不可解



万和4年の春、日米を中心とした環太平洋連盟諸国と英独を中心とした欧州連盟諸国の関係悪化は決定的になりつつあった。

では一体なぜ、このような状況になったかと言うと・・・・・・



5月 福岡県大川市


「実際に今回こうなっとるのは私にもよく分からんとよね。多少の貿易摩擦とかはあっても戦争に繋がる事なんて滅多に・・・・・・」



そう説明するのは実咲の幼馴染の親友、沙羅である。更に彼女は続ける。



「それに軍事力だって言ってしまえば日米2ヶ国だけでも、今の英独仏が力を合わせても勝てるなんてありえんど?本当に謎つたい・・・・・・」



「・・・・・・」



他にも聞きたい事は色々あったはずなのに、不可解な情勢に、自分達よりも頭を抱える親友を見ると何も言えず、ただ不可解な情勢に謎が深まるばかりである。



数日後 神奈川県横須賀市



実咲の携帯に見知らぬ番号から着信があり、少し身構えて通話ボタンを押したが・・・・・・



『はい、林です』



『実咲、私よ私』



『私私詐欺?』



『違う、アメリー!アメリー・シュナイダーよ!』



『え、アメリー?番号違うし、国コードもなかったし・・・・・・って事は今日本におると?!』



『うん、この電話もこっちに来て調達したの。今回は私の部下とかも一緒に来たんよ、どうも今の連邦政府は・・・・・・あんま喋ると盗聴されてるかもだから、詳しくはそっちいって話すね!』



ツーツーツー



「弦さん、アメリーが今から部下とか連れて来るって、政府がどうとか言いよったけどやっぱりドイツ国内でも何かあってそのせいで・・・・・・」



ドイツ国内でもと実咲が言うのは、英国やフランス国内で妙な事が起こっているとの情報は沙羅や深山から掴んでいたからである。



「まあ西欧で何が起こってるかはともかく、部下まで連れてくるってのは本当にやばいのかもね」



そして、もし本当にさっきの電話を盗聴でもされていたらと、アメリー達が心配になってきた2人はすぐさま迎えに出かけた。

盗聴の可能性がある通信を避ける為に2人だけで携帯電話の電源は切り、非常用携行無線も封鎖して車を飛ばし、無事にアメリーとその部下数名を横須賀へ連れて帰る事ができた。



「実咲、弦さん、ありがとう・・・・・・ほら、あなた達も挨拶して」



「林少佐、柳少尉、ありがとうございます!」




「無事に連れて帰れてよかった、まあ皆落ち着いてくつろいでよ」



アメリー達を座らせ、改めて話を聞く実咲。



「アメリー、今ドイツはどうなってるの?イギリスもフランスもなんかおかしな事になってるみたいだけど」



「今のパーペン首相は選挙の時とは明らかに違う・・・・・・あれは別人よ、フランスもイギリスもオランダもまるで首相の人格が入れ替わったみたいに・・・・・・」



「(沙羅が言ってた転生者説は本当に・・・・・・)そう、それでこの人達を連れてここに?」



「うん・・・・・・何の正義も分からない戦争なんかしたくない、実咲や弦さんや、私のもうひとつの祖国でもある日本の人達と戦いたくないから、ね」



アメリーの部下達が力強く頷き、その1人が実咲に語りかける。



「林少佐、私達の愛したドイツ連邦、西欧諸国の民主主義は今や崩れ去りつつあります、こんな事を言うのはお門違いかもしれませんが・・・・・・私達を一時的にでも日本海軍の指揮下に入れていただけませんか?」※実際にはドイツ語



「は?それはつまり・・・・・・敵とはいえ、同胞に銃口を向けるって事よ、そんな事できるのあんた達は!相手だって何も分からないまま戦ってるかも知れんとぞ!」※実際にはドイツ語です



「ではもし、日本で同じ事が起きて、国がおかしくなっちゃう危機になっても、実咲は戦わないの?その場合は日本の憲法にもある革命権の範囲で大逆罪にはならないでしょ?」



「アメリー・・・・・・そうね、その時は私だって覚悟決めるか・・・・・・」



でもその敵が顔馴染みだったら私はどうするんだろうと自問する実咲。

しかし事が起きれば、軍人としてはどちらが悪だとか正義だとか考える間もなくただ命令を待つしかないのである。今回は本当にドイツという国、イギリスという国、フランスという国、オランダという国と国家間の戦争をするのかも分からなかったが・・・・・・








































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