第20話 火起こし
テントに戻っていざ焚き火と思ったのだが、キャンプ初心者の俺は早くも現実を思い知らされた。
火がつかない……。
ニャンベルでもらった火打石と火打金を何度もカチカチしてみたものの、火花は出ても全然着火しない。
『ぬるサバ』でやっていた通りに焚き火の準備をしたはずなのに、何かが間違っているのか? あぁ、そもそもあっちはライターで火をつけていたんだっけ。
参ったな、焚き火ができないと晩メシが作れない。
「おい、スグル。まだ火がつかないのか? 私はお腹が空いたぞ」
俺の後ろから、アナスタシアが覗き込むようにして急かしてきた。
「文句を言ってないでお前も火をつけるのを手伝えよ! ……って、はっ!?」
振り向くと、ちょうど目線の位置にアナスタシアの胸元が!
ブラなんてつけていないから、キャミワンピの隙間からたわわに実った乳がもろに見えちゃってるんですけど。
――チッ。何の役にも立たないくせに、胸ばかりいっちょまえに。
「そうだ! お前、この世界の人間なんだからこういうの得意だろう?」
「貴様は何を言っているのだ? 私は救国の英雄となる身だぞ。火起こしなどというつまらぬことはやったことがない!」
アナスタシアは両手を腰に当てて胸を張り、堂々とそんなことを言ってのけた。こいつに聞いた俺が馬鹿でした。
「あっ、それなら魔法はどうだ? 何か火炎系の魔法とかあるだろう?」
「うーむ……。私は魔法は使えるが、幻覚や混乱といった補助系の魔法がメインで、火炎とか攻撃系の魔法は使えない」
あぁ……。ゲームなんかでも全く使わない、ていうか、使えない系の魔法ってやつですね。
「んだよ。救国の英雄になるとか言ってるくせに、火炎魔法の一つも使えないなんて、ほんっと役に立たない奴だな、お前」
俺はついぽろっと本音が出てしまった。
「な、ななな、何だと貴様! それは聞き捨てならん! ならば見せてやろうではないか、私のとっておきの最強魔法を!」
興奮したアナスタシアは両手を伸ばし、手のひらを俺の前へ突き出すと何やら詠唱し始めた。
「ちょちょちょ、こっちに向けて唱えるな! ていうか、そのとっておきの最強魔法って一体どんな魔法なんだ?」
「それは実際に発動するまで何が起こるのかこの私にも分からない。だからこそ、とっておきの最強魔法なのだ!」
それってつまり、あのゲームでいうところのアレ的なやつだよね?
詠唱するアナスタシアの手のひらの先に、何重にもわたって大きな魔法陣が浮かび上がる。
おいおいおい! 何だか魔法の発動エフェクトは、俺の『リヴァージン』なんかより派手でかっこいいんじゃないか!?
アナスタシアのくせに、何かちょっと悔しい……。
「絶対崇高なる神の恩寵。宇宙開闢、天地創造の
アナスタシアが詠唱を終えると、魔法陣から眩いばかりの光が広がって、目の前が一瞬ホワイトアウトした。
…………。
――シュボッ。
眩しさで顔を覆っていた手をどけてみると、アナスタシアの手の先にちょろっと小さな火の玉が現れて、焚き火のため積み重ねた小枝の中にぽとりと落ちた。
えっ、しょぼっ!
あれだけ派手な発動エフェクトだったのに、小さな火の玉一つってしょぼ過ぎる。
けどまぁ、アナスタシアの魔法のおかげで焚き火は勢いよく燃え上がった。
魔法の効果に満足してドヤ顔のアナスタシアに何かイラッとくるけど、ここは素直に感謝しておくか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
作者よりお願いがございます。
面白かった! 続きが気になる、また読みたい! これからどうなるの?
と思ったら作品への応援お願いいたします。
合わせて☆やレビュー、作品のフォローなどもしていただけると本当に嬉しいです。
皆さまからの応援が今後の励みとなりますので、何卒よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます