8月分
8月1日
家の外壁に無数に猫の爪痕が付いている。
8月2日
そういう話をすると寄って来るとは言うが。
8月3日
うちの盛り塩は塩分補給所ではないが。
8月4日
蝉の声の間に何か別の声が混じっている。
8月5日
少しずつ主張が強くなってきている。
8月6日
対抗してフランス国歌を枕元で歌わないでくれ。
8月7日
今年も人魚すくいの季節がやってきたらしい。
8月8日
家で育てた人魚は正直不味い。
8月9日
鈴虫から電話があった。
8月10日
一晩経って、訃報が届いた。
8月11日
何回数えても数が合わない。
8月12日
遺影の爺さんってピースしてたっけ。
8月13日
オレは鉈なんだよなあって、何回目だよその愚痴。
8月14日
そこ落ちるぞと声がしたが、道路でどうやって落ちるというのか。
8月15日
今年もまた、ラジオからこもった声がしている。
8月16日
下り列車ですからと首にロープの巻き付いた男が言う。
8月17日
紙人形を友だちに据えるのは間違っていたかもしれない。
8月18日
増水した川で、流れていったのは自分と同じ顔の何か。
8月19日
空に浮かんでいくおじさんを見ていた。
8月20日
近所のおばさんも浮いていて、そのまま犬の散歩をしている。
8月21日
同じく浮かんでいない人を見て安堵している。
8月22日
クローゼット内に鬱がうずくまっている。
8月23日
窓の外に並んでいる足を数えて午後が終わる。
8月24日
近付いているそうだが、何が。
8月25日
忘れないよと勝手に口を突いて出た。
8月26日
ありがとうと聞こえたその声の主をもう忘れた
8月27日
だから早く埋めろと言ったんだ。
8月28日
ずいぶんと静かだと思ったら耳が取れていた。
8月29日
夏が終わるらしいが、あの女は帰らないのか。
8月30日
プールに白まんじゅうが浮いていたから水泳が中止になったのだと、隣の家のおませさんが教えてくれた。
8月31日
仏間から花火の音がしていた。
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