第26話ダイダロス編8 神獣
カンザキがホテルの屋上まで、ホテルの壁面を駆け上がる
ホテルの屋上では天空の魔法陣を展開していたガンドル本人と、あともう二人の魔法使いがそこに居た
今三人はミタニの魔法により時間を止められていた
はずなのだが…
くそう!誰だ時間凍結魔法など!
ガンドルの意識はあった
それはマジックアイテムのお陰ではあるのだが、動くのは意識だけ
この時代には時間耐性のあるマジックアイテムなどろくな物がないので、体の時は止められたままである
四肢は動かぬか……
では声は?
「あ・・が・・」
なんとか声は出せるが、喋れそうにない
身体と意識の流れる時間が違いすぎる
時耐性アイテムの効果が弱すぎるのか使われた時間魔法が強すぎるのかすらわからない
舐めおって!だがしかしどうしようもできまい!この魔法は止められんぞぉ…
凍結が解除されたら一番に標的にしてくれるわ!
すたん
ホテル屋上に誰かが現れた
意識をそちらに向けると、あの鉱山送りにしたカンザキがいた
「おー。止まってる止まってる」
コイツか!?時間凍結など使いやがったのは!
しかも私の華麗なる作戦を台無しにした挙句、この儀式まで邪魔するか!
だが悲しいかな……ガンドルの心の声はカンザキには届かない
「ふぅん、やっぱ神酒使って特殊召喚か」
なんだと!?やはり神酒を持っていたのか?しかもその用途まで知っている?
一体どこまで知ってるんだコイツは!
カンザキは空を見上げながらめんどくさそうに言った
「俺も試したことあるがろくな事にならんのよなぁコレ」
我が魔法最大の秘術を試した、だと!
どういう事だ!?
まさか私と同じようにマグナシアの転生者なのか!?
「一応、なんとかさせてもらうか」
カンザキはそう言うとゴソゴソと手に持つ袋をあさり始めた
何をしている?
「一応、街を壊されたらかなわんので四隅に核をおいてきた、ここに宝珠を置けば四神結界の完成だ。完成ついでにお前らの時間凍結も状態異常扱いで解除されるんでそのつもりでな」
まるでガンドルの意識があるのを知っているように話すカンザキに少し違和感を覚える
しかしカンザキは止まらない。そう言うと宝珠をそのばにおいた
その瞬間街を白いドーム上の結界が展開される
バカな!時間凍結が解除されるだと!?そんなばかなことがあるのか!?
術者が込めた魔力が尽きるまでは解除する術などないはずだ!
だが結界に包まれるとガンドルの願っていた凍結解除が行われた
そしてその天空の魔方陣は時を刻み始める
時の止まっていた二人の魔法使いは、何も無かったかのように召喚を続けんと魔力を込める
「カンザキィ!キサマァ!なんのつもりだ!」
時の拘束が解け、声の出せるようになったガンドルが叫んだ
「おーやっぱ聞こえていたか。とりあえずベヒモス程度なら召喚させてから倒したほうが楽だからなと」
「なんだと!倒せるだと?ふん!やれるものならやってみるがいいわ!」
下向きの召喚陣からじわじわとベヒモスが降りてくる
だがその下にはカンザキの敷いた結界がある
程なくベヒモスの全身が結界から落ちるように出現し、結界に触れた
ズシン!
「ガァアアアアアアアアアアア!」
カンザキの仕掛けた結界の上に立って咆哮するベヒモス
「おー大丈夫だな結界、それじゃあ、アンタも行こうぜ?ベヒモスに会いたかったんだろ」
そういってカンザキはガンドルの肩に触れて……消えた
そこは結界の上 ベヒモスの目前である
「なんだと・・・転送したのか?」
ガンドルがカンザキとベヒモスを見ながら言う
「この結界内は自由に動けるもんでね」
「カンザキ・・お前は何者だ!」
ガンドルはイライラしているが・・だがカンザキがある勘違いをしている事に気づく
くかか、コイツを利用させてもらおうか……
「ただのメシ屋の店主だよ!」
カンザキはそう言いながら結界の上を駆け始める!
いつもの様に小さな氷の魔石とりだして、口に放り込んでカリリと噛み砕きながら走る
ベヒモスは雷を……帯電を始めていた
万雷召喚か!
ベヒモスは顕現と共に雷を落とす
さすがに結界がもたねえ!
そうは、させねえよ!
カンザキは目の前に迫ったベヒモスに魔法を解き放つ
「コキュートス」
出し惜しみはなし、前回の時はこれでいけた!
キィンと耳鳴りと共に気圧が下がる
だがベヒモスの放電と重なってしまい、威力が落ちる
それでも体半分は凍結させている辺りにカンザキの魔法の威力がうかがえるだろう
ガンドルは歓喜する
まさかカンザキがこの様な魔法を行使出来ようとは思ってもいなかった
いいぞ!いいぞ!
そのまま倒してしまえ!
ガンドルは傍観しつつカンザキの奮闘を見守る
なんということだ、奥の手を使わずとも
本当に、本当にベヒモスを倒せそうじゃないか!
ならば・・・あの時失敗した
そう、これならあの当時失敗した召喚魔法ができる!!
ガンドルは地下に用意してある魔方陣を遠隔「起動」させる
それは地下にあって眠っていた都市マグナシアをまるまると覆うようなサイズだった
ベヒモス召喚陣のおよそ3倍はあろうかという大きさである
それが地下より徐々に浮かび上がってくるのだがカンザキは気づかない目の前の敵をあと少しで倒せそうだからだ
そしてガンドルは瀕死のベヒモスに向かって「神酒」のビンを投げつける
風魔法に包まれた瓶はまっすぐにベヒモスの巨体にぶち当たる
パリンッ
「なんだ!?」
今後ろからガンドルが投げた!?
何を投げたんだ?
振り向くとガンドルが魔力を集中させていた
何をしようとしている?
その瞬間……
ベヒモスの巨体を魔法で呼んだ鎖が縛る
ジャラジャラと音を立てて
魔力の鎖が神獣を縛り上げた
「神の鎖纏」
ガンドルが唱えている
ベヒモスを捕らえた、のか?
「ふはははカンザキ!我らの、いやわしの目的を手伝ってくれてありがとう!憎らしいやつだったが、これで目的を達成できるのだ!感謝を何度でもしてやろう!ありがとうよ!」
ガンドルの魔法圧は地下に向かっている?
カンザキは魔法、フライで飛び上がる
下を見るとダイダロスの街よりさらに大きく、そして金色に輝く魔方陣が浮かび上がっていた
ちっ!なにをやろうとしている!
気づくことの出来なかった自分をカンザキは悔いた
◇
ミタニはがばっと起き上がる
あれ!?時間凍結解けた!?
まだ回復まではかなり時間が必要だった
解除された事により、余った魔力がミタニに返還されたのである
異常を感じたミタニは起き上がって外に出る
するとそこには大きく街を覆う結界上に見えるのは・・・
「カンザキがベヒモスを・・・倒している!?」
ミタニはフライの魔法を使って上空へ飛び出す
魔力による嵐が起きている
なんとか飛び上がって結界を潜り抜けると、そこには鎖で縛られたベヒモスがいた
もしかしてこれ・・?
ガンドルはすでに魔法を使い終わっているのか微弱な魔力しか感じない
目の前のベヒモスは鎖に囚われている上に、傷だらけで鎖から逃れられないようだった
「カンザキー!なにがあったんだい!」
「おお、ミタニおきたのか。いやベヒモスを先に倒しちゃおうと思ったんだけど・・」
「あほぉー!」
ミタニはカンザキの頭をすぱーんと殴る
「おおお・・・いちいち靴脱いでなぐらんでもいいじゃないか」
「さっきはいえなかったけど、マグナシアが滅んだ理由はベヒモスの暴走、だけどベヒモスを召喚したその目的はさらに大きな力を召喚することだったみたいなんだ!」
そうなのか・・・さらに大きな力ってなんだろう?
「そうだろガンドル、ベヒモスを贄に呼び出そうとしているんだろう!」
ミタニは言った
「そうだ!さすがはミタニ、お前は知っていたようだな・・だがもう遅い。きっとこの魔法は成功する!この世界で最高の魔法!最高の力!それが我が奇跡の魔法によって!」
両手を広げてガンドルは空を見上げる
ベヒモスの姿が鎖と共に光となって消えていく・・・
そしてその足元から輝く光が暗闇の空を明るく照らす
いつの間にか空には黒い雲が覆っておりその間を広げるように
一体の竜が降りてくるのが見えた
「おおおおおおお!美しい!素晴らしいぞ!」
ガンドルは興奮して叫び続けている
うわぁ・・・あれってもしかして
カンザキは嫌な予感がしている
そう、カンザキはアレが何かよく知っている気がするのだが、認めたくない
「なあ、ミタニ・・あれ何かわかるか?」
「ボクに聞くなよ・・ちゃんとした記述はなかったんだ。さらに大きな力としか残ってなかったんだよ。知りたいなら召喚者に聞いてみなよ」
それもそうだとカンザキはガンドルを見ると
「ガンドルー!アレは何だ?」
「ふははははははは!知らないのか無知め!愚か者め!ひれ伏すがいい!そして滅びろ!」
ガンドルは既にその力を手に入れたと思っている
そしてまだ得ていない力に万能感を感じているのだ
「あのお姿こそ我らが待ち望んだ力だ・・・」
「そう、あれこそが、神竜バハムート」
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