第19話
気を失うほどの快感から覚醒して最初に見たのは、僅かな明かりを頼りにカンザキが自分の指を舐めている光景だった。
なにしてんだろ。
そう思い、まだ残る解放感に身を委ね見つめ続ける。
カンザキが、微笑を浮かべ指に絡んだ白濁液を、舐めた。
「…あ!なに!してんだっ」
カンザキに凭れ気絶してた俺はその手を止めようとした。
身体に、腕に力が入らなくて、声だけちょっと元気という状態になった。
「古壱のすべてを物にしているとこだが?」
「…っ」
なにが悪いんだ、とばかりに言われ俺は固まってしまった。
その間にも指に絡んだ白をカンザキは舐め続ける。
開いてる手は俺の頭を撫でている。
いたたまれない。
せめてもの抵抗だ。
俺はカンザキのポロシャツの肩部分をあぐあぐ噛んで濡らした。
いい加減脱げよ。
するとカンザキがクスクス笑い「分かった、分かった」呆れた様子でポロシャツを脱いだ。
想像よりずっと、ちゃんと作って鍛えた胸板が露わになって、俺は吸い込まれるように手を伸ばす。
「ああ…いいなぁ…わぁ…せなかもできてる…あしは?あしは?」
胸板厚い。
腹筋割れてる。
鱗ついてるし、背中…背中も筋肉ちゃんとついている!
しかも、めちゃくちゃ暖かくて障り心地が良すぎる。
カンザキにべったり寄り添って、ベタベタ触りまくって、生脚の筋肉を要求する。
背も高いし、本当に俺の理想の身体付きだ。
想像するばっかりで知らなかった肉体美が目の前にあって、俺はいそいそとカンザキのズボンを脱がし、ふくらはぎの膨らみに興奮してしまう。
「古壱は、俺の身体目当てだったのか…」
なんだかガッカリしたような言い草に、俺はズボンを投げ捨て慌て否定を被せる。
「ち、違う違う!俺はカンザキが好きっ!カンザキがたまたま俺の理想体型なだけっ!カンザキ好きっ!」
そう言いつつも太ももいじりはやめられない。
筋肉ビシビシで、本当にすごい素敵うっとりする。
「本当か?」
「ほんとうだよぉぉ」
説得力がないなって呟いてから、カンザキが俺の右腕をやんわり掴んだ。
あ、もう、触んなってこと?
「ならば」
「ならば?」
「俺も古壱に好きに触れても?」
そこは義手、だけれども、差別することなく優しくさすられる。
額から熱が生まれ、腹の奥までその温度が届く。
それでも、そりゃ勿論だ。
俺は臍まわりを堪能しながら何度も頷いた。
するとカンザキがふわっと微笑んでから、俺の右腕付け根に手を伸ばし、ぽこっと義手を外してしまった。
「あ…義手、取っちゃうのか…?」
急な不便に戸惑うと、カンザキがわずかに残ってる右腕にキスしてくれた。
ちゅうって、音立てて強く吸われる。
優しく舌で、舐められる。
未知の感覚に、俺は驚いた。
「…古壱の全てを愛したいんだ」
そう言ってまた、カンザキが俺の残った右腕を唇で触れ、指で触れ、愛で続ける。
「…カンザキ…かんざきぃ…」
失った先端はそこそこ弱い。
皮膚がちょっと柔い。
その、弱い部分を執拗にせめられ、止めて欲しくないけど反応に困る。
気持ち悪い良いでいうなら気持ち良い。
悪い良いなら良い。
嫌い好きでいうなら好き。
だけど、なんか、恥ずかしい。
「…んっ…かん、ざき…」
カンザキは戸惑う俺の右腕から、今度は古傷を愛で始める。
ぶすって刺された傷。
がぶって噛まれた傷。
じゅうって焼かれた傷。
その他諸々で負った傷。
薄いし少ない筈なのに、もう消えてるのもあるのに、カンザキは的確に見つけては、慰めるように舐めてくれた。
こんなこと、されるなんて思ってなかった。
そんなとこ弄られるなんて、予想してなかった。
かつて独りで治療した俺を慰めるように、唇が舌が滑って口付けしてくれる。
なんかずるいって思って、俺もカンザキの身体にキスをする。
カンザキが目を細め俺をぐっと抱き寄せ、襟足から背筋、
指が辿ってもっと下へ滑ってく。
「ひゃっ…うぅ…おしりぃ…」
片方の尻をやんわり撫でられる。
真ん中の穴を歪ませるような触り方に、直に触られてないのに身体が熱くなる。
「嫌か?」
「はずかしぃ…だけぇ…」
真っ赤になって熱い顔をカンザキの胸に埋める。
心臓がどきどきしていた。
おっぱいが素敵だ。
ちゅうって吸ってしまう。
「…甘えっ子だな」
「ちがぅもん…か、ん、ザぁ…ぁあ…」
両手で尻を揉まれ、嫌悪の真反対に痺れた。
カンザキの暖かい手の平で揉まれたら、スライムより柔らかくなるに決まってる。
「古壱」
いっぱい尻を揉まれた俺はもはやされるがまま、カンザキと一緒に横になった。
座ってるのと訳が違う。
一緒に横になる、それだけで幸せを感じた。
カンザキは俺と自分の身体の上にブランケットを掛ける。
一枚の布に一緒。
それだけでこの一体感を感じるのなら、結合したらどうなってしまうのか。
不安と期待でカンザキにひっつく。
離れるのがこわくほど、暖かい。
カンザキはそんな俺をぎゅうって抱き締めてくれた。
しばらく、どっちの体温か分かんなくなるまで俺達は抱きしめ合う。
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