第4話

冷たく暗い牢獄で「にゃーぁ…」と鳴いたリードの声を頼りに姿を探す。

何か柔らかい物にトンっと腕があたる。


「リード…どうして何も答えてくれないんだ?」


リードの肩を掴み、目線を合わせて質問する。が、何も答えようとしないというより別人みたいだ。

ギィィィィ…と鉄格子と鉄扉が開く音がする。


「残念ながら、リードは感情を失ったわ!」


鉄格子の前にハイエナの獣人ハイトが腕組みをして立っている。


「感情を失ったって?どういう意味だ!!ハイト!!」

「そのままの意味よ。リードには2つの選択肢が与えられた」


リードはひろとバラバラになった日、ロワ国王に呼び出されていた。


「ロワ国王!リードを連れて参りました!!」

「は、離して…僕はおじさんに!!……はふっ!?」


リードの口を無理やり閉じ黙らせる。それでもリードは抵抗し暴れるが、猫の獣人では狼の力に勝てない。

真っ赤な絨毯の上に降ろされ、ロワ国王が口を開く。


「リードよ、よく来たな…イヌ科とネコ科の王国が仲良かった頃が懐かしいよ…」

「それは、嘘だ!!1ミリも思っていないくせに!!」


ロワ国王は「ガハハハ」と柴犬の獣人とは思えない声で笑い、笑顔から真顔に表情が変わると、目を大きくしリードを見下ろす。王室が緊張感に包まれる。リードも全身の毛を震わせてしまう。


「良いか?賢いリードよ、さっきの無礼な発言は聞かなかった事にしよう」

「お許し、ありがとうございます…ロワ国王様」

「良い、これからの人生について賢いリードに2択を与える。好きに選べ」


1 迷い猫として生きておじさんをあの世へと導くか。

2 彷徨い猫として彷徨い続けおじさんを生かすか。


「さぁ、どうしたい?リード」

「………どうしたい?おじさんと2人で生きる選択肢はないの?」

「あると思うのか?リード。ここの住人ではない奴を2度も連れてきたというのに…」

「そ、それは…」

「それは、リード。お前の大罪だよな?ん?リード…リードが連れてきた、そうだろう?」

「………」


リードを睨みつけ、選択肢を1つに絞らせる。


「……彷徨い猫になります、でもおじさんは傷つけないで!!お願いします」

「よろしい、約束しよう。おい!連れて行け!!」


ロワ国王が門番のオオカミの獣人がリードを王室から連れて行く。

それからは、王国にある隔離部屋で記憶を失くす薬を手渡され、飲み込むまで監視官が付いている。

ーーーコンコン。


「どうぞ、入って」


ドアを開くとハイエナの獣人、ハイトが立っていた。


「リードの監視を任されたわ」

「わかった、よろしく。今から手紙を書いておこと思って、おじさんに」

「これで良かったの?リードは…忘れちゃうのよ?」

「ふふ…ハイトは昔も今も変わらないね、本当は優しいハイトちゃん」

「やめて!今は敵同士よ!!早く、書き終えなさい!」


ハイトに最後に残した手紙を託して、薬を飲み込む。

部屋の窓を開けて空に向かって声をかける。


「ごめんね。お手紙読んでくれるといいな。おじさん、元気でね!!」



「これが、リードの手紙か?」

「そうよ、ちゃんと読むのね!」


おじさんえ


まず、ちゃんと説明しないで彷徨い猫になったことを許してください。

僕のことについて話していなかったから話しておくね。

僕の家族は、迷い猫の一家で死者を天国へと導くのがお仕事でした。

ある時、死ぬ予定ではなかった人が迷い込んで来てしまったのです。

でも、その人が死ぬ予定ではないと気付かぬまま天国へと導いてしまいます。

この事件が原因でイヌ科の逆鱗に触れてしまい、イヌ科とネコ科で紛争がうまれてしまいました。

その時の死者が、柴犬の獣人ロワ国王のお母さんでした。

それからは、死者を天国へと導くことはやめていたのです。

でも、地震が起こり再び死者が迷い込んで来てしまったのです。それが、おじさんのお父さん神蛇かんじゃ忠紘ただひろです。

僕は早くここから出そうとお爺さんと一緒に出口を探していました。でも、お爺さんは帰ってこなかった。

僕は、これで終わったと思っていました。そしたら、おじさんがやって来た。

おじさん、守ってあげられなくてごめんなさい。ちゃんと導いてあげれなくーーーー

 

リードより


手紙は水に濡れて滲んで読めなくなっていた。たくさん泣いたことが手紙から伝わってきた。

リードの手紙を折り畳み、ポケットにしまうと前を向いてリードに話しかける。


「リード、もう大丈夫だ!ここからは、俺の生きる世界だ!俺が俺の人生を決める!!」

「にぁーや?」


(うん!大丈夫そうだね!おじさん、頑張ってね。見守っているよ)

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迷い込んだ先で クロネコ @kurokuroneko

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