不実の日々

雨屋蛸介

7月分

7月8日

祖母から譲り受けたアンティーク人形が毎晩話しかけて来る。


7月9日

ラジオのフランス語講座を聞く。


7月10日

不安が冷蔵庫に詰まっていた。


7月11日

犬が右隣に向かって吠えてくる。


7月12日

フランス語の発音が違うらしく何かを投げつけられている。


7月13日

百鬼夜行中止のお知らせが貼り出されていた。


7月14日

割れたくないとごねる卵を宥めすかして朝食。


7月15日

地底人に道を聞かれる。


7月16日

モノリスに衝突して調書を取られた。


7月17日

火葬がメインで助かった。


7月18日

ひいひいばあさんが土葬だと知る。


7月19日

選挙カーの代替品としてセミをチョイスするのか。


7月20日

風鈴じゃなくて即身仏の鈴の音。


7月21日

友人の缶詰をお中元にもらう。


7月22日

田中は味噌味だった。


7月23日

ぬらりひょんが恨めしそうに開会式を見ている。


7月24日

先月部屋から逃してやったクワガタに久しぶりに会う。


7月25日

暑すぎてピエロの白塗りが溶け、よくわからない顔が覗く。


7月26日

ヤドカリ型異星人に我が家の背負い心地を褒められる。


7月27日

やっぱ海が好きなんだなとベランダで潮風を浴びながら思う。


7月28日

三寸ばかり足りないからとヒールを履いているのを知った。


7月29日

笑うと結構かわいいが、そろそろ首が疲れた。


7月30日

部屋の隅に盛り塩を舐めてる女がいる。


7月31日

風鈴をものすごい勢いで鳴らされている。

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