第51話


 近場のクリニックを調べながら、執着し過ぎだろうかと冷静な気持ちを取り戻す。


 ひまりからピルのアドバイスを貰って1週間。結局病院にはまだ貰いに行けずにいた。


 「…えっちしたくて仕方ないみたいじゃん」


 みたいじゃなくて、その通りなのだ。


 エマから与えられる快感の虜になってしまったせいで、どうにかして行為をする日程を増やそうとしてしまっている。


 気づけば夢中で調べて、使用したことがないくせに知識だけが付いてしまっていた。


 しかし、調べてみればガンの予防や生理痛、排卵痛の軽減など。

 意外なメリットが沢山あって、どんどん興味が湧いてしまったのだ。


 「こんなの学校で習ったっけ…」


 ホルモンバランスによる精神の乱れにも効果があると紹介文に記載されていて、生理前に落ち込みがちになってしまう愛来は特にそこの文に惹かれてしまう。


 もちろん吐き気などの副作用もあるが、上手く付き合っていけばかなり便利なのではないか。


 「…病院行こうかな」


 もちろんお金は掛かるが、それ以上にメリットがある。

 明日にでも行こうかとスケジュール帳を開けば、玄関から扉が開く音が聞こえてくる。


 「ただいまー」


 出迎えに行けば、嬉しそうにエマが笑みを浮かべる。

 そんな何気ない表情に胸をときめかせてしまうほど、愛来はエマが好きで仕方ないのだ。


 確か数日前に生理は終わったと言っていたため、今日は久しぶりにできるだろうか。


 そんな期待に胸を膨らませながら、共に食卓を囲む。


 今日の夕飯はナポリタンで、一度作って以来エマから作ってくれと頻繁にせがまれていた。


 手を合わせて2人で「ごちそうさま」をした後、エマが何か錠剤を飲み出す。

 風邪でも引いたのかと、心配な気持ちが込み上げた。


 「風邪引いたの?」

 「風邪薬じゃないよ。これ、ピル」


 驚いて、目をぱちくりさせてしまう。

 少し照れ臭そうに、エマは頬をかいた。


 「どうせなら一緒の方がいっかなって」


 愛おしい恋人と、考えることは一緒だ。

 エマも愛来と同じように行為を望んでくれていた。


 「……吐き気とかない?飲み始めは副作用あるって聞いたよ

 「平気…愛来、詳しいね」

 「私も調べてたから」


 2人で目を合わせてから、笑い合う。

 一方通行ではない想いを噛み締めながら、彼女への愛を溢れさせた。


 これから先も両手では持ちきれないくらい大きな愛を、エマと一緒に抱えていきたいのだ。






 偶然見つけてしまった品物に、思わず笑みを溢してしまう。

 隠しものをするにしても、ベッドの下はあまりにもベタすぎる。


 「これ何着あるの…?」


 段ボールに入ったままの、新品のランジェリー。

 およそ10着近くあって、きっと全てエマの趣味だ。


 「……しかも全部セクシーなやつじゃん」


 フリーサイズのものもあれば、バストのサイズが限定された下着もあった。

 

 チラリとタグを見てみれば、Cの70と愛来のサイズが記載されていた。


 「……本当変態なんだから」


 きっとタイミングを見計らって、愛来に着せる気満々だったのだ。

 他のデザインのものも見てみれば、エマのサイズの下着も見つける。


 「あ……」


 今更ながらに、当然のようにエマのサイズを知っている事実に気づいた。


 「……人のこと言えないか」


 かなり前に、エマはお揃いで着るのが好きだと言っていたから、色違いで着ようと誘ってみようか。


 まだ愛来が19歳だからか、ちょっと強引だけど嫌がることは絶対にしない。


 愛来の反応を見て、どこまでが嫌がらない範囲かエマはきちんと線引きをしてくれているのだ。


 あえて気付かぬふりをして、ダンボールを元の場所に仕舞う。


 好きな相手だからこそ、いつかは着てあげてもいいかなと。

 少し上から目線だけど、そんなことを考えてしまう。


 しかし自分から着るのはまだ恥ずかしいから、少し強引にエマが誘ってくれるのを待ってしまうのだ。

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