第31話祭りが誰も彼もが好きだとおもうな

ダイダロスを出発して二日


カンザキ達一行は大急ぎで帰ってきた


そして焼肉ゴッド、店の前にに着いたときに目についたものは・・・




なんということでしょう





以前はボロボロだった店舗の入り口が、まるで新築のようにきれいになっているではないですか!


店舗内へと足を踏み入れると以前のレイアウトとは全く違って白壁と木製品のおしゃれな雰囲気が漂います


店内にある、ワンポイントになる小さな白い花が明るい雰囲気を醸し出していますね


その奥の油まみれで薄暗かった厨房も清潔で綺麗な物になり、光の魔石を使った明るい厨房に変わっています


さらには焼き肉用の鉄板がすべて新品になっているではありませんか!




「な・・なにがあったんだ?」


カンザキは本当にここが自分の店舗かと不安になり、一度店の外に出て看板を確かめたくらいだった


二階へ上がると、そのまま何も変化はしていないし、キャサリンの方も店内は変わっていない


なんだこれとカンザキが店内をよく見て調べていると…


「お?カンザキ帰ったのか。無事で良かったよ」


「ガルバ!お前も無事に帰れてたんだな」


「俺はあの時一週間牢に入ってたけどな」


「ははは、そりゃぁ自業自得だろ」



カンザキがいない間に何があったのか、ガルバは簡潔に教えてくれた


謎の男と女性騎士については正体不明のままだがカンザキにはなんとなく想像はついている


ウルグインの王が訪ねてきたか?


そしてもう一つ変わったことといえば


「鹿が結婚した」


カンザキが予想だにしない事があった

ガルバがニヤニヤしながら言う


「はぁ!?急になんでだ!?あいつそんな相手いたか?」


「いやまぁそこはほれ、色々あったんだ。結婚式に行ったけどすごいもんだったぜ?この街っつうか、国のお偉方が一堂に集まっていたしなー」


「いったいどこの誰と結婚したんだアイツは・・・」



その後ガルバも鹿は新居だなんだと忙しく会えていないらしい

これはしばらく謎のままだそうだ


一度その相手にも会ってみたいもんだなー


そんなことを考えていると


「カンザキさま、私と結婚しませんか!?」


それを聞いたシアが言った第一声がそれだ


すぱーん!


その真後ろからキャサリンが来てシアの頭をはたいてズルズルと引きずられて店内に連れ去られた

そしてすさまじい怒鳴り声が聞こえる

なんなんだ…恐ろしい



「お前さんも大変そうだな。じゃあ今配達中だからよ、また夜に寄るわ。あとオークションで買った酒もちゃんとあるから安心しろよ」


そう言ってガルバは馬車に乗って走り去る


そうか、この街は馬車なんだな・・ダイダロスで乗っていた魔導車と魔導列車は懐かしかったと共に、一気にあの頃へと感覚を押し戻してしまった




空を見上げ、雲を数える。


地面を見て、石畳の街道をゆっくり歩く。




カンザキはこの街を気に入っている


でなければここで焼肉屋など始めなかっただろう


あの日本のように効率的な移動手段に人間関係も悪くはないと今なら思えるが

この人情溢れる街が今まで自分になかったものを補充してくれているような気がしている

今店内から漏れているキャサリンの声も、シアの謝っている声もすべてがカンザキには新鮮に思えていた




その夜


久々に店をあけた


思っていたよりも固定ファンがついていた様で、どこから開店の話をきいたのか久しぶりといった感じで大勢の人が来てくれた


シア目当ての客も結構な数で増えている

ていうか忙しいから店員を増やしたのにその店員のせいで客が増えている

なんだか本末転倒だと思う


でもそのおかげで退屈しない毎日を送れるのだから感謝だな



「やーおやじさん。聞いてくれよーこの間ついに71層に行っちゃってさ」


「そうそうカインが突っ込みすぎてなぁ」


しばらく来ていなかった冒険者たちだ


見ないうちに装備などが良くなっている気がする


それに71層か?


ってあれ?冒険者だと65層くらいが今の限界じゃなかったか?

そう聞くと


「いやね、俺らが更新し続けてるんですよ。それでもまだいけそうな気がしてるし、他の冒険者達も結構、60から66層くらいまでは当たり前に進めてるんですよねぇ。なんか今は百年に一度の当たり年らしいです」


「へぇ」


カンザキは感心した。


冒険者の人々が65層当たりまでしか行かなかったのはベテラン勢がその日の暮らしを優先させていたためだともいわれている。


そこまでで得られる素材などでも十分暮らしていけたし、危険を冒して奥に進むものは少なかったからだとも


「百年前にもあったらしいんですよ。当時は30層が限界だったらしいんですけ

ど、一気にその数年で60層まで進んだらしいです」


その計算でいけば、今回は90層くらいまでは余裕で進めるのかな?


「で、今は新しい素材なんかがどんどん増えてますから武器屋とか防具屋に道具屋なんかも忙しいみたいですね」


でも今まで数百年かけてじっくり進んでいたのがこの数か月で一気に進んだことになる


これはなんかあったんじゃないか・・・

ダイダロスの文明化が一気に進んだように


カンザキは考えるが思いつかない


まさか自分の始めた焼肉屋が原因だとは思わなかった


店の提供している肉とか料理に特殊効果が含まれているなどまったくもって気づいていなかったのだった


まあ、時代が進むのを見るのは面白くていいな!


気にしないでおくか


簡単に済ませてしまうあたりはやはり性格なのだろう


「そういやおやじさん、知ってるかい?来週あたりに貼り出されるらしい、国をあげてどでかい祭りがあること」


「ん?なんだいそりゃ。ちょっとしばらく居なかったから情報は入ってないんだ」


「数日前にでかい結婚式があったんだけどな、その時あたりから噂になってんだよ。知り合いの王宮の兵士に聞いたんだがどうやら本当らしくてな」


「祭りかー屋台とかできるかな」


国をあげてならば賑やかになりそうだな


「できるんじゃないですかね、商店街の連中も色々やろうとしているみたいですよ」


「で、なんの祭なんだ?」


「ウルグイン建国祭とかじゃないかって話ですよ」






そうか、祭か。

屋台メニューなんか考えないとな!







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