第34話レオノールも頑張る!
一番上の姉、ルシータは弓が得意だったと思う
他が不得意なのではなく、とりわけ弓が気に入っていたのかもしれない
真ん中の姉、アレクシアは防御に優れていた、また槍や飛竜に弓と多才だったと思う
全てに通じて安定をした実力を持っていた気がするが、特筆すべきは鉄壁の守り、それこそが彼女の持ち味だったろう
ではレオノールは?
末っ子であるレオノールは全てにおいて苦手であった
弓も防御も当然苦手
さらには剣や槍や斧や・・・
だけど彼女はその一切を諦めなかった
魔法と言う才能を見つけたから
付与魔法(エンチャント)
すべてを苦手としたレオノールが唯一得意で、一番とする魔法
彼女は己が身体能力を常に魔法で強化した
当然の様に寝ている時も
その修練の結果、最強の力を得るに至る
元より素養はあった
姉二人は母寄りに似ていて
レオノールは最強と名高かった父に似ていた
おそらく真ん中の姉を超えたのは15の頃
父を超えたのは16の頃
そして彼女の力を抑えていた心理的なリミッターを解除したのは
今だ
キラキラとレオノールの周りを金色の魔力光が煌めいた
付与魔法(エンチャント)のオーバーロード
無意識に超えられない壁を超える
それはきっとこの状況
見た事のない強大なモンスター
そして守るべき者がいる
「キトラちゃんを泣かせてんじゃないわよ」
レオノールの目前のヒュドラに向かって剣を抜いた
ドンッ
土煙を上げてヒュドラに突進するレオノール
ドカドカ土埃を上げて結界からそのまま巨蛇を引き離す。自分の3倍はあろうかというヒュドラを突き飛ばした
そのまま吹っ飛んでゆくヒュドラに駆けて追いつき、頭の一つを切り飛ばす
だが
なっ!一瞬で再生した!?
そのまま別の頭に吹き飛ばされる
「がはっ」
肺の空気が押し出されて胸がズキンと痛む
だがこのくらいで今日のレオノールは止まらない
可愛い子を!泣かせるなんて!
許せないんだから!
レオノールの剣戟は圧力を増してゆく
蛇の頭を4つ切り捨てる
「目覚めよ炎!サラマンダー!」
レオノールがそう呼べば応えるのは火の精霊
彼女の最強の精霊魔法
魔法陣から浮かび上がるのは精霊サラマンダー
産まれ出たサラマンダーは2体
ギィァ!
小さく鳴くとサラマンダーは火球を生み出して
自ら食べた。そしてサラマンダーは変化を遂げて自身を炎の化身へと変える
「サラマンダー行くわよ」
レオノールがそう言うとヒュドラに襲いかかる
再生していた左右の頭を焼いて
レオノールは真ん中の頭を切り飛ばす
さらに
「砕けろ!ファイヤハンマー!」
魔法で生み出した炎の槌で追い打ちをかけてから、さらにレオノールは自らの剣に
付与魔法(エンチャント)をかける
燃える剣
魔法剣を持って切かかる
剣戟の音が響き渡る
キトラは怯えながら必死に戦うレオノールを見ると
レオノールの周りにはキラキラと金色の魔力光が煌めいてその銀色の髪に反射して金色の髪の毛に見えた
「キャサ・・・リン?」
レオノールのはずが、何処かキャサリンに見える
それでハッとして正気を取り戻す
だが戦況は思わしくなかった
圧倒的な武力で持ってヒュドラを切るも即座に復活する
さらに魔法で焼き尽くすも、焼いた部分はゆったりと再生するし、耐性が出来るのか焼けにくくなっていっていた
それを見たキトラは思わず叫んでいた
「がんばれー!!」
そしてその声はレオノールに力を与える!
キトラちゃん!
あああああああああッ
レオノールはそれがなぜ出来たのかわからない
その血に流れていた力なのか
契約をしていないはずの精霊を呼び出す呪文が頭に浮かんだ
「召しませ!炎よ!」
「召しませ!命よ!」
「話が呼びかけに応え蘇れ!」
「フェニックス!!」
レオノールが唱えると
巨大な魔法陣が浮かび上がり
そこから巨大な炎の鳥が生まれ出る
鳴き声が響き渡り天も地も赤く染める炎
イフリートとはまた違う炎の精霊魔法の極の1つ
本当に出来た!?
「お・・・・お願い、フェニックス!」
レオノールが叫んだ
巨大な炎の鳥はヒュドラへと襲い掛かりその全身を飲み込む!
そして再生をするヒュドラに対して
再生をする炎
お互いがお互いを喰らい尽くして
ついぞ、ヒュドラは燃え尽きた
そしてフェニックスも美しく煌めいてゆらりと消える
それを見届けたレオノールは膝をつく
「はあっ、はあっやっ、た」
まだまだ魔力には余裕があったはずなのに
呼び出したフェニックスに全てを吸い取られたかのようになくなっていた
全身から力が抜ける
ついた膝からそのまま倒れるレオノール
その全身はいつの間にか血まみれになっていた
だがヒュドラを倒したのだ
明らかに自分より格上のモンスターを
ゆっくりと倒れる寸前、小さく柔らかい何かに支えられた
「おねえちゃん!」
キトラが倒れかけたレオノールを支える
レオノールはにっこりと笑って言った
「キトラちゃん平気?」
「うん!ありがとうおねぇちゃん!」
またキトラに笑顔が戻ってきたかな?
「ちょっと、休んだら帰りましょ」
レオノールはもう本当に動けなかった
バキリッ
木が砕ける音がする
バキバキと音が近づいてくる
レオノールが見上げると
ヒュドラ!?
なんで!?今倒したのに!
よく見ると先程のヒュドラよりも大きさが2倍はある
そしてその頭の1つがあの大きなグリフォンを丸呑みしようとしていた。
あれは・・・キトラちゃんが倒したグリフォン
もしかしてグリフォンの血の匂いで呼び寄せてしまった!?
キトラちゃんだけでも逃がさなきゃ
「キトラちゃん!逃げて!」
レオノールは残された力の全てを使いキトラに言った
私が食べられている間にキトラちゃん逃げられると良いな・・・
ごめんなさいお父様
ごめんなさいお姉さま
レオノールは先に逝きます
死の覚悟を決める
だが
「いやぁ!」
キトラが叫ぶ
「でもおねぇちゃんが死んじゃうのは」
「もっといや!」
そう言ってキトラは背中の弓を取り出し構える
矢を握りしめ
「風さん!」
魔法陣が展開されて放たれた矢を加速させる!
バフッ
蛇の頭を貫く
キトラは持つ矢を全て撃つ
だが
キトラちゃん!でも相性が悪すぎる!
泣きながら矢を放つキトラ
だが次々と再生するため足止めにしかなっていない
わずか数分でキトラの持っていた矢はなくなってしまった
キトラは諦めない
レオノールを抱えると結界の中に戻ろうとした
だが
後ろにもう一体ヒュドラがいた
キトラの顔が青く染まる
「ごめんね、キトラちゃん。私がもっと強かったら・・」
レオノールは
目を閉じて・・・涙を流した・・・
終ったと、そう思ったとき
暖かい一陣の風が吹いた
「良く頑張ったなキトラ。そっちの姉ちゃんも大丈夫か?」
え?誰の声?
目を開けるとそこには1人の男が立っていた
「もう大丈夫だ」
そう言ってキトラとレオノールを力強く抱き上げる
そして結界内に行き、2人を下ろすと
「今夜は蒲焼だな!」
そう言って男は結界の外に行き
2体のヒュドラをその剣のわずか一振りで倒してしまった
「ヒュドラはな、本体の心臓を止めないといくらでも再生しちまうんだ。この辺りには居ないはずなんだが・・・」
「キトラ、グリフォン置いたままにしてたろ?」
「ごめんなさい・・・」
キトラの耳がペタリと倒れる
「まあ無事だったんだから良いさ」
そう言って男はキトラの頭を撫でた
「あの、あなた様は?」
レオノールはその男に問いかける
「嬢ちゃん気がついたか。俺の名前はカンザキって言うんだ、焼肉屋をやってる」
そうか、この人がカンザキさま
でもあのヒュドラをいとも簡単に、しかも2体共相手にすらならない
私が倒したヒュドラよりも大きなやつを倒しておきながら焼肉屋をやってるだなんてふざけてるにも程がありますね・・・
「キトラが帰って無いってキャサリンが騒いでるからさ、もしかしてまだ居るのかと思って来て正解だったよ。間に合って良かった」
「パパありがとうー」
「いやそれまだ続いてたのかよ!」
キトラは嬉しくてほっとして泣いている
全くもう、これがカンザキさまか・・・
お姉さまが惚れるのも分かりました
レオノールはまた、意識を失った
「とりあえず帰って、ヒュドラでも食おうぜ!蒲焼にしたらうまいぞー!」
カンザキがそう言うと
「え?カンザキさんそれ食べるの?」
キトラは嬉しそうに、ものすごく嫌な顔をしたのだった
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