第29話ダイダロス編終 むーたん
それはカンザキにとって予想だにしない言葉だった
「に、2度目?」
カンザキは考えるが思い出せない、記憶の何処を探してもその少女が記憶のどこにもないからだ
だから黒髪の少女は何を言っているのかわからないで戸惑う
「しかもあの時に言っておったな。後で謝るからと」
「え?言ったっけ?」
本気で思い出せない。だれだこの子……
「まあ精神と肉体の再構築に2日もかかった上にここまでしか成長出来なんだがのう」
再構築……?
ん?シルメリアが黒髪の少女をじっと見つめている
そのシルメリアの視線に気づいた少女は
「おお!お前は、あの時の竜か!なかなか良い飛びっぷりじゃったの!」
そう言うとシルメリアが
「・・・ん、あ・・ありがとうございます」
初対面の人にお礼を言うだと!?
いや問題はそこじゃない
「知り合い、なのか?」
「・・・はい」
誰だろう?シルメリアが知っている?
んああ、マジでわからん
頭を抱えそうなその時、答えを言った
「そうか!我の姿じゃな。まったく気配でわかれ、バハムートじゃよ」
おお、そうじゃったのかーっておい!
んで・・主(あるじ)になれと・・・
そういえば昔そんな事もあったなぁ
確かあの時はドラゴンに言われたんだっけか…つうか、幼女ってなんだよ…
「なんでそんな姿に・・・」
「ふむ、こっちで再構築かけたらこうなってしまってな、まあカンザキとの契約のせいじゃな。ちなみに動きやすくて気に入っておる」
契約?なんだそれ?
それはともかく
「んでなんでここにいるんだ?」
「カンザキ、お主と我にはすでにパスが通じておる。あの時の契約によってな」
契約なんてした覚えはないのだが?
「前に我を倒した時に言ったではないか。「また次に倒せたらその時はきちんと契約を結ぶ」と」
ああああああああああああああああああ
そう言えばあの時・・そんな事言ったかもしれん・・・
「そもそもじゃ、我を倒しておいて召喚契約が成されないということは無いのに、お前さんは頑なに拒否しておったからのう。そうしたらどうじゃ、おまえさんの近くで良い具合に呼ぶ声がするではないか。普段なら応じる必要もないのじゃが丁度良いと思っての」
なんだと・・それってつまりは
「俺がここにいなければ来なかったのか?」
「そうじゃよ」
そうじゃよって・・・・
じゃあなにか!俺が居なければバハムートの召喚は失敗していたってことか!?
なんということだ
ベヒモスはしょうがない、としてもバハムートが出てきたのは俺のせいだったのか
これはそっと胸の中にしまっておこうか
大した問題ではないはずだ・・多分
「まぁけっかおーらいじゃろ?」
「バハムートはな」
「なんじゃ他人行儀じゃのう。むーたんと呼んでくれてよいぞ」
なんか威厳がない気がする。と言うか幼女だしなあ。
前の時と違いすぎる
あのときは巨竜だったしな・・・
「か、カンザキさま・・この子今さっきから自分がバハムートだと言っているように聞こえたのですが・・」
シアが震えて青い顔をしている
あ・・
普通はそうだよね。怖いよね、バハムート
この世界でも普通に知名度ある古竜みたいだし、世界を滅ぼし竜とか大層な2つ名まであったし
「まあ大丈夫だ。暴れたりしないから」
としか言いようがないが…
「あーじゃあだいじょびですねー」
納得しただと?!
つかシアどっぷりと酔っ払ってたか…
そう言えばキャサリンがいつの間にかいないな
ミタニは酔いつぶれて寝てるし、キトラとシルメリアはベランダか。
◇
カンザキがむーたんに絡まれている頃
王宮別室にて
「お久しぶりですねルシータお姉さま」
「ほんと久しぶりだねー10年ぶりくらいか?いつの間にか、結婚して子供産んでたのかぁ。旦那・・・国王は残念だったね」
そこではキャサリンと王妃が睨み合っていた
「はい。仕方なかったとしか言いようがありません。我が国自体が乗っ取られていた訳ですし、国王1人の命で済んだのですからまだ救いはあります。ところでお姉さま、カンザキさまとはどんなご関係で?」
「確かにね。国が滅んでしまうことを思えばまだそこに救いはある。…カンザキはな、私の未来の旦那様だ」
「それでは、やはりウルグイン王に?」
「いいや、カンザキにはうちの国は小さいさ」
「そう……でしょうね。国一つに収まる器ではなさそうですし」
「無論・・ダイダロスでもね」
キャサリンがそう言うとにやりと2人は笑を交わす
「お姉さま、それではウルグインとダイダロスを一つの国としてしまえば如何でしょう?」
「まだ小さい。小さ過ぎるね。例え大国2つでもカンザキには足りないさ」
「ええ、ですがこの2国であればまだ他の各国への言い訳は立ちます。現在のダイダロスの状況を考えれば文句も出ないでしょう」
「ダイダロスは属国じゃダメなのかい?」
「私は構いませんが老院の面々は黙っていないでしょう?あとそれに・・」
ふふふと笑う王妃
「面白くないね」
自分で言っておきながら否定するキャサリン
「いいよ私もあんたは妹みたいなものだし、嫌いじゃない。属国となるべき国は他にもあるしダイダロスは統合で構わないんじゃないか?」
「さすがですお姉さま。いえ師匠!」
「懐かしい呼び方だね」
「私の中では今でも師匠ですから」
「あんたにとっちゃ子供の時の戯言が現実味を帯びてきたからね。カンザキが居れば可能だろうし」
「それは・・ルシータお姉さまこそですわ」
「まあ、カンザキが少しだけとは言え、表舞台に出ちゃったんだ。仕方ないか。ただ少なくともカンザキはしばらく焼肉屋を辞める、理由がないよ?」
「まあ、まだ先ですね。数年間はご自由にどうぞ。そうすればその間に属国が増えるかも知れませんし」
「あはは!随分と策士になっちゃってるじゃないか」
「それはお姉さまの影響です」
ウルグインとダイダロスは隣国であると共にその2つの王家は血縁も強い
幼なじみの2人は懐かしそうに笑いあっていたのだった
そして翌日
「それにしても今回は長旅になったなぁ・・・」
店が心配になるな・・って誰もいないんじゃないのか!?
「ちょ!キャサリン!」
「なに?」
「今お前の店と俺の店って誰もいないんじゃないのか?」
「あっ・・・・」
そうだよなぁ。全員ここに居るし
「さっさと帰ろうぜ一通り問題も解決したしな」
ウルグイン直行便となっている
魔導列車に乗り込む
「じゃあミタニ、またな」
「ボクがウルグインに行くことがあれば焼肉おごってくれよ?」
「分かってるさ!待ってるぞ。じゃあまたな」
同郷の人に会ったり
バハムートと契約したりとか
ただのオークションの護衛が大事になってしまったなあ
魔導列車は走り出す
「主、これからよろしく頼むぞ」
カンザキはバハムートの主となった
「分かったよ」
バハムートの頭をなでながらカンザキは観念したように言ったのだった
こうなるとダイダロス王妃の話も棚上げしなきゃ良かったなぁ・・・
「なんか嫌な予感しかしないなあ・・あ、オークションで買った酒ちゃんと持って帰ってるかなガルバの奴」
一行は急いで帰る
ウルグインにある唯一の焼肉屋
焼肉ゴッドに向かって
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