第7話
真澄のいうことをチッとはきくんだった。
服がない。10年も前に買った、ノースリーブのワンピースがかろうじてある。体形は変わって5キロ太ったし、たくましい二の腕が見えたって、色気もなにも、まったくもって美しくない。
さあ、どうしよう。
散々悩んだあげく、10時開店のデパートに直行、服を仕入れることにした。
電車に乗りながら、服だけじゃない、靴も、アクセサリーも、化粧はどうする、って、真澄に連絡しようかと思ったけど、普段から努力を怠らない、あの体形の服や装飾品を借りる気にはならない。秘密がばれるのもいやだったから、結局、彼女の携帯番号を押すことはなかった。
超特急でアパートへ戻り、買った品物の包装を矢継ぎ早に破っていった。時間がない。表面だけの雑な化粧に汗がどんどん浮かぶ。直しは最後。とにかく急げ。
身長158cm、体重55キロの微肥満が憎らしかった。
お腹が苦しくならないように、やっぱりワンピース、斜め合わせの前止めボタンに色はベージュ、試着もテキトーに、「30代のエレガント」が魅力のブランドで若い店員が勧めるまま、給料の4分の1もつかった、を選び、身半分しか映らない鏡に向かって、背を縮こませながら、ダメだ、ダメだと嘆く。ゴワッた下着がばれちゃダメなんだ。
場所は電車で一駅の、ホテルの1階だった。30分もあれば間に合う。ちょっとくらい遅れたっていい。ざんばら髪で嫌われるよりマシだ。
落ち着け、落ち着け。
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