第49話
嫌々参加した学科別の新入生歓迎会。
人に囲まれ、1秒でも早く帰りたいと辟易していた時、愛来と同じように男性に囲まれている女子生徒を見かけた。
柔らかいロングヘアを可愛らしく巻いた彼女は、まるでお人形のように整った容姿をしていたのだ。
しかしそのルックスを武器にするわけでもなく、酷く面倒臭そうに言い寄ってくる男性を無視していた。
その姿にシンパシーを感じたのは、どうやらあちらも同じだったらしい。
それ以来、その美少女…もとい
一年生で必修講義が多いため、必然的に同じ講義を受けるうちにどんどん仲良くなっていったのだ。
こちらに媚びてこないサバサバした性格は、一緒にいて酷く心地が良い。
愛来と同じく、言い寄られても全く相手にしない性格の女の子なため、二人でいれば大半の生徒は遠巻きに見てくるばかりで近寄ってこないのだ。
親しい友人はひまりしかいないけれど、中々に快適で楽しいキャンパスライフを送っていた。
およそ100分の長い講義を受け終えて、ひまりと向かい合って座りながら、学食のカレーライスを頬張る。
「ひまりって恋人いるんだっけ」
「高校の頃から付き合ってる子がいる。今は遠距離だけど」
「どこいるの」
「大阪。実家が飲食店やってて、新しく大阪店オープンするからそっち手伝ってる」
「会いたくないの?」
「死ぬほど会いたいに決まってんじゃん」
離れている間の寂しさが分かるため、共感してしまう。
クールで媚びない性格な彼女も、恋人相手にはデレデレだ。
お互い恋人がいる者同士、こうして頻繁に惚気を言い合っていた。
「愛来は同棲でしょ?いいな」
「うん、毎日幸せ」
「そっか…羨ましい」
食事中にも関わらず、眠気が込み上げて欠伸を噛み殺す。
順調に見える同棲生活。
確かに順調なのだけど、ひとつだけ困ったことがある。
エマはどちらかといえば可愛がられるよりも可愛がる方が好きな人で。
そして、愛来が恥ずかしがる姿を見るのが何よりも好きなのだ。
おまけにエッチなことが大好きで、最近は2日に一回はエマに可愛がられている。
そうなると、どうなるか。
寝不足だ。
あちらは昼間に寝られるため問題ないだろうが、愛来は日中に授業がある。
一年生は必修講義が多い。また、なるべく単位を取ろうと講義を詰めすぎたせいで、一限から大学へ来る頻度が高いのだ。
今も講義前だと言うのに、眠たくて仕方がなかった。
「ひまりはサークル入ったんだっけ」
「入るわけないじゃん、めんどくさい」
「そういう所好きだわ」
誰かに媚びず自分の意見も取り繕わない。
どこか自分に似ているからこそ、ひまりとは一緒にいて心地良い。
しかし友人相手にこの悩みを打ち明けるのは気恥ずかしくて、愛来は一人で抱え込んでいるのだ。
寝不足の中、眠りにつこうとベッドに横たわる。
これでようやく夢の中へ行けると、心地よい感覚に意識を手放しかけた時だった。
背後から伸びてきた手が、当然のように服の裾に侵入する。
明日も朝から一限の講義が入っていて、ただでさえ寝不足なのだ。
いやらしい動きの手を、服の上からそっと掴む。
「待って」
「なに」
「エッチは、週に一回にしよう」
「無理」
我慢をせずにあっさりと言ってのけるエマに、腹が立ち込める。
頭まですっぽりと布団を被って、隠れるように身を小さくした。
「眠いの!」
「でも…愛来に触れられるの嬉しいし…一年半も我慢してたんだから」
「でも、このままじゃ辛くて…」
講義に集中出来ないことを正直に伝えれば、渋々と言ったようにエマが受け入れてくれる。
部屋の電気が消されて、その日は何もせずに眠りについたのだった。
こんなにも浅ましい自分の体に嫌気がさしてくる。眠気から解放されて、これでようやく講義に集中出来ると思ったのに。
一番前で講義をする教授の声なんて、ちっとも耳に入ってこない。
広げたルーズリーフには何も記載せず、先ほどからずっとスマートフォンでエマの写真を眺めていた。
欲望が込み上げてきて、慌てて咳払いをする。
「…っ」
えっちなことをするのは1週間に一度と約束したため、次のエッチまではあと2日。
5日間何もしていないだけで、触ってほしくて仕方ない。
散々可愛がられてきた体は我慢できなくなっていている。
「愛来、体調悪い?」
友人であるひまりに心配そうに尋ねられて、慌てて首を横に振る。
離れていても、エマのことを思い出して体を熱らせてしまうなんて、これでは本当に愛来がエッチな子みたいだ。
自分から言い出したことなのだから我慢しようとしても、やはり苦しくなってしまう。
ベッドに横たわりながら、当然エマは何もしてこない。
すぐそばにエマがいて、優しくサラサラと髪を梳いてくれるなんて生殺し状態だ。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ…」
室内が暗闇に包まれて、無意識に太ももを擦り合わせる。
「エマ……もう寝た…?」
声をかけても返事はなくて、寝息まで立て始めてしまった。
手を伸ばして肩を叩いても、反応がない。
眠ってしまったことを確認して、そっと自分の体に触れる。
必死に声を押し殺しながら、ブラの中に手を入れて心地よい箇所に触れていた。
「…ッ」
いつもだったらエマが優しく愛撫をしてくれる。
指で擦られる快感はもちろん、彼女の舌で舐め転がされる喜びを沢山覚えさせられた体は、とうに我慢の限界を迎えていた。
「…ッ、んっ…ふぅっ…」
それだけでは物足りず、下半身に手を伸ばす。
ハーフパンツを脱ごうと手を掛ければ、突然耳元で彼女の声が囁かれた。
「気持ちいい?」
「きもちいっ……え?」
驚いて放心しているこちらなんてお構いなしに、布団を捲られて彼女の体が覆い被さってくる。
「何してるの」
「お、起きてたの…!?いつから」
「最初から」
満面の笑みを浮かべて答える彼女に、一体何と言えば良いのか。
自分でエッチ禁止と言ったくせに、我慢できずに触ってしまった。
羞恥心で頬を真っ赤に染め上げれば、中途半端な愛撫を施した突起に彼女の指が触れる。
「…一人でする時は胸ばっかり触るんだ」
「だって…エマが特にここ触るから…んっ、あぅっ…ンァ」
「愛来の反応いいから」
愛来の体で敏感な箇所を、全て知り尽くされてしまっている。
もしかしたら、愛来自身よりもどこが弱いのかを知られているかもしれない。
胸の突起を弄っていた手が、キスマークのついた鎖骨にうつる。
「…あと2日あるけど、どうする?」
「…っどうするって…」
「愛来はどうして欲しいのかなって」
「べつに…私は、平気だし」
強がればあっさりと、「あ、そう」と言われてしまう。
愛来から離れた彼女は、再びベッドに横たわってしまった。
「じゃあ、おやすみ」
おまけにこちらに背中を向けられてしまう。
弄られて中途半端に快感を拾った箇所がジンと疼いている。
もっと触れて欲しい。愛来がやめてと言っても、心地よい箇所を優しく擦り上げて欲しい。
チャンスを棒に振ってしまったことに気づいて、猛烈に後悔する。
こんなことなら意地を張るんじゃなかった。
「エマ…」
「……」
「エマってばぁ…」
体を擦り寄せて、甘えるようにピッタリと密着する。
軽く上体を起こしてから、耳元で素直な言葉を口にした。
「……触って欲しいの」
優しく耳たぶを甘噛みしながら、必死に羞恥心を堪える。
「えっちしよう?」
その言葉を合図に、エマが再び起き上がる。
優しく体を押し倒されて、期待からジンジンと熱が込み上げてきていた。
「…週一じゃなくなっちゃうよ?」
「もう、そんなのいいから…」
触って?とおねだりすれば、ハーフパンツをそっと脱がされる。
足を大きく開かされて、その間に彼女が顔を埋めた。
羞恥心で頬を赤らめていれば、期待していた快感が体に走る。
愛来の甘えた声に合わせて、エマが敏感なそこを優しく弄ってくれるのだ。
腰を跳ねさせながら、愛来は久しぶりの快楽にすっかり溺れてしまっていた。
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