第20話ダイダロス編2 牢で列車で鉱山で

かくして、ガルバの暴走が原因なのか、カンザキの神酒持ってる発言が原因なのかは分からないが、俺たちは逮捕された


しかしまあ、あの雰囲気だと神酒かなあ


捕まった俺達は大人しく牢屋に連れられていく


ガルバは泥酔しているしで、暴れたこともあり、俺とは別の牢に放り込まれる

よくある鉄格子の牢屋の様だった


さすがに少し頭を冷やしてくれると助かるんだがなぁ


そして、俺は別室に案内される


そこはホテルのスウィートルームといった広々とした雰囲気の部屋だった


無駄に金の刺繍がある豪華なソファやよく分からんほど高そうなテーブルにシャンデリアなどが吊り下げられていた


部屋に通されるとドアを閉められた


カチリと小さく音が聞こえる


カギも閉めたか…


おっと、替え玉系の領主様が居るな

あとはいかにも強いですといった、風貌の冒険者達が数名立ち並んでいる

護衛だろうか?


「そこにかけてくれたまえカンザキくん」


俺についてある程度は調べはついていそうだな

まあ今日はこのままこのホテルに泊まる予定だったからそのくらいは分かるか


「何故呼ばれたか分かるだろう?君の持つ神酒を譲って欲しいのだよ」


やっぱりなぁ…


思わず神酒と叫んだ実際持ってはいるが、譲る必要はないだろ?


「あれは咄嗟についた嘘ですよ。酔っ払ってたガルバを落ち着かせるために言ったのさ」


こちらは正直に言う気はない


さて、どうするか?


「そう言うとは思ったよ、君らはウルグインからダイダロス来ているそうだね……アレがダンジョンから出たという事例は知っている。金ならあるぞ?いくらでも払おう。言い値で買い取らせて頂く」


そう言って領主様はワイングラスを傾ける




アレと同じ瓶に入っていると言うのならば、コイツらの言う神酒はある

だがあれは酒のもつ本来の伝承とは異なっている物だ


だから飲むと言うものでも無い


あれは神の造りし酒ではなく


神に捧げし酒だー





「残念ながら、真実でしてね。本当に持っていないよ。さらに言うならダンジョンから出たと言う話も俺は知らない」


俺はもう一度、重ねてカンザキは否定する


渡して解放されるのなら別に構わないとは思うが、渡したところで後ろの冒険者に囚われるだけの気はするからだ


ぶちのめしても良いが、カンザキはともかくガルバに迷惑が掛かるからなあと思っている


「そうか、残念だよ。まあそのワインを飲んだら帰りたまえ。君のお友達も酒が抜けたら開放してあげよう」



おお!?思っていたよりもあっさりしていたな!?


だけど安心したカンザキは余計な一言を言ってしまう


アレが気になってしまったからな


「なんだ、そりゃあ助かるよ。そう言えばミタニさんはどこの出身なんだい?」


「どこ、とは?」


ピタリと領主のワイングラスを持つ手が止まる


「あんた日本人にゃ見えないけど、日本の出身なんだろ?それともアンタの後ろにいるのか?」


領主様の顔がピリリとキツくなる

失敗したかもしれないとカンザキは思った


「どこまで知ってる?」


やはり余計な一言だったか


これの返答は二択だ


コイツが本物の領主の単なる影武者か


本来の領主を監禁して利用している奴


おっと、もう一つあるな


単なる影武者が好き勝手しているパターンだ



「どこまでか。なかなか含みのある言い方だよな」


「なんだと?」


「じゃあ本物のミタニさんはどこにいるんだ?」


俺はそれだけを聞いた


「チッ」


舌打ちかよ!俺はこう言うやり取りは苦手なんだよな


力ずくなら楽なんだが…ガルバのバカが牢屋にいるしな


「今ミタニ様は北の鉱山の研究室においでだ。君は知り合いなのか?」


なるほど、暴力的に何かをするつもりが無いところをみるとある程度ミタニさんは力がある様だな


「そうか、会わせて貰えるかい?」


「どうしても会いたいのなら仕方あるまい。あの友人はどうする?」


ガルバかー。悪いが先に帰っておいてもらうか


「先に帰ったと伝えておいてくれよ」


カンザキはそれだけ言った





カンザキはその後、そのまま替え玉領主のメイドに連れられて、ホテル近くの建物の地下にある魔導列車に乗せられた


連れられたってより、連行された感があるなあ……



それにしても地下にこんなもんまで作ってたのかよ


なんだかすげぇなぁ…これ。



カンザキはまだ見ぬミタニさんを尊敬し始めていた


それはそうだろう、建築知識どころか車や列車まで作っているのだ

その幅広い知識に恐れ入るのである



この列車は三両編成で、その一両目に乗せられる


後ろをみるとドワーフ達が乗り込んでいるところだった


なるほど、これは鉱山との行来に使用されている本当に足の様なものなのかと感心する


列車内は日本人なら馴染みのある吊革や網棚まであった


懐かしいな。本当に

まあ電車通勤とかはした事ないのだが



この魔導列車の動力源は魔石という事らしい


蒸気も無いところをみるとどうやって動かしてるのか分からないが・・・


そう思っていると始動音が聞こえて来る


ヒュウぅぅぅぅん……



エンジン・・・いや・・・ひょっとしてこの音はモーターか?


電力……は雷の魔石で供給か?


「なぜそれを・・・・」


ん?あ、口に出してたか。


「確かにこの魔導列車に魔導車はモーターと呼ばれる技術で動いています。ですがそれは最高国家機密のはずなんですがなぜご存知で」


俺は黙った


「ミタニさまとお知り合いは本当のようですね。」


勝手に解釈してくれるのは有難いな



「あの方を・・・よろしくお願いします・」


彼女は深く礼をした

これは監禁パターンかなぁ…


カンザキにはかつての冒険の記憶が蘇る

だいたいこんな時と言うのは、この先にミタニが囚われていて自分もついでに囚われるのがパターンなのだ



魔導列車は進むその速度は、どのくらいかは分からないが馬車で移動すると3日かかる距離をわずか2時間ほどで移動すると言う

かなりの速度が出るようだ

地下にあるのも地上だと魔物だとか、通行人だとかに邪魔をされるからかもしれないな

たしかに地下のみならば事故も少ないだろう



そうして俺は、車窓の景色は常に壁と言う風情もなんもない列車に揺られながら、魔石鉱山へと連れていかれた


途中の駅につくとドワーフが続々と降りていく

俺は次の終点の駅らしい


さらに奥へと、鉱山の奥へと続く線路


到着すると出迎えの兵士出迎えてくれる

そして俺が下りると、大量の荷物も降ろされていた


「その先の転送陣へ進んでください」


言われるまま転送陣へ入る

先程の荷物も一緒だ


「それでは、よろしくお願いします」


そして光に包まれて転送された







そこはそれなりに綺麗な部屋だった

清潔感もあるし、何より明るい


どうやら室内に転送されたらしい

となりの部屋へ続く入り口に傷だらけの兵士が立っていた


「ようやく…冒険者が来てくれたか。しかし、一人だけなのか?」


兵士は安堵の表情を見せ、倒れかけた


「なにかあったのか?」


俺はその兵士に駆け寄って抱きとめる


「ああ、情報は行ってないのか?くそ・・・通信は失敗しているのか?あんたが来たのは偶然か…」


兵士はそのまま気を失う


俺は扉を開けて隣の部屋に入ると、辺りを見回す


そこには複数のベッドがあり、兵士が寝ている


そのまま部屋を突き抜けて、隣の部屋へ


先ほどのベッドよりもひときわ豪華なベッド


そこに一人寝ているのが見て取れた


ミタニさんだろうか?


そして憔悴しきった女性と小さな女の子がいる


「何があったんだ?」


俺が話しかけると女性が言った


「あなた様はどなたでしょうか?国王は先日逝去されました、ミタニ様もご覧の通りです」


寝ているのはミタニさんか

そして国王が亡くなった?本当に何があったのか


「ここはどこなんだ?」


質問を変える、とりあえずカンザキには何も情報がないのだから


「ここは国王の書斎でした。そして今はミタニ様の研究施設でもあります。国王との研究結果によれば、ここは元々ダンジョンだったことが分かっています」


なるほどそれで大量の魔石が発掘されるのか…ダンジョンの中には大量の魔石が含まれているからな


その後、カンザキは色々な質問を投げかけて女性の話を聞く。するとようやく事情が分かってきた


グラム鉱山と呼ばれていたここは元ダンジョンであったとのこと。かつて攻略されていたのかわからないが、書斎は50層辺にあると言うことだ


ここは転送陣で出入り可能だったのだが、転送陣の故障か、なんらかの妨害なのか分からないが使用出来なくなってしまっていたのだという。


入ってはこれるが、帰れない状況であるらしい


ここの階層はだだ広い空洞があり、そこで様々な物をミタニの指示の下、開発がされていた

ある日、発掘作業をしていたエリアにて事故がありその際に下層への入り口が発見されると同時に帰れなくなったと言う



ミタニ一行はここに取り残されたのだ



帰ってこないミタニを心配した国王がまずここにやって来たが、同じ様に閉じ込められる


その後、帰ってこないミタニと国王の様子を見に、奥方と姫が来てまたしても閉じ込められ帰れなくなった


兵士の何人かは調査をすると下層に行くも強いモンスターが発生しており、先に進めなくて調査もろくに出来なかった


ミタニさんが通信機を使うも何故か返事は来ないが、食料や医薬品、衣類などは転送陣で週に1度送られてくる


そうして、半年が経つうちに国王は持病が悪化して寝込むようになる


ミタニさんは兵士と共にダンジョン下層に挑み失敗


そうこうするうちにほぼ全員が原因不明の病気になってしまったと言う


カンザキは病気の原因を探るため安全が確保されているエリアを調査する


その中で、支援物資と思われる、先程カンザキと共に送り込まれた荷物にあった





これ、病気の原因は…送り込まれて来たという食料、かな…僅かながら毒が振りかけられているのが分かった



仕方ない、食料は魔法の袋にあるものを食べる様にしてもらうか。


そんで、後は下層に向かう階段、だな…先ずは下層までおりてみるか?






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