第2話 うちの担任がやらかしすぎる!


 ДドゥーАЕアエ 日 曇時々腫れ 日直 (バ)カミル



「おはようなのだ。とりあえず留年をしてしまったので、またもう一年よろしく頼むのだ。

 あと、黒板の我の名前に⤴︎︎︎(バ)つけたやつ、探しだしてギタギタのボロボロにしてやる! なのだ」



(バ)カミルが朝から吠えている。ホント、誰だぁ? そんな酷いことをする奴は。キョロキョロ。


「貴様の日頃の行いが悪いからだ」


 彼は”振り逃げ部長”。ここに来る前は冒険者ギルドの支部長を勤めていた。しかもパワハラで有名だったらしい。(ハルーシア談)


 前職を辞めて冒険者にジョブチェンジしようとした時に、ギルドへの登録が面倒になり部下に丸投げしたらしい。その部下からパワハラで散々恨まれていたとも知らずに。彼が気づいた時には既に遅し。書き置きを残して部下は高飛びしていた。因みに一度登録すると変更できない! まさに名は体を表すである。更に特大ブーメランも自身にぐるんぐるん返って来ているのだが気づいているのだろうか?


「留年はお互い様なのだ」

「フン! また同じ面子で飽き飽きするがやむを得ん」


 生徒は入学時に自分の所属するクラスを選ぶことができる。当然定員に達している所は選べないが、半年毎にある卒業試験で空きができるので、人気のクラスは順番待ちになっている。そして人気のクラスというのは、すぐれた担任教師のお陰でどんどん生徒が卒業して冒険者になっていくので回転が早いのだ。逆に全く生徒が入れ替わらないクラスというのは…… 察してくれ。



 その最大の元凶、我等が困ったちゃんな担任様はというと……


「聞いてください! スライムさんに蹴られたお陰で、両足の外反母趾が治ったんです」


 どうやらあのスライムは、クラゲのようなアレだったらしい。



「私も練習して、とうとう一体のモンスさんを仲間にできたんです」


 ふんす! とドヤるミザリー先生。


「いきますよぉ〜 ЖРМЦЧОбзАМёуфх…… いでよ”ミノはる”さん!」

「ブモォー」

「「「「おおーっ!」」」」


 驚愕するクラス一同。とうとうミザリー先生はテイムをマスターできたらしい。「やればできる子だと信じてたよ」と、ほろり涙を浮べるミュエ。「とうとうやりやがった!」とボルダーが祝い酒をあおる。「やったニャン…… とうとう卒業ニャン」たまちゃんは泣きながらお腹を出してゴロゴロ転がっている。服従のしるしだ。

「ミザリーちゃん、おでもテイムしてぇ。ハァハァ」ゴローマルは今日も平常運転だ。


 クラスの誰もがそれぞれにミザリー先生への喝采を送る中、俺は違和感に気づいた。


「おい、なんかおかしくね?」


 召喚されたミノタウロスが、全くといっていいほどミザリー先生に寄り付かない。それどころか挙動不審な動きで窓から出ようとしている。


「先生、ミノタウロスを止めなくて良いんですか?」

「それがぁ〜 そのぅ………… 全くテイムしてる手応えがないんですよねぇ…… ハハハ」


「ブモッ!」


 ミノタウロス、校外へ脱走。


「全然テイムできてねぇじゃねーかよ!」

「あれっ? おかしいですね。昨日は言うこと聞いてくれたんですけど。ミノはるさ〜ん、帰ってきてくださーい」


「ブモォオオオ!!」


 ミノ治さんは猛りくるって彼方へと逃走。斧を振り上げながら、背丈が3メーター越えのミノタウロスが走っていった。


「おい、不味いんじゃないか? あっちの方にはホビットの村があるぜ」

「あれ…… あれれ…… 先生どうしたら……」

「…………」


 カラカラ、ピシャ!


 俺は窓を閉めた。


「先生、次の試験に向けて対策を話し合いたいと思うのですが」

「カッツウェル君……」

「なぁみんな、それで良いよな?」

「「「「「異議なーし!」」」」」


 俺達は…… 何も見ていない。



 ぎゃああああ!!

 誰かァ、誰か助けてぇー!!

 ミノタウロスがなんでこんな所にィ!


 風に乗ってホビットの皆さんの阿鼻叫喚がこだましていた。


 ◇◆◇


「誰じゃ! ホビットの村にミノタウロスを放った鬼畜はァ!」


 翌日、好々爺の校長先生が真っ赤になって激怒していたのは言うまでもない。

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落ちこぼれクラス全員でパーティーを組んだら何とかなるかも知れない たて あきお @AKIO_TATE

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