第23話 究極のロリババァ

 パイタケ泥棒の容疑をどうにかこうにか晴らした俺たちは、野営していた野原の近くにある幼女の家に招かれた。


 民家とうよりもちょっとしたお屋敷といった方がいいくらいの、いかにもファンタジー感溢れる重厚な造りの立派な家だ。


 俺たちが案内されたのはリビングのような広い部屋で、壁際には大きな暖炉があり、薪がちろちろと燃えている。


「――ふむ。それで、元いた世界で不幸にも事故で亡くなり、全恥全能の神ギガセクスによってこの世界へと転生させられたわけじゃな」


 俺はここへやって来た経緯を、幼女にざっくりと説明した。あまりに荒唐無稽な話なので、にわかには信じてもらえないかもしれないが。


「なんじゃ、お主がギガセクスの言っておった例の童貞じゃったか」


「えっ? あんた、ギガセクスのことを知っているのか?」


 その口ぶりだと、どうやらこの幼女は俺のことも知っているようだ。


「なぜじゃという顔をしておるが、ギガセクスは我の弟じゃからの」


 えぇ!? な、なな、何だってえええええ??


「いやいやいや。あんたはどっからどう見ても、小学○年生くらいの幼女じゃないか! それなのにあのおっさん、いや、ギガセクスが弟だなんて、そんなの信じられるかよ!」


「我は幼女ではないわ! 我の名はエスタ。これでも140億歳の、れっきとしたレディじゃぞ!」


 エスタと名乗る幼女は、その真っ平らな胸をこれでもかと反り返らせた。


「おいおい、140億歳って宇宙誕生よりも前に生まれたことになるのだが。ていうか、それがもし本当なら史上最強のロリババァじゃないか」


「ロリババァ言うなぁ!」


 と、その時――。


「!? エスタ……だと?」


 これまで俺のそばで大人しくしてたアナスタシアが、驚いた顔で唐突に口を開いた。


「もしや、あなた様は五穀豊穣、国家安寧の象徴にして家庭の守り神、そして永遠の純潔しょじよを誓われた女神と言われる、あのエスタ様でいらっしゃいますか?」


「へ? う、うむ……。ま、まぁそんな風に言われてたこともあったかの」


 エスタは、ポリポリと頬を掻きながら引きつった笑みを浮かべた。


「そ、それに、永遠の純潔など誓っておらんがの。ちゅーか、むしろ早く捨てたいくらいなのじゃが……」


 アナスタシアには聞こえないくらいの小さな声で、エスタがぼそぼそと呟いた瞬間――。


「はあああ! エスタ様ぁ、お会いできて光栄ですううううう!」


 むぎゅうううううううううう!


 アナスタシアはエスタの元に駆け寄ると、その豊満な胸でぎゅっと抱きしめた。


「えぇい、何をする! 離さんか、こらっ! 止めぃ……ぶはっ!」


 アナスタシアの巨乳に埋もれ苦しそうにもがくエスタ。


「あぁ、なんと愛らしいお姿なのでしょうか! あなた様は処女の鏡でごさいます! 私もあなた様のように純潔を貫き、この身を神に捧げる所存でございます!」


 いや、今のお前は純潔ではないだろうと、俺は心の中でツッコミを入れた。


「わ、我は……何も、んん~……好きで純潔でいるわけでは……うぷっ、……ないわぁ! できることなら、早く……ん~ん~……捨てたいのじゃあああ!」


 揉みくちゃにされ涙目になりながら叫ぶエスタの声は、アナスタシアには全く届いていないようだ。


 しばらくの間、俺は巨乳の少女がぺったんこな幼女を弄ぶ光景を、羨ましくも憐みの眼差しで見守ったのだった。


「ゴホン! と、とにかくじゃ――」


 どうにかこうにかアナスタシアを引き離したエスタは、落ち着きを取り戻すかように咳払いをすると話の本題に入った。


「お主がこの世界へ来たことについてじゃが、我もギガセクスの姉として責任を感じないわけでもない。そこでじゃ」


 一呼吸置くかのようにエスタがニヤリと笑みを浮かべた。


「しばらくの間、お主をここへ置いてやってもよいぞ」


「本当か!? そいつはめっちゃありがたい!」


 このままずっと野営生活を続けるよりも、ここに居させてもらえるならその方が断然いい。そうすればボンクエにも登録することができて、クエストだって受けることができる。


 だがしかしだ。この幼女がギガセクスの姉っていうのがどうにも引っかかる。あのおっさんのように、何か裏があるように思えてならない。


 現に、さっき一瞬見せたあの不敵な笑みや、今も目の前で顔を赤らめつつ、どこか落ち着きのない様子でいるのが何よりの証拠だ。


 ここはやっぱり一旦断って――。


「はあああ! ここに置いてくださるなんて何という僥倖! このアナスタシア、身に余る光栄でございますううううう!」


 えっ? ちょ、おい!


 俺が断るよりも早く、アナスタシアがそう答えてエスタを抱きしめた。


「えぇい、止めい! 我はスグルに言ったのであって、お主をここに置くとは言ってはおらんのじゃあ!」


「絶対崇高なる神に仕えるこの身として、その神に連なり、永遠の純潔を誓われたエスタ様のお側にお仕えすることができるとは、望外の幸せでございますううう!」


 エスタがまたアナスタシアの胸に揉みくちゃにされている。


「じゃから、我は永遠の純潔など誓ってはおらぬのじゃあ! 本当は早く結婚して純潔などすぐに捨てたいのじゃあ! じゃが140億年もの間、純潔を捧げる相手にも巡り会えずに……。そんな我にもやっとチャンスが巡ってきたのじゃあ! これを逃すわけには絶対にいかぬのじゃあああ!!」


 ん? 今なんつった、この幼女?


 何だか、言葉の最後の方に本音がダダ漏れてたような気がするんだが?


 アナスタシアはアナスタシアで、エスタの言葉など一切耳に入っていないようで、嫌がる幼女をその巨乳で無慈悲に弄っている。


 まぁ一抹の不安はあるものの、この調子ならアナスタシアが幼女の暴走を食い止める防御壁になってくれるだろう。


 そんなわけでしばらくの間、俺たちはエスタのところでお世話になることにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】

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