第10話
しばらくドライブを楽しんでいたら、目的地にあっという間に到着していた。
見覚えのある場所だった。
所詮は俺の脳内データ。
白浜と一緒に遊びに来たトコだった。
「あのアスレチックで遊ぶのか?」
以外と子供なデートコースですねぇ、と笑ってやろうと思った。
喜んでますよ?
でもほら、大人なデートとしては、どうなのよカンザキの姿をした個体さん。
「そちらのほうが良いのなら止めないが」
「え、アスレチックで勝負じゃないの」
「今日は新設された所に行くぞ」
「へぇ…俺の記憶に無いトコ行くのか…やっぱお前幻覚使いとして一級なモンスだな」
俺だけの記憶じゃなく、他の奴の記憶とか使えるとかすごい。
もしくわ妄想。
すごいな手強い。
「…」
褒めたのに、カンザキの姿をした個体が苦しそうな顔をした。
めちゃくちゃ眉間にシワが寄っている。
目付き怖いコワイ男なので、止めたほうがいいぞ。
無言になったカンザキの姿をした個体と共に、なんだかSFチックな新築施設に入ってく。
中も近未来感が強い。
「おお、こんな施設出来てんのかぁ……ぶいあーる?」
施設の説明書きを見つけ、ついつい声に出して読んでしまう。
「ああ、簡単に言えばVRゲームセンターだ」
カンザキの姿をした個体がスタスタ入場入り口に向かってしまう。
フリーパスはすでに用意済みという設定らしい。
「何をしているんだ、行くぞ」
「あ、待って」
俺は急いでカンザキの姿をした個体の背中を追い掛けた。
「…まじで、VRで遊べるの、ここ」
入場してすぐ、俺は辺りをきょどきょど見てしまう。
ゲーセン、のような雰囲気ではあった。
けど、映画館の入り口みたいなのばっかりあって、看板がどんなVRなのか宣伝してて。
めちゃくちゃ目移りする。
だって、めっちゃ遊んでみたかったやつなんだもんっ。
「ああ、そうだ。どうする…ホラーハウスでも入るか」
カンザキの姿をした個体が施設案内を端末に表示しながら聞いてくる。
「朝一でホラー希望とか、お前なぁ」
「…」
不服そうな眼に、俺はニカっと笑いかけた。
「センスあんな!よし行こうぜ!てか全部遊びたい!」
「いや、全部は無理だ諦めろ。昼には出る」
「えええっ!やだぁあ!」
「五月蠅い。行くぞ」
「けちーけちー」
「三歳児」
カンザキの姿をした個体がだだをこねる俺の背中をグイグイ押す。
今日ここで一日デートでも俺は良いよって言ってんのに、聞いてくれ無さそうだ。
カンザキの姿をした個体め。
楽しいデート、楽しいぜ。
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