Chapter3 Case1:魂なき死体(前編)
無機質な電子音が早朝の仮眠室に鳴り響く。「…はい、藤堂ですが。」喪服に強烈なインパクトを与える片側剃り込みの髪型をした女…再葬課課長、
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いかにもオカルトじみたドレスを着た化け物…とやらが発見された例の古城に到着した二人は躊躇なく扉を開ける。扉を開いた瞬間に埃っぽく湿った空気が二人の鼻先をかすめ、何ともなさそうな藤堂と対照的に冴木はハンカチで鼻を覆って顔を背けた。「…それにしても…この古城って何の為の建物なんですかねぇ。」ぼそりと呟いた冴木の声に藤堂は携帯電話を取り出し、「ずっと昔の伯爵殿が道楽で建てた建物らしいよ。ほとんど実用では使われなかったらしいけどね…」そう答えた後肩を竦め、崩れそうな朽ちた床をすたすたと歩き始めると、反応するように薄暗い城の奥で何かが蠢いた。ぼんやりとしたシルエットで見ればドレスを着た女性のようだが、あまりに背が高すぎる…藤堂は出来るだけ音を立てないよう慎重に足を止め、着いて来た冴木を手の平で制してその影に近づくが、ふと気付いたように明るい声で「やあ、御機嫌麗しゅう…須崎…いや、黒衣の女王殿。」と挨拶をしてみせる。するとその人影はゆっくりと振り向き、黒いアンティークドレスを着たその人影の顔は黒いヴェールで覆われており、顔は見えないが明らかに異質な存在であることは分かるような気がした。藤堂の挨拶に女性は穏やかな声で「あら…御機嫌よう、貴女方は綾乃のお知り合いね?「カチョウ」と「センパイ」だったかしら、綾乃から聞いたのよ。どちらも綾乃より格上の人を表す言葉なんですってね、面白いわ。」と答える。穏やかではあったが、どことなく不気味さを纏った異形の声…を気にすることもなく藤堂が笑顔で「ああ。いかにも私は「課長」だ。女王殿、須崎はどうした?」そう問うと「女王」と呼ばれた異形は考え込むように揺れ、「あら、そちらの綺麗なお嬢さんが綾乃の言っていた「カチョウ」なの?女の人だったのね。綾乃は…今眠っているの。それでも仕事がしたいって言うから…私が代わりに来たのよ。」ヴェール越しで顔は見えないが微笑んでみせる。「…あの、課長。この人が須崎さんなんですかぁ?」藤堂は怪訝そうな表情でひょっこりと顔を出した冴木を制すように微笑み、女王に一礼してから冴木に向き直ると小声で「…彼女は須崎の異能の完全な形だ。普段はお前も知っての通り、「腕」しか出ていないが…須崎の意識が失われている間に業務連絡が来ると彼女が代わりに須崎の肉体を支配して動き始める、と言う訳さ。…ともかく、これで化け物の件は解決だろうな。」冴木の耳元に囁く。分かったような分からないような顔をしている冴木の肩を両手で叩き、女王の方に再び顔を向けると「…それで、女王殿はこんな所で何をなさっていたのです?」と首を傾げる。女王は黙ったまま、青く粘度の高い指先で朽ちた木材の壁に触れる…筋状の青い粘液が壁に付着したのを少し見つめた後、「…この城はね、私の城だったのよ。」どことなく寂しさの漂う声で呟くように漏らした。藤堂が目を見開いたのを察したのか、深淵から響くような不気味な笑い声を上げながら「昔ね、物好きな貴族の方が私の為に建ててくれたのよ。ほとんど使わなかったけれど。…カチョウさんとセンパイさんは、ここに何をしに来たの?」黒いヴェールで覆われた顔を藤堂の方に向け、動きを真似るようにちょこんと首を傾げる。「私達はここに依頼を受けて魂のない死体を探しに来たんです。女王殿、貴女は何かご存知ではありませんか?」藤堂は女王の不気味な威圧感に若干圧されていたが、表面上はにこやかな笑顔を保ったまま問い返した。女王がまた不安定に揺れて「…魂のない、死体?何かしら、それ。分からないけれど…とても面白そうね。私に協力できることがあれば何でも言って頂戴。」手を顔に当てて柔らかい口調で言うと藤堂はすかさず「…それでしたら、美しき
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その怪物は見た目に似合わず素早い動きでまた逃げようとするが、それより素早く伸びた女王の腕がその怪物の両足を掴む。怪物はその腕を一生懸命に蹴るが、女王の腕はがっしりと足を掴んだまま離さない…一方冴木は尻ポケットから取り出した白いピルケースに入っている色とりどりの錠剤の中から赤い錠剤を掴み出すと奥歯で噛み砕き、深呼吸をしてから「
secret code ー警察庁刑事局異能班ー 匿名希望 @YAMAOKA563
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