解決
万和4年 10月
筑摩は結局見つからず、出撃前には高かった派遣艦隊乗組員の士気もだんだん下がってやっと横須賀へ帰った時には皆疲れきっていた。
そして、実際にあの戦闘を指揮した艦長や砲雷長達が基地地下の秘密施設へ集められ、事の次第を情報部部長へ報告する。
「最初にレーダーで機体を捉えたのは?」
「はっ、我が愛宕であります。CICで対空レーダーのブリップを確認し即座に連盟共用識別信号を発するも応答はなく、目視距離にて機体を確認しました。カメラ解析の結果、その機体・・・・・・その写真の通り私達の知る飛行機やヘリとは全く異なるもので、我が艦隊上空に接近し、私は砲雷長として、艦隊防衛の為のファランクスの発射を命じました」
「しかし効果はなく、筑摩が消えたんだな?」
「はい、ミサイルが発射された様子も爆弾が落とされた形跡も、いわばビームのようなものも見えなかったと、その光景を目の前で見たこちらの多村少尉からは聞いております」
「多村少尉、それは間違いないのか?」
「ええ、あんな光景は海軍に入って初めてというか、普通はありえないような・・・・・・忘れられるはずがありません。不明機の1機が筑摩の真上に来たかと思うと、次の瞬間にはそこにいた筑摩が音もなく・・・・・・」
「被害はそれだけだったのか?他の艦への影響は?」
「空母飛龍は発着艦管制システムに異常を来たし、巡洋艦大淀、同じく羽黒、愛宕にも電子機器の異常が見られましたが、その不明機が筑摩を消してからすぐに消えて、電子機器の異常も治り、なんとか筑摩以外の全艦艇、横須賀へ帰投できました」
「そうか・・・・・・話してくれてありがとう、今、林少佐や多村少尉が話してくれた情報はこれより世界研究庁と協力し分析を行う。なお、混乱を避けるためこの不明機との戦闘に関する報道は規制される、よって君達もこれを口外してはならない、分かったな!」
「はっ!!」
数日後 横須賀市 士官用邸宅
不明機との戦闘から緊急帰投した艦艇達は人員を入れ替え再出撃、実咲達元の乗組員は情報隠匿の為、自宅やこの官舎での待機を命じられていた。
が、それも意外と早く終わった。情報部に世界研究庁から不明機の分析結果を持って学者が説明に訪れるので基地まで来いとの命令があり、実咲達もすぐさま向かった。
「それではこれより世界研究庁の倉野博士より、件の不明機についての説明をくださる!皆、心して聞け!」
狭い会議室に軍人達の力強い返事が木霊する。
「えー皆さん色々疑心暗鬼になっているでしょうから、まずは結論から説明しますと、これは間違いなく飛行機です。エンジンは大きな耐熱装甲板で隠され、現在の地球では間違いなく最先端の技術で作られたものです」
「博士、飛行機だという事は分かってもなぜ筑摩は・・・・・・」
「その質問はもっともです、筑摩に関しては・・・・・・消えたように見せたのだと思われます」
「・・・・・・ベルリンで見た情報に光学迷彩の攻撃応用の話がありましたが、まさか本当に・・・・・・」
と、その実咲の発言を聞き、ここで駆逐艦照月に乗艦していた電測員が何かを思い出す。
「そういえばあの時、我が艦の電子機器は終始正常で、筑摩が消えたとされる時刻以降も対水上レーダーに筑摩の姿はあり、通信も可能で・・・・・・筑摩はガラパンへ向かうと・・・・・・」
「なるほど・・・・・・確かにサイパンに筑摩の乗員が留まっているとあなた達の上司から聞いています」
「じゃあ彼らは大丈夫なんですね」
「はい、そのようです」
皆、筑摩と乗員が無事だと分かりホッと胸を撫で下ろす。が、問題はそれだけではない、一体そんな最先端の飛行機はどこの所属でどこから現れたのか・・・・・・実咲はその答えも分かろうとしていた。
「博士、かつて大川で世界が繋がったように、彼らはどこからかワープでもしてきたんでしょうか、イギリス本土かフランス本土かはたまた・・・・・・」
「そうですね・・・・・・国籍は以前分かりませんでしたが、林少佐が武官時代にベルリンで情報を掴んだとなるとドイツ軍の可能性が高いでしょう。まあまだ確証はないですがね。そして、それならば彼らは太平洋へ繋がる時空の歪みを見つけ、利用している・・・・・・とんでもない話ですが、時空間というのは不思議なものですから」
一見、とんでもない話ではあるが、この世界、この時代の人達はそのような話を信じるしかない事象を体験してきており、何よりあの戦闘を見れば信じない者はいなかった。
そして、海軍だけでなく陸空軍においても、その新型技術戦闘機への対処法が研究される事となったのであった。
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