第38話


 愛来をめちゃくちゃにする妄想ばかりしていると言う、エマの本音を聞いて以来。


 エマの一挙一動が気になってしまう。


 彼女の脳内で、愛来は乱れまくっているわけで。


 何気ない日常生活を送っている間も、彼女の脳内では可愛がられているのかと思うと、喜びと羞恥心が込み上げてくるのだ。


 朝ごはんを二人で食べていれば、テーブルの下で太ももをなぞられて、無意識に声を漏らした。


 「んっ…」


 長い足を器用に伸ばして、太ももの内側をなぞられている。


 もどかしい感覚に、平常心を保つので必死だった。


 「なにっ…」

 「別に?」


 こちらを見ずに返事をしているが、楽しそうに彼女の口元はニヤニヤと緩んでいる。


 「…そういえば、私言ってなかった」

 「なにを?」

 「好き」


 突然の告白に、味噌汁を吹き出し掛ける。

 ウェットティッシュで口元を拭いながら、目を合わせて訴えかけた。


 「けほっ…なにっ…」

 「愛来ばっかりに好きって言わせてたから。私も好きって言っておこうかなって」


 改めて両思いだと言われて、胸の奥底から喜びが込み上げてきてしまう。


 彼女に想いを馳せて以来、ずっとこの瞬間を待ち侘びていたのだ。


 「……高校卒業するまではエッチしない約束でいいんだよね」

 「エマがそう言ったんじゃん…」

 「うん…だからギリギリ攻めるわ」

 「は?」

 「1年以上寸止めされるって結構エロいよね」


 もしかしたら愛来は、この人を侮っていたのかもしれない。


 想像する何倍も、何十倍も。

 この人の性癖はど変態なのではないだろうか。






 ソファ前に敷かれているカーペットの上に座り込んでテレビを眺めていれば、背後からギュッと抱きしめられる。

 

 無言で抱きしめられる状況が、どこか気恥ずかしい。


 これではまるで恋人のようだ…と考えるが、たしかに2人は恋人同士になったわけで、これくらい序の口に過ぎない。


 これから先色々と経験をしていくわけだが、少なくとも高校を卒業する1年半の間は2人の関係は進展しないのだ。


 早く触れられたいけれど、いざ本番を前にしたら羞恥に耐えられるだろうか。


 エマはどんな風に可愛がってくれるのだろう。

 想像をしてキュンと胸を高鳴らせていれば、服の上から脇腹に触れられて、甘い声を漏らした。


 「んっ…けほ、ケホ」


 咄嗟に誤魔化すように、咳払いをする。

 偶然当たっただけだろうかと考えていれば、彼女の手が今度は胸の下あたりに触れた。


 「…え、エマ…」

 「んー?」

 「手、当たってる」

 「そう?」

 「…エッチな事はしないんじゃないの?」


 振り返れば、ニヤニヤした顔と向き合う。


 揶揄うような表情に、出会った当初を思い出した。


 すっかり忘れていたが、エマは愛来をニヤニヤしながら揶揄うのが大好きなのだ。


 「愛来、エッチな事したがってたもんね」

 「エマだって…我慢できなくなるとか…めちゃくちゃにしたいって言ってたくせに」

 「私は大人だから我慢できるよ?」


 背中をやらしく撫で回されて、ビクンと体を跳ねさせる。


 愛来の弱い所を、彼女には殆ど知られてしまっているのだ。


 「やぁっ…ァッ…」

 「一年半後どこ触られたい?」

 「っ、え…?」

 「愛来が気持ちいいところ、沢山可愛がってあげるよ」


 ウロウロと視線を彷徨わせる。

 彼女の言葉に、無意識に生唾を飲んでしまっていた。


 「…初めては愛来が気持ちいいところだけ可愛がってあげるよ…けど、2回目からは容赦しないから」

 「容赦しないって…」


 カーペットの上に押し倒されて、エマが覆い被さってくる。

 半開きの唇に口付けられて、当然のように舌を入れられていた。

 

 「ンッ…」


 大人なキスに翻弄されながら、必死についていこうと動きに合わせて舌を絡める。


 指で耳をこしょこしょと擽られた後、胸には触れられずに脇腹やブラのアンダーラインばかりなぞられていた。


 「ふぅっ…アッ、あぅ…」


 もとがしいところばかり擽られて、体は直接的な快感を求めてしまう。


 本当は、もっと強い快感を得られる箇所に触れてほしいのだ。


 こんなにも焦らされてばかりいて、一年半も我慢できるだろうか。

 

 キスも十分幸せで心地よいけれど、欲深い愛来はその先を求めている。


 「焦らすの、やだ…」

 「高校卒業するまではお預けって言ったでしょ」


 きっと、酷く物欲しそうな目をしてしまっている。


 目の前にいるのに生殺し状態。

 早く大人になって、直接彼女から可愛がられたくて仕方なかった。

 

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