもそもこの地方はいろいろと訳ありなのである
かつて世界を統一しかけた国と言えば魔法大国マグナシアが存在していたが、それは1000年以上前に滅んでいるし、その際には周辺国家も軒並み滅んでしまっていたから、ウルグインだけが歴史が浅いという訳では無いのだが
だがそのウルグインの人口は現在数百万
近くのダイダロスも巨大国家ではるが、ウルグインの人口と比べればかなり少ない
さらに南の聖国や東の国などは優に数千年の歴史を紡いで誇っている国々ですら、人口は数十万である
だがその歴史深い国々に住む人々が憧れ、移住してくるのがこのウルグインだ
そしてダンジョンがその数百万の暮らしを支えている
それは豊かな暮らしを求めてくるものがいればそうだし
危険を省みずにダンジョンへと名声と富を求めていく冒険者などももそうだ
彼らはみな一様にこの国を、ダンジョンを求めて集まってきたのだから
今年の建国祭は3日に渡って行われる
この3日間で冒険者のランク付けを行おうということになっていたりする
その背景には一挙に進んだダンジョン攻略があるといっても過言ではない
90層以上のダンジョンは未だ王族以外は未到達だ
また王族に連なる者も強く、SSS級だといえる
だが今年に入ってからというもの、長らく65層までだった攻略が80層までを超えた
その中にぽつぽつとヒーロー・・つまり英雄と呼ばれる者も現れてきている
新人だったカイン・・彼はいまや英雄カインと呼ばれるまでになった
現状もっとも奥まで攻略したのが彼であり、彼のパーティだ
わずか数ヶ月での出来事だった
それ故に彼らだけだはないと今まで停滞していた者達も再びやる気をだしてしまったものだから一気に攻略
現在では78層に町まで出来始めている始末だ
その力は王家の脅威となりうると共に、戦力としても期待されている
それで今回の祭りでは今までのものと一風変わってきているのだ
ウルグイン武大会の開催が決定されている
1対1の対戦によるトーナメントである
つまり、パーティとしては強いけどソロだとどうなの?という意味合いもあるのだ
その中は細かく分類されている
剣、槍、斧に分類される
近接部門
また主に弓による
遠隔戦部門
最後に魔法による
魔力戦部門
である
これが祭りの最初の2日を使い、なんとぶっ通しでトーナメントが行われる
ちなみに予選はすでに終わっていて、本日からは本戦トーナメントが開催される
この大会を中心に祭は行われている
新しい国家らしい、荒々しく雑な祭ではあるが国民は楽しみにしていた
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「じゃあ申し訳ありませんがカンザキさま行ってまいります」
「すみません、姉をお借りします」
姉妹が二人して頭を下げる
シアとレオノールだ
本日から始まる祭には多くの国からおえらいさんが集まってくるらしい
そこに姫として参加しないといけないから、王宮に帰るのだ
シアは散々嫌がってはいたものの、妹のレオノールの説得に折れた格好である
まあ祭だからな、みんなで楽しみたかったが仕方がないところではある
ちなみにキャサリンは未だ行方不明扱いをされているために帰らなくても大丈夫だとか
それがシアが一番納得できないと叫んでいた理由である
実際のところは国王がルシータは帰らなくて良いと言っているらしいが
クナトの話に寄れば「ルシータ怖い」と言っていたそうだ・・
なにをしたのか気になるが聞くと色々と怖いので俺も聞けないが
ちなみに予定通り屋台は出すことにしている
店は閉めてもよかったのだが、ユキとミニューが店番をするとの事なのでやらせてみることにする
ユキはなぜか二号店ができたら店長をするといきまいているのでマジで二号店ができるのも時間の問題かもしれないな
そうしてカンザキは一人屋台に立っていた
モンスターケバブ・・
モンスタートルティーヤ
そのメニューを元に立ってはいるのだが・・・誰も来ない
うーん、やっぱ露天じゃなかなか売れないか
それに…売り子が俺じゃぁな
今店に来てくれている昔なじみはともかく、最近きてくれているのはやはり女性店員達の力が大きいのは痛感する
この状況を見る限り認めざるを得ないな
やはり新メニューの開発が必要か!それともなにか別なことが必要か!?
まだ露天を始めて1時間だというのに考えが物凄く迷走してしまっている
それと言うのも、実は忙しいことに慣れきっていたことも要因の一つだろう
「なぁあんちゃん、それ美味いのか?」
隣の店のおっちゃんに話しかけられる
「あーうまいっすよ。食べます?」
「モンスター肉ってあるが何の肉なんだ?」
「あー今日のはコカトリスっすよ」
「はぁ!?いくらすんだよそれ・・ってなんだその値段。・・・安すぎだろう?本物ならその100倍はするだろう?」
ここ最近、コカトリスは無事に?討伐されるようになっている
それは石化の解除が可能になったというのが大きい
だがまだまだコカトリスは高級食材である
となりの店のおっちゃんがバカにしたような目をするのも無理は無かったりする
ちなみにミノ肉は誰も食べようとしなかったらしい
それはユキに聞くまでカンザキは知らなかった
聞いたときに思わず、
「美味いのに食べないの!?」
といって凄い嫌な顔をされた
だけどまぁ
「そうだね、日本だと牛とかもさぁもうお肉の形になって、綺麗にパック詰めされて自分のとこにきちゃうから忘れてたよ。それにしてもカンザキさんはすごいねー。あれを食べようなんて思っちゃうなんてさー・・・ほんとに日本人だったの?」
「あんなに美味いのに・・・そうだなぁ、食わず嫌いは辞めようっていうか、昔から何故か味がきになってたんだよ」
「や、それあんま信じられないけどなんとなく、食べた後ならわかるようになった自分も怖い」
そんな会話をしたくらいだ
おっと話がそれたか
「そうなのか?でもそんな値段じゃぁだれも食えないじゃないか」
隣の店のおっちゃんにそう言った
「ま、そういうもんだよ。俺はコレうってんだ、食ってみろよ」
そう言って
「シカ肉の腸詰めだ。美味いぞ」
「お、ソーセージか頂くよ。・・・美味いな!」
「だろ?ダイダロスに行った時に売ってたのを食べて気に入ってな、それで作り方をおしえてもらったのさ。でもこのウルグインじゃなかなか売れないんだ」
まぁそうだろうさ、新しいものは売れない街だからな特に食い物なんてな
「ほらおっちゃん、俺のもやるから食ってみろよ」
そういってトルティーヤを渡す
「ほお、この皮の中に野菜と肉が入ってんのか。どれ、食ってやるか」
もぐもぐとして・・・お。一気に食った
「おい、おめぇさんこれもしかして本当にコカトリスなのか?」
そう言って目をきらきらさせているおっちゃん
「そうだよ。最初からそう言ってるだろ」
「はじめて食ったがこの味は凄いな・・・とんでもなく美味い」
「だろ?でも売れないんだぜ」
「はははは!そりゃこの値段でコカトリスとか言ってたんじゃ怪しさこの上ないからな!」
となりの店のおっちゃんと、この暇な祭の中でカンザキは楽しんでいた
そうして日が暮れるころにはぼちぼちと口コミで売れ始めたカンザキとおっちゃんの店
いそがしいというほどではなかったが、それなりの売り上げにはなったようだ
そして店じまいをしようと露天にカバーをかけて片付けようとしているとキャサリンがやってきた
相変わらずクソ可愛いな!
「よ、カンザキ売れたかい?」
そう言ってその大きな胸を強調するように突き出してくる
さすがに照れる
「ああ、ぼちぼちだな」
「そっか、じゃあその売り上げで今日は飲みにいこう」
そういってキャサリンは俺のてを取って歩き出す
「おっちゃんまた明日な!」
カンザキは大きな声で挨拶をすると、おっちゃんは手を振ってまた明日と言ってくれたようだ
「なぁキャサリンなにかあったのか?」
足早に歩くキャサリンに問いかける
先ほどからの様子が何かおかしい
「いや、なにもないさ。ちょっといきたいところがあってね」
そう言って路地を入っていく
するとそこには
占いの館ー
占いエリアだった。あの日シアが行きたそうにしていたところだった
「まさかキャサリン・・・占いか?」
「悪い?」
そう言って笑うキャサリンの顔はちょっと赤くなっていたような気がした
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