第37話カンザキの一日 前編

その日のカンザキは早起きして出掛ける


祭の打ち合わせがあるのだ


一階に降りると、キトラが起きて暇そうにしていたので


「なあキトラ、ダンジョンまで野菜を取りに行ってくれないか?」


と、お願いをする


「うん!いつものとこだね!」


そう言って二階に上がって凄い勢いで荷物を用意して降りてきた


「いってきまーす」


「あ、グリフォンをやったらちゃんと片付けろよ!ヒュドラが来ちまうからなぁー」


キトラは既にダンジョンへ向かって行ってしまった


聞こえたかな?まあ大丈夫かキトラも強くなっていたしな







そして打ち合わせを終えて帰ってくる途中の事だった


兵士達がその「祭」に関するポスターをあちらこちらに貼って回っている


ガルバが言っていた祭の告知ポスターが貼り出されたのだ


カンザキは貼り出されたポスターに近づいてみてみると


「鹿さん結婚おめでとう祭」


!!?


おっと、眩暈が・・一瞬変な世界に迷い込んだ気がしたぞ。


よく見てみると


「ウルグイン建国記念祭」


そうだろ、そうだろう。なぜ鹿の奴を国を挙げて祝うのか・・・


カンザキは知らなかったが帰ってくる前日に実際に行われていたりする


「鹿さん結婚おめでとう祭」


その際に鹿はシャルロットとともに御輿に乗せられて街中を回ったという


もはや国民すべてに周知され、本当に逃げ場がなくなっている鹿であった


もし万が一にも、離婚しようものなら国から追い出されるのではないかと怯えている


だが幸いにもシャルロットは非常に良く出来た娘であったので、鹿が本当の意味での陥落もそう先の話ではなかったりするのだが



そうだなぁ・・屋台って言うとやっぱ肉串とかそういうものが良いか?


もしくは野菜巻いて肉を出すか?


その2本立てで行くか?


「おーい、シアーいるかー?」


カンザキは二階に向けて大声で呼ぶと


「はい、カンザキさまお呼びですか?」


シアはすぐにトントンと音をたてて降りてくる


「来週の祭りなんだけど、出店を出してもいいらしいんだ。さっき商店街の集まりがあって、出店スペースもらえた」


朝から出かけていたのはそういう理由があった


「それは、おめでとうございます!どのあたりに出せるんですか?」


「中央広場の周りが飲食向けの露店場所みたいでな、その隅っこなんだけど場所を貰えたよ。新参者だからどうなるかと思ったけど結構良い場所を貰えたようだ」


カンザキは持って帰った広場の地図をテーブルの上にばさりと開く


飲食露店出店予定数2350店と書いてある


ほかにも、土産物屋や、武器防具道具店などいろんなお店があるようだ


シアはその中の一角に目をやる


占い屋


その地図には既に店名も書き込まれている

それを熱心にシアは見ている


やっぱり女の子だな

どうやらシアは占いをしたいんだろう


「シア、占い屋にいきたいのか?」


カンザキがそう言うと

シアは耳を真っ赤に染めて


「いえ、し、知り合いの娘が占いをやっていると聞きまして、居るかなぁと思って見ていたんです」


そういって手をひらひらさせてちがうちがうといったジェスチャーをする


「まあ、露店がひと段落したら行ってみたらいいじゃないか」


どこの世界でも女性はこういうの好きなんだなぁとカンザキは思った


「はい、ありがとうございます」


うつむきながら笑顔になっているのがカンザキには何故かわかったのだった



そして二階に上がり、自室に入る


ん?ベッドが盛り上がっているな・・・


「キャサリン、部屋間違えてるぞ」


と、ベッドから視線を逸らして言うと


「ふぇ?」


起き上がったのはむーたんだった

そうか、忘れていたがむーたんことバハムートが1人?増えたんだった。

寝る部屋が足りないので一緒に寝たのだ


「すまんむーたん、まだ寝ていていいぞ」

そう言うとむーたんはぱたりと倒れて寝てしまう




さてと、野菜の仕入れはキトラに頼んだし、

シアに頼んでガルバから酒を買って来てもらうかな


以前カンザキは野菜代わりに世界樹の葉を使った事があるのだが、単体で食べる分には美味しかったのに肉を包むと全く味が変わってしまい、美味しくなくなってしまったことがある


他にも霊草など色々試したがダメだった


結論を言えば、ミノ肉に合う野菜しかり普通の野菜だ


もう一般的な野菜しかモンスター肉には合わないと判明している


肉に合わないと言えば、先日むーたんにベヒモス肉を出したら怒られた

どうやらむーたんの予備の肉体らしく、共食いは嫌だと言われてしまった


ダンジョンで育てていたらしい。物騒な話だったが、倒した者が食べる分には問題ないそうだ。

まあ、店で出してるって言ったらまた怒られたが


「シア、すまないけどガルバから酒仕入れてきてくれないか?」


「はい、わかりました」


シアは仕入れに使う帳簿などを用意してから


「いってきますね」


そう言ってシアは綺麗な髪をふわりとなびかせながら出て行った



さてと、俺もちょっと仕込みだけやっとくかなぁ


久々に一人の時間だった


カンザキはここ最近の事を思い出しながら手を進める


キトラとシルメリアに出会った

そしてシアに出会って


キャサリンが俺の店と自分の店をくっつけちまったり

ダイダロスでは、同郷のミタニとも出会って

結局バハムートは俺と契約を結んだ


ちょっとの間に色々あったな


カンザキはおっさんらしく感傷に浸っていたりする


その時、店の入り口がガラリと開いて


「あ・・あのぉ・・・・て、店長?」


何か声が聞こえたような気がするな


そう思って店の中を見てみるが誰もいない・・

入口は空いているのに・・


そう思って入口までいくとそこに


ボロボロのローブに身を包んだ女の子が倒れていた


確か・・・あのカインとかいう冒険者の仲間じゃないか?




名前は確か・・・モコ




「す・・すみません助けて頂けませんか?」



そう彼女は言った




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