出撃
万和4年11月、筑摩の無事が分かって安心したのも束の間、再度欧州への派遣を命じられた実咲達は、欧州派遣艦隊乗員休養ローテーションの名目で詳細は伏せられ、樺太県の大泊秘密基地から正に秘密裡に輸送飛行艇に乗り、米国ノーフォーク海軍基地へと向かった。
米国 ノーフォーク海軍基地
現在、この基地には米国大西洋艦隊の他、日本海軍やフィリピン、オーストラリア、インド海軍等の派遣艦隊が集結していた。
そして、実咲達はまた同じメンバーで愛宕に乗り組む事となった。
北大西洋 欧州派遣艦隊 旗艦愛宕 CIC
「砲雷長、なんであの敵機はそんな高性能なのに肝心のステルス性能はなかったんでしょう」
皆が思っていた事を砲雷科の部下の1人が実咲に伝える。
「うーん、まああの硬い装甲だし必要ないと思ったとか?」
「確かにあの重さでもあれほどの性能ならミサイルの回避もおそらくできそうですが・・・・・・」
「ま、そんな事より、今の私達に出来る事は、今後あれがまた来たら、どうやって対処するか考える事よ」
「しかし、対処と言っても・・・・・・アメリー少佐は何かあの機体の情報はありますか?」
「ごめんなさい、空軍が凄い新型機を開発しているとは聞いていたけど、あんなんではなかったし、一応空母にいた事あるけど私はあんな技術の飛行機知らない・・・・・・」
「いえ、謝らないでください・・・・・・だとすると、もしかしたら転生者は未来からも来ているという事はないでしょうか」
「確かに、私達が今まで会った転生者は沙羅にしかり、深山大使しかり皆、沙羅はちょっと複雑だけど一応は過去からの・・・・・・未来から来る可能性だってあるのか・・・・・・」
と言っても未来人がわざわざ過去で戦争を起こす理由が実咲達には全く分からず、結局推論でしかなかったが、あの飛行機の技術は現代では想像できないものがあるのは確かだった。
とかく、あれが現れようが現れまいが艦隊は既に欧州連盟の勢力圏内に入っているので警戒は厳にしているわけである。と、対潜哨戒機の千鳥から無線が入る。
「敵Q型潜水艦多数発見!こちらでは対処しきれず!」
すぐさま艦橋からCICへ対潜戦闘用意が告げられ、敵潜のデータを入力、対潜魚雷の発射準備を実咲が告げた。その時・・・・・・
「対潜魚雷用意よし、各個発射管ひら・・・・・・「逆探反応!本艦、ロックされています!」」
「構わん、
「CICより艦橋!魚雷発射後速やかな回避行動を求む!」
旗艦愛宕、利根、筑摩、照月、雪風ら多数の艦が同時にロックされる中、それぞれの砲雷長達は日本海軍自慢の対潜魚雷ならやられる前に撃沈できると踏み、そのまま発射を命じる。実咲も英Q型潜水艦・・・・・・この世界の対潜水艦戦闘の先進である日本海軍からすればやや古いシステムを搭載している事から「旧型」と揶揄されるその潜水艦の事はよく知っており、回避行動は魚雷を発射してからでも遅くないと計算していた。が・・・・・・
「対潜魚雷、敵潜を追尾中、命中まで10、9、8・・・・・・?!水中で魚雷発射音確認!奴ら、捨て身で撃って来ました!」
「・・・・・・対魚雷防御戦用意!マ式爆雷準備!」
日本艦隊の攻撃は成功して、敵潜水艦の反応は次々消えていったものの、その最期の槍が艦隊に襲いかかろうとしていた。
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